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2005年4月30日

極楽イタリア人になる方法2

ジローラモ・パンツェッタ
KKベストセラーズ: 524円
お勧め指数: □□■■■ (2)

 ジローラモさんのイタリア(というか、ナポリおよび家族、親戚)についてのエッセイ。日本語への翻訳は奥さんがされている。等身大の生活がかかれている。おしゃれなところではなく、汚れており、また、普通の人間の生活している世界がテンポのよい言葉で語られている。

ジローラモさんが推薦する物は、イタリア人の親しい友人でもいないと体験できないことばかりだから、これを読んでもしょうがないっちゃ、しょうがない。 読んでいて困るのは、パスタやピザ、ワインがあたまに浮かんできてしまうこと。夕飯どこかへ食べにいくか? いや、お金がないからスゲッティーでもゆでるか? などと妄想にとらわれることか。

バカなおとなにならない脳

養老孟司
理論社: 1260円
お勧め指標: □□□□■ (4)

 10歳から17歳くらいまでの生徒さんの「人間/脳」にまつわる質問に対するQ&A集。子供の質問であっても読むにたるよいもの。現代の子供は人間関係につかれているのだろう。


 ぼくなんか、小学生のときから虫捕っていますけどね、魚とりも好きだしね、そういうことやっているときに、他人がそれを好きかどうか、自分がどう思われているか、なんて問題じゃないですよ。自分は虫が捕るのがすきだってことけ。


 あぁ、本当に多いね、こういう悩みが…。どうして誰も教えてやらないんだ。人間だけがせかいじゃないんだ、って。

 いまの社会は、それに近い。人間中心の状況だけしかない、逃げ場の内世界になっているんじゃないですか。


 親がサラリーマンばかりならば、親には人間世界がすべてだから、子供にそれが伝染するのだろう。それは、その子供の親も八方詰まっていることを間接的に示しているのだろう。よく考えれば、ともすれば自分もそういう発想になっていることに気づく。

 何かをすれば良い、というものではないことはよく知っている。人の世界は「ああすれば、こうなる。」なんてことは、実はない。そのあたりを考えながら、日々の生活を見直すきっかけになる本です。何といっても読みやすいし、余計な能書きがない分、分かりやすいよい本ですね。

2005年4月29日

イギリスPubウォッチング

デズモント・モリス ケイト・フォックス
平凡社: 1165円
お勧め指数: □■■■■ (1)

 パブとはどんなところなのか。パブにはどんな種類があり、どんな人が通うのか。その社会的な機能はなにか。散文とも解説書ともいえない、気軽な読み物。著者のモリスは有名なひとだし、養老孟司書店の書架に並んでいたし、翻訳が林望であったので読んでみた。が、そんなによい本には思えない。パブ協会発行の会報に掲載されていました、みたいな軽い文章である。

 パブはパブリックハウスの意味で、プライベートハウス(要するに自宅)に招くほど親しい人と話をする場所である。なるほど。要するに、お金を払って使わせてもらう居間なのだ。日本ののみやとはだいぶ違う性質のようだ。だが、日本のパブにすら行ったことがないので、私にはあまり意味をなさない本だった。


生命の星・エウロパ

長沼毅
NHKブックス: 1020円
お勧め指数: □□□■■ (3)

 エウロパの生命を探すという行動を科学者の目からみた位置づけを試みた一般向けの解説書。著者をドライブしているもの(やる気の源)はアーサーCクラークの小説のようである。エウロパに生命がいると考えるのは荒唐無稽なことではない。地球の極限環境で発見された生命の仕組みを考えれば、また、その発生メカニズムを想像するに、エウロパの氷の下の海に、生命がいてもおかしくない。そういう内容をある程度この分野に興味を持つ人に対して説明している本である。実際、Cryobot、Hydrobotという探査機がNASA/JPLで構想されている。

 この本で、極限環境での生物の存在の仕方、呼吸の意味付けとその科学的な方法の多様性について、いろいろ知った。こういう人と組んで活動するNASAはうまいし、また、その準備段階となるいろいろな実験/研究においても抜かりがないところが、日本と決定的に違うところ。日本では、目立つこと、即社会に経済的にフィードバックすることしか認められない。本気でやるなら、当然だが、アメリカへ研究者は行くべきですね、一生は短いのだから。

2005年4月28日

「常識」の落とし穴

山本七平
文春文庫: 480円
お勧め指数: □□□□■ (4)

