中国とアラブがわかる世界史(ゆげ塾)

2016.01.02 

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萌系のキャラクターが表紙を飾っているからといって,中身が漫画だからといって侮らないほうがよい.この本は,3時間にわたる池上彰番組を見るとの同じくらい,200ページの佐藤優本を読むのと同じくらい,いやそれ以上に「海外情勢を伝える報道」の,その意味するところを確実に把握するための「補助線」を与えてくれるからだ.「あぁ,なるほど,そういうことだったのか」 こう口にしたくなるくらい「ストンと腑に落ちる」体験をページをめくりながら連続体験した.そんな知的な体験って,探せばまだまだあるものなんだ.小学生の頃に学研まんがを読んで科学や歴史について勉強した(?)経験をお持ちならば,ぼくが意味することをわかってもらえるだろう

近代史について学校で学ぶ機会はほとんどない.日本史でも世界史でも,三学期の終わりまで授業時間も興味も近代・現代までたどり着かないからだ.だから普通高校を卒業して大学に通った人でだって,「サイクス・ピコ協定」なんて知らないはずだ.「バルフォア宣言」なんて聞いたこともないと答えるはずだ.普通の人が知らない用語ならば,だからニュースでも新聞でも使われない.説明に時間がかかる事柄や,そもそもややこしいものは,テレビではないことになる.結果的に多くの日本人は,「中東の今」なんてまったく知らないまま死んでいくわけだ.

専門家ではないなら知らないことが多いのは当然だが,しかしニュースで紹介されれる世界での紛争・出来事の由来を知るには,わずかな世界史のキーワードを知っているだけでも理解がぜんぜん違う.数個の知識があるだけで,考えようと思わなくても自然に考えてしまうからだ.ある事件が起きたとして,その意味することを死亡者数や損害額とう数値ではなく,歴史上の出来事として,なぜ起きたのか,そして自分のこれからに関わりがあるか,それを「自分で考える」ことができれば,自然とその事件の重要度を推定できるだろう.ニュースキャスターや解説者に教わる必要がないのだ,そして,未来予測も自然と浮かんでくる(まぁ,結果的には的中しないけど),

ところが歴史にまつわる僅かなキーワードすら頭にないと,中東のニュースなんて「なんでこんなことをやっているのか,イスラム教だから,しょうがないな」程度の感想しか持ちようがない.そもそも遠くの出来事だから「痛くも痒くない」ことなのだけど,それだから頭のなかは自分の日々の生活に起きた嫌なことで埋まってしまい,事が自分に波及したときはすべて「突然」であって,結果的にテレビの言われるままに考えるようになってしまう.

普通の日本人は中東についての見識がないが,それでも日本で普通に生活していくうえで何の支障もない.あるわけけがない.英語だって知らなくとも「日本人として幸せになる」ことにいささかの障害もないのだから.日本語で読み書きし日本語で話すことができれば,世界史の知識や海外事情など知らなくとも問題はない.それくらい日本は世界に隔絶した状況で生きることができる.これが普通の人の現実だ.そう考えれば中東についても何も知らなくても,なおさら問題はないではないか.シリア人を実際目にする機会なんどないのが普通だ(皆がしっているシリア人の風貌はスティーブ・ジョブズだろうか).これくらい中東のことは「遠い国のお話」として扱えてしまえるのに,まともに移民だろうがテロだろうかあまり考える必然性がない.

しかし「そんなこと知らないぜ」と威張って答えていられる時代は過ぎつつある.一昔前ならば,政治のことなんて知らなくとも問題は実際はなかった.政治家は汚職するだろうし,ウソばっかだし,結局自民党だしということで,普通の人には実質関係なかった.しかし消費税導入からだんだん政治が日々に生活に入り込み,震災・原発を体験して,だまっていると政治家が生活を壊してしまうことに気がついた.沖縄の人はずっとそうだったのかもしれないが,東京の人も気がついたわけだ.だから「知らない」ですまない.今はちがう.震災後も世の中がおかしくなりつつある.福島の問題,秘密保護法,戦争法,・・・.次から次へと政府がおかしいことをやり始めたと感じる人は少なくないはずだ.そしてそれらの問題を議題に取り上げて,政府を批判する報道していたTVニュース番組のキャスターは,主だった人たちは一斉に降板させられてしまった.政治に感心のない人だって,この社会の動きを知ろうとしてれば,この一連の動きが見えてくるはずだ.

こういことにそもそも興味がない人は,結局は何もしらないまま自分の身に問題が振りかかるまで今までどおり過ごす.寝耳に水というような,水が引けば終わる話しとは違うこともある.例えば原発近くに住んでいる住人のように,結局は命を含めて全てを失うことになるかもしれない.「世界には問題があり,日本は困ったことになる.原因は中国だ,中東だ」という掛け声のもと,頓珍漢な理由をつけられて自衛隊が海外派兵されて現地で紛争を起こすだろうことは,そう遠くない状況に今はある.そんな状態で中東や中国について全く無理解のままだと,「鬼畜米英」と信じこまされていた戦中の人と同じように,結局は自分たちが戦災にあって財産も命も失ってしまうという終わり方をすることだって,今は空想とはいえなくなっている.

現在の国際紛争についてのTV報道は,政権の都合が良いような「煽り」が含まれている.淡々と報道されることは殆ど無く,戦中の日本のように大本営発表になってしまっている.政府意見と異なる国会議員たちの動きすら報道しなくなってしまった.冒頭にあげた池上彰や佐藤優といった人たちは,こういう状態を危惧し,それぞれの方法をつかって普通の人に「歴史」を教え,「国際情勢」を解説してくれている.それはそれで大変わかり易い.でもね,TVだけでは届かない人もいるし,対象をもっと絞ることで情報量を圧縮したかたちで知るための方法はないものか? 大学教授の面倒な教科書はやなんだけど.学研まんがみたいなISについての本,そういうのないかな?

あるんです.それが,この本だと思います.この本は要点しかない.要点が漫画になっている.出来事の連鎖を解説することで終始するのではなく,出来事の下に埋まっていて普通は見えない「物理法則」のようものを,なるほどと納得できるかたちで紹介してる.これを読んでから他のニュースをみれば,「なるほどそういうことをいってたのか」と感じるし,だから「おれって,ちょっとわかってきたのかも」と,自分の世界の見方が少し変わったことを実感できる.つまり,勉強できちゃったことに自信までもててしまう.

どういうところなんだろう「ゆげ塾」って.年始からいい本を見つけちゃった.この一年を始める弾みがついた気がする.



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人の知能の発端を知りたいです。ハードウエアとしての人は二万年は変わっていないらしい。それなのに、文明といわれるものはローマ以前の数千年までしか遡れない。ローマ以後の二千年で海王星の写真を撮れるし、原子も見られるようになった。文明以前の一万年以上、一体全体「人類」は何をやっていたのだろう?それが知りたいんです。



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