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2005年8月16日

日本は金持ち。あなたは貧乏。なぜ?

R・タガート・マーフィー エリック・ガワー
毎日新聞社: 1400円
お勧め指数: □□□■■ (3)

 資産運用方法としての株式は、個人がとる方法としては日本であまり普及していない。その理由は、戦後のどさくさに端を発する、「資本主義」とは言えそうもない日本の市場と政府官僚の思惑の結果である。しかし、株式を長期保有することは、結果として最有力な方法であることに世界的にみればまちがない。そこで、一般の人にアメリカの市場でインデックスファンドに投資をするところから株式運用になれよう。そういう主旨の本である。

 橘玲の本のなかで「経済的自立という単語をこの本のなかで知った」というくだりを読んだので、この本を読んでみた。この本は、橘玲のような攻めのスタイルではないが、落ち着いた感じがして参考になった。すくなくとも、インデックス買いとは一体何かがわかっただけでもありがたい。でも、私は生活防衛資金が足りていないので、株式には手を出せないでいる。

2005年8月14日

マネーロンダリング

橘玲
幻冬舎文庫: 724円
お勧め指数: □□□□□ (5)

 マネーロンダリング関連の蘊蓄満載の推理小説。これがまた、面白い。ミステリーなんで、内容については書きません。

 どういうわけか、この人の本はとても読みやすい。無駄はないし、人物描写もよく書けている。もちろん、ミステリー漬けの人は私と違った感想をもつのだろうけど、内容はミステリー作家では書けないだろう。トリックなどではなく、蘊蓄をミステリーとして編み込んでいくのが勝負の小説です。面白い。

 しかし、ここででてくる知識、一般の人にはあまり関係がない。知っている人もその筋の人だろう。だから、小説を読んで仕入れた知識は、「そういう知識が大切な人もいるのだな。」という程度である。

 では、なぜこの小説が面白いんだろうか。それは、主人公側に読者が立ってしまうことにある。頼れる人、信頼できる先輩が、いりいろ知識を持っていて、ただそれを「知っていることを」を自慢するのではなく、「行動に直接反映させる」ところが痛快さにつながるのだろう。あーだこーだ言うだけで結局人にやらせるだけの人が主人公ならば、この小説面白くない。知識を持って、それをつかって状況に合うように手を考えて、さっと行動する。それを人よりも早く、スマートに。読者は、この行動力に憧れてしまうのだろうと私は想像する。

 ベストセラーだったダン・ブラウンの「ダ・ビンチコード」は「天使と悪魔」とは違う意味で面白かった。美術史にまつわる蘊蓄を使ったミステリーという線は同じだったけど。橘さん(著者)に言いたいことがあるとしたら、「永遠の旅行者」も良かったので次回作に期待しているが、ちょっとパターンを変えてみてね、と言いたいかな。

川本裕子の時間管理革命

川本裕子
東洋経済新報社: 1200円
お勧め指数: □■■■■ (1)

 雑誌のコラム程度の「時間の使いかた、私の工夫」みたいな感じの内容を束ねた本。ある意味、基本であり当たり前であるもの。内容そのものに問題はない。薄い本だし、書き言葉も丁寧。しかも、分かりやすい単語で、明確なメッセージをそのまま書いている。これで内容が分からない人は、サラリーマンとして働いてはいないだろう。

 そう考えると、どうもこの本は読者不在のような感がある。というのは、「川本裕子の」というタイトルで内容を信用する人ならば川本裕子さんを知っているはずで、そのような人ならばこの本は買わないだろうから。

 一方、著者を知らないで内容のみで買った人ならば、内容を理解してもそれを「実践する」ことは難しいだろう。この本にある内容はどれも「できそう」なものであり、行動することができる人ならば社会人になってしばらくすれば身に付いているだろうと私は想像する。わかっちゃいるけどできない、という人にはなんの効力もない本なのだ。

 この本に「靴をしまった箱にはデジカメで靴の写真を貼っておくとよい」というアイディアが紹介されている。これ、EPSONのCMそのものだが、川本さんはそれを見て「良いアイディア」と思ったのか、それとも、川本さんの発言をEPSON/広告会社の人が知ったことでCMを作ったのか、どちらなのだろう?