 「見る」ということは一種の自己投影なのである。

  「常識」の研究につづくエッセイ(時間的には10年間?)をまとめたもの。ここでの常識の意味も「無意識に物を見る方法」のことである。この本の中で社会福祉のあり方についてふれ、未来を予測している。なかでも、東京に農協は69あるが、宮崎には4つしかない、などの意味を加賀藩の十村(小さい農地を大地主に売却させ、あたらし未開墾地に入植冴える方法)の例をあげて説明している。

 世界史をひもとけば例に事欠かないということが書かれている。こういう本を読んで思うのだが、世界史をしれば現在の見方がかわるのだろう。もっと歴史を勉強しようと自分を発奮させるきっかけになる本である。 

2005年4月26日

「常識」の研究

山本七平
文春文庫: 429円
お勧め指数: □□□□■ (4)

 エッセイ。テーマは日本で生活する人々の持つ常識。時事を扱いながら、歴史的な視点から日本の人の行動を「解説」してくれている。

 山本さんが言う常識とは知識ではなく意識でない考え方の枠、物事を評価する際の癖をさす。だから、歴史的視点からみて「結果的にその人に不利になる」とわかっていても、逆らえないようなものである。例えば、あらゆる事物を「善玉」「悪玉」に分けてしまうことなどがあげられる。見方によってはどうにでもなるラベルだが、「善玉」「悪玉」に分けることが「理解」することであると考えてしまうのが「常識」となっている。新聞がこれを助長しているのだが。

 あるいは、自分の感覚を根拠にすることがあげられる。アンケートなどの結果が「わたしの感覚と違う」という印象をもてば、アンケート結果が悪い、嘘だ、すててしまう、ということになる。情報とは、自分の感覚と違うから「意味があり」「価値がある」。根拠をささせる事実に注目しないで、自身の感覚に頼るのであれば、今よりよくなることはない。

 こういう内容を、当時(70年代)の社会的な事件をふまえ、説明してくれている。

2005年4月24日

比較文化論の試み

山本七平
講談社学術文庫: 500円
お勧め指数: □□□□■ (4)

 日本とユダヤ教(セム族系の社会?)との違いについて説明している。宗教の説く内容ではなく、その人たちが「何に拠っているのか」の根本を説明しようとしている。違いの原因は何か? どんなものに「聖」を感じるのかという、論理とは別のものにあり、これは説明不可能なものなのだ。それを「知る」ことから議論を進めないといけない。この本はそういう論旨になっている。

 つぎの説明が興味深かった。

 われわれ日本人にとっては、人骨は単なる物質じゃなくて、その背後に何かが臨在するということなんです。そしてそれを感ずるわけです。向こうの人(ユダヤ人の遺跡発掘チーム)はそれを感じないんです。ところが逆に日本人が何も感じない対象に彼らは何かの臨在感を感ずるんです。その一つが、ある場所への聖所意識または聖地意識になるわけですが、その場所に日本人はそういいう意識を持たない。こういう差ってのがありまして、これを無視できないのです。

 クオリアの違い。それならば、決定的な違いである。なぜなら、いくら議論しても説明しても、伝えることができないから。伝えられなくても、「そういう違いがある」ということは知っておかなければならない。それを無視すると次のようになる。


 自分が臨在感を感じるものに、他人も感じなくてはいけない、という言う考え方になります。これが実に大きな禍根を残した例は、太平洋戦争の時にいくらでもあります。

 何に臨在を感じるのか。それは長い間考えたことになると思います。養老孟司さんの話しには「数学者は数学の世界に現実感を感じている。かれらには、それが「ある」としか思えないのだ。」という話しをよくします。役人にとっては「国家」は存在するものだし、サラリーマンにとっては「会社」は実在です。両者は「機能」にすぎないのに。同じように、幽霊やUFOに実在を感じる人もいます。実在を感じるかどうかは、議論の余地が無いのです。

 そんなことをぼやっと考えるきっかけになる本です。100ページない本ですから、お勧めしちゃいます。

カンガルー日和

村上春樹
講談社文庫: 448円
お勧め指数: □■■■■ (1)

 村上春樹の古い短編集。読んでいて「楽しい気分」には決してなれない。一体何を表現したいのだろうか、と考えてしまう。読んでいる最中に感じる「焦燥感」というか「不安」というようなもの、あるいは、「無音」の世界はこの人の本には一貫して感じる。何らかの「思い」を伝えるのではなく、この「よくわからない感覚」を読者のうちに再現させることが、著者の目的なのだろうか?