2005年8月13日

失われた福音書

バートン・マック
青土社: 2800円
お勧め指数: □□□□■ (4)

イエス「おまえたちは、私を誰と言うのか」

ペテロ「あなたこそ、生ける神の子キリストです」(マタイ)

ということが福音書にあるが、現在の研究の結果では次のようになるとのこと。

マック「あなたは神の子でもキリストでもなく、最初、犬儒派の哲学者のイメージで捉えられた、ヘレニズムの色合いが濃いナザレという土地出身の男です」

 なぜ、西洋社会の人が1000年以上も聖書を「真実」と認めてきたのか。私はこれまでずっと興味を持ってきた。奇跡・復活、なぜそんなことを? それを真実と受け入れる一方で、高度な科学・技術といった文明を引っ張ってきた西洋人の頭の中はどうなっているのか? そもそも、聖書って、だれが考えたのか? 私の知りたいことであった。この本を今まで探していたのかもしれない。 この本の内容は、それらに直接応えてくれるわけではないが、すくなくとも「そもそも新訳聖書は何を目的として、どのように成立し、どう変遷してきたのか」のうち最古層について教えてくれた。そうか、マルコがやりやがったのか!

 ヘレニズムの色濃き街にいた犬儒派に近い哲学を辛抱する男がいた。犬儒派は「実践」を重んじる人たち。理解だけでなく、行動することを呼びかけていた。その人の言葉が「Q1」という語録となって残った。
 その語録Q1は系統だったものではなかったが、ユダヤの預言者の言葉と整合をとる部分が加わりQ2となり、ユダヤ戦争後のエルサレム陥落の影響をうけてQ3という語録になった。
 そして、それをマルコが整理し、洗礼、ユダヤ当局者との衝突、陰謀、教え、エルサレムへの行進、最後の晩餐、裁判、ユダヤ人の王としての十字架、復活といった「プロット」を考え、Q3という語録を物語に組み込んだ。
 その福音書をもとにマタイ、ルカが別バーションの福音書を書いた。

 分かってしまえばなんでもない。オリジナルは一体なんだったけか?となるほど変貌していく「言葉」はよくある。言葉も生命と同じように環境に合わせて進化したものが生き残る。仏教も同じようなものだ。

 しかし、一蹴の小説というか神話に対して、権威というか信ぴょう性というか、真実味を増すためにユダヤの歴史書とリンクさせるアイディアは「天才」的である。これが2000年持たせるきっかけの一つであろう。ある意味、勉強になった。

2005年8月 9日

世界にひとつしかない「黄金の人生設計」

橘玲
講談社α文庫: 800円
お勧め指数: □□□□□ (5)

 『ゴミ投資家のための人生設計入門』の文庫本。内容は、庶民が知るべき「不動産・保険(年金・医療)・教育」について本質。政府があえて口に出さない「トリック」を、これ以上ないくらい明解なロジックで説明してくれます。

 初めて読んだとき、震えちゃいました。なぜ、こんな大切なことをだれからも教わらなかったのだろうか?と。この本を読んでしばらくして、生活を大きく変えました。感動や夢を与える本もいいですが、足下を見つめさせ、見えない社会のトリックを見えるようにしてくれる本こそ「人生を変える本」と言えます。

 大学の後輩が社会人になるとき、この本の文庫本になるまえの単行本を記念品として上げていました。私はこういう物こそ社会人になってから「知るべき」だし、「誰も教えてくれない」と思ったからプレゼントにしていました。しかし、その効果があったのかは分かりません。だれからも「あの本は良かったですねぇ」と返事をくれませんでしたので、読まれなかったのでしょう。最近は、プレゼントとしてはあげていません。

 この本を読むのは2回目ですが、やはり「背筋を伸ばす」効果は変わりませんね。良い本。

2005年8月 7日

孤独のチカラ

斎藤孝
PARCO出版: 1200円
お勧め指数: □□□■■ (3)

 友達がいない状態は悪い状態ではないし、人格否定につながることでもない。孤独が好きなことを病気のように考える必要はない。自分を見つめ直す、深く考える機会は孤独になることで得られる。10代の孤独は、その後の人生に対し枯れることのない泉となる。

 著者は大学の先生だから、学生をみていてそう思ったのだろう。自分の過去の経験から「失敗の要因」を検討し、孤独の良い部分、悪い部分を仮説として持ち出し、Lesson's Learnedとして伝えておきたい。そういう意図の本である。

 若者向けの本なのだろう。私はタイトルだけで手に取ってしまった。自分でも「仲間」を求めつつある今の状態に「おかしさ」を感じていることを、この本のタイトルをみて気がついたから。

 「永遠の旅行者」も孤独がベース音として絶えず鳴り響いている。「ツァラストラ」が引き合いにだされて、孤独について語っているところも斎藤孝・橘玲は共通にしていた。わずか2日間に、「ツァラトストラ」が2回もでるとは。15年ぶりに読み返してみるかなと思ってしまった。

2005年8月 6日

永遠の旅行者(上・下)

橘玲
幻冬舎: 各1600円
お勧め指数: □□□□□ (5)

 傑作です。文句なし、今年一番の読み物です。内容については、あまり説明しないほうがいいですね。

 橘玲さんの本といえば「海外投資を楽しむ会」の一連のシリーズがきっかけの「黄金の羽」の本が有益なものだし、投資や税法・法律の知識を小説に組み込んだ「マネーロンダリング」が有名ですね。この本は「20億の資産を孫娘に相続させる際に、日本国に一切税金を張らない方法はあるのか」を切り口に話しが展開していきます。私は一気に読みました。

 ハワイ島に1週間滞在したことがあります。コナのホテルでのんびりした毎日を過ごしたのですが、その際見た島の情景を鮮明に思い出しました。舞台にハワイ島が効果的に選ばれていますね。読んでいて「ありあり」と情景を思い出しました。さぁ、来年あたりまた行こうか。そんな気になりました。

 こういう小説って、小説家が書くよりも面白いですね。自分が夢中になった事柄をベースに、自分が体感した「思いでのシーン」を膨らませてプロットに埋めこんでいく作業ができれば、想像だけでは達成できない小説が書ける。これは、私にとって参考になりました。

2005年8月 3日

成功して不幸になる人びと

ジョン・オニール
ダイヤモンド社: 1800円
お勧め指数: □□□□■ (4)

 いわゆる「成功」した人のうち、かなりひどい精神的な状態に陥る人の例を紹介した本です。成功すれば、お金があれば幸せになれるというほど、生きていくことは単純ではない。それを改めて教えてくれます。まぁ、よくよく考えてみれば、あたりまえなのですが。

 心理的なメカニズムは、お金があろうとなかろうと人間には備わっています。成功したところで脳の働きが変わるわけではありません。お金があっても対人関係の基本が変わるわけではない。自分にある傾向「分裂症ぎみ」や「投射僻」などがあれば、周りにいる人との関係から「増幅」されることは十分ありえます。だから、余計猜疑心がふくらんだり、不安になったりして、結果的に不幸なことになる。

 こう言うと、「負け犬」論の人は否定するでしょう。もちろん、成功して幸せになっている人はたくさんいるはずで、この本では「長距離成功者」と読んでいます。このような人はある意味、成功しようがしまいが、幸せな時を過ごしていたでしょう。お金と幸せは「因果」ではなく「相関」の意味で「関係が深い」ということをこの本の著者は語っています。人生うまくいかない人を応援する本ではなく、成功と幸せは因果関係ではないということを主張したいのですね。

 ”巨大なピラミッド型組織では、意思決定機関が本社ビルの頂上に君臨している。だが、口の悪い人に言わせると、ピラミッドの頂上は空気が薄い。”

 まぁ、そんな気はします。決して頭がおかしくなる(いや、そうかも)という意味ではありません。果たして、役員と呼ばれている人は幸せなのか? 自分がいる組織をよくよく眺めても「全くうらやましくないし、あんな人生を送りたくない物だ」とよく思います。これを「負け惜しみ」の発言ととるかどうかは、人それぞれですけど。