 図書館奇譚は最近絵本になって売れたようだ。羊男や女の子を読みたくて買うのか?私には村上春樹は外国料理のようなもの。ごくたまに変なものを食べたいときだけ食べる。それがおいしいからでは決してない。そんな感想を持った。 

2005年4月23日

たいのおかしら

さくらももこ
集英社: 950円
お勧め指数: □□□■■ (3)

 さくらももこのエッセイ3部作の最後。この巻はどちらかといえば小さい頃の思い出が多い。冒頭の文章を数行よむだけで引き込まれてしまう。読んでいるとTARAKO(ももこの声優さん)がしゃべってくれるので、ちびまるこを見ているようである。まったく、キャラが立っている作品は人間に与える影響も大きいだろう。サザエさんとちびまるこ、そしてドラえもんは他の声優さんではむりだろうとは思うが、ドラえもんはどうなったのかな。

 ベストセラーだったので、BOOKOFFには置いてあるでしょう。私は三部作とも100円で買いました。

2005年4月20日

山本七平の旧約聖書物語(上・下)

山本七平 
ビジネス社: 952円
お勧め指数: □□□■■ (3)

 山本七平さんの旧約聖書の解説。ニュートラルな視点で、歴史的な流れから旧約聖書成立にまつわる説明がある。少なくとも上巻は面白い。古代オリエント史に興味があれば、歴史書として読める。旧約聖書の中にある「具体的な記述」は実際の現象をみて書いたのであろうが、「抽象的な記述」は「後世の挿入」であろう。抽象的な個所をはしょると、旧約聖書はかなり面白い読み物なのだ。ギルガメッシュではないにしても。
 一方、下巻の後半は歴史から離れてしまう。私にとってイマイチ。

 説教くさいのは嫌いだけど、古代から人間の振舞いはかわらないということを知ってみたいのであれば、この解説書は有効でしょう。

2005年4月15日

MacOSXv10.3Panther実践活用ブック

掌田津耶乃
技術評論社: 3280円
お勧め指数: □□□■■ (3)

 MacOSの基本操作マニュアルのような本。セットアップ、ファインダー、環境設定、トラブル、TIPS集。辞書のレベルではなく、一通り読み通しておくタイプの本。読み通せるように書いているので、電車の中でも問題なく読めます(座れれば、ですが)。

 MacOSXを使いはじめて2年弱です。中途半端なままに使っていました。この本を読んで新しい知識と感じたのは1/3弱かな。でも、知識の確認という意味で、読み通して良かったと思っています。数日するとv10.4が発売されちゃいますので、ぎりぎり間に合ったかな。


 使うより慣れろといいます。たしかに、いじった方が早く使えます。しかし壁にあたる。自然とちがい、パソコンは「意図」の元に作られています。遠回りでも、製作者の意図を知っておくほうが「使っていて楽しい」と思います。こういう本は、読んだもの勝ちだと思います。

2005年4月 9日

解読 古代文字

矢島文夫
筑摩学芸文庫: 950円
お勧め指数: □□■■■ (2)

 楔形文字やヒエログリフ、線文字Bなど古代の文字についての紹介とその解読作業についてのコラム(雑誌連載記事)をまとめた本。正直、感動するような書き方ではないので、そもそも文字に興味を持っている人なければ面白いとは思わないでしょう。

 粘土板に刻まれた楔形文字にかかれた「世界を襲う洪水」の話しをご存知でしょうか? 矢島さんが楔形文字をベースにした文献から直接日本語に翻訳された「ギルガメッシュ叙事詩」は興味深い本でした。文字でさかのぼれる限界まで過去の物語が十分面白い、という事実に感動しましたから。

 生物学的な形態(脳を含めて)は2万年前から現代人だそうですそんな古代人が「考えた」文字の歴史は、現代の私たちだって実感をもって理解できるはずです。

2005年4月 8日

まぶた

小川洋子
新潮文庫: 400円
お勧め指数: □□■■■ (2)

 短編集。ちょっぴり日常的ではない、というお話。主人公が語るタイプ。男性が主人公であっても、視点が女性のものです。女学生が文章を書き、「〜なのだ。」という語尾で終わる感じのものです。暗いところはないけれど、決して明るいお話ではない。どういえばいいのか、難しい。

2005年4月 6日

伝わるWeb文章デザイン100の鉄則

益子貴寛
秀和システム: 1800円
お勧め指数: □□■■■ (2)

 Webの基本となるHTML/CSSの注意、すぐに直せる文章の書き方の注意、メルマガの注意によって構成されている。対象読者が、もう一つ絞りきれていない感がある。Webをはじめる人にはシステム・道具の説明が皆無、一方、システムをよく分かっている人に語るのだとすれば、「ためになる」実践的な文章の書き方説明が少ない。

 文章の書き方説明だけに限れば、「字下げについて」、「かなと漢字の比率について」、「半角数字記号全角半角文字について」と「実践的」といえば実践的なことがかかれている。全くはじめて文章を書くならば参考になるであろう。しかし、あまりに基本的なことだから本で読むとがっかりする。

 これで1800円。装丁はきれいだから高いのはわかるが、私はバランスが悪い本だと思う。。 

2005年4月 5日

養老先生と遊ぶ

新潮Mook: 900円
お勧め指数: ■■□□□ (2)

 養老孟司さんの記事とインタビューと対談とを束ねたムック。本ではなく雑誌ですね。高橋留美子との対談に興味を持ちました。ただ、いわゆる養老先生の本を期待するとはずします。喫茶店でぺらぺらめくりながら眺める、という冊子ですね。

2005年4月 4日

間取りの相談室

佐藤和歌子
ぴあ: 952円
お勧め指数: □□■■■ (2)

 マドリスト佐藤さんの本。前作「間取りの手帳」は痛快でした。この相談室もおもしろい。世の中変な部屋ってありますね。パンパスペースをむりやり詰め込んだとか、敷地の制約とか。別の目的の間取りを「読み替えて」て使っている部屋もあります。だた、どの部屋の家賃も少し安めに思えます。何故でしょうかね。

2005年4月 3日

ある異常体験者の偏見

山本七平
文春文庫 456円
お勧め指数 □□□□□

 赤線を引いた個所の多さは過去最高です。本というものの役目の一つを完全に果している輝ける例です。司馬遼太郎を読んでも日ロ戦争以後の日本の危うさと第二次世界大戦の敗戦という結論、そして最近マスコミにみてとれる「ぜんぞがえり」に危機感を感じない人は、この本を読まれるとよいと思います。というか、教科書にいれてでも読んで欲しい。切にそう願います。Lesson's Learnedというのは、この本のことです。

 マスコミは国という単位の神経にあたります。正しい情報を伝搬する。いいもわるいも伝搬する。情報のキャリアです。ところが、今は、いや、今でも新聞やニュース番組は意見を押し付ける装置になっています。いわゆる「扇動」という方程式を利用して。この行き着く先は、また同じでしょう。現実無視と無責任。こういった人に多くの人は泣かされる。
 日本は歴史が浅い。ローマと比較しても、ルネッサンスと比較しても浅い。ひょっとしたら、人間に対する自然淘汰の途中なのかもしれない。戦時中の記述を読むたびに、私はそう思います。
 引用していると切りがないです。それでも、一つ二つ紹介したいと思います。

 ”世界はすでに冷厳な事実をはっきり計算に入れいてると私は思っている。軍備とは何か、それは食糧だという事実を。すなわち平を動かさずとも、食糧を動かすだけ、あるいはとめるだけで、そして必要とあらば燃料をも止めれば、それだけで一国を「無条件降伏」させうることは、すでに現実の計画として立案されていると私は考える。”

 ”「事実論」は思想・信条・是非・善悪に関係がない。一つの実験成果と資料とから、中間段階で一つの判断を下した際、その判断自体に「停止」を命じたところで意味がない。というのは「停止」を命じてもその判断の基礎になった「事実」がなくなってしまうわけではないからである。また「なかったこと」を「あったこと」にしても事実が生れるわけではなく、「あったこと」を「なかったこと」にしても事実が消えるわけではない。”

 ”資料に基づき検討すると「日本は必ず負ける」という結論が出る。だが、発表したらどうなっていたか。いや、それをほんのすこしほのめかしただけで、軍部のお先棒かつぎの議員が「戦線で兵士がお国のために死を賭して戦っているのに、ナニゴトダーッ」という。すると担当大臣は「政府も国民も総力をあげて戦っているときに、こういうことを発表するとはまことに不謹慎、私自身も憤慨している。厳重に注意する…」という議員席から「責任をトレーッ」というヤジがとび、同時に「そんなことを発表するやつは非国民の敗戦主義者だ」ということになる。そして戦争が終わればみな知らんぷり「俺の責任じゃないよ、第一指揮権はないしね」”

 このような文章を読んでいると日本は古代ローマ以前の段階にいることがわかる。そして、「自律」とは何かが見えてくる。カエサルは明らかに「自分を律していた」し、そもそも古代ローマ人は法「LEX」を最高位に置いていたことを思い出す。まだ、日本は地中海文明のレベルまで人間の「自然淘汰」が進んでいないのだ。そんな結論に思い至り、半分投げやり、半分気軽になる。