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2005年10月30日

漢字百話

白川静
中公新書: 720円
お勧め指数: □□□■■ (3)

 甲骨文字から漢字の由来を教えてくれます。いわゆる象形文字の原形を提示し、それがどんな意味をもち、それがどう発展していくのかを見ていくことができます。本当に、象は象なんだ。そんな楽しい気分になれます。

 漢字といえば、部首や旁(つくり)ごとに意味があり、それを配置、構成することで一つの別の意味を持たせるものだと和私は理解していました。例えば、草冠があればそれは植物に関係があるとか。しかし、実はそれだけではないらしいです。本来の字形をさぐっていくと、たまたま変形されて、整理されていくうちに「草冠」ようなものができたのだと。そして、この段階で漢字が持っていた本来の意味をうしない、草の仲間という後付けに意味が付けられてしまうのだと。後から考えだされた理由の方がもっともらしいですが、しかし、その文字の由来は単純ではないのです。

 「右」「左」という文字の「口」「工」の部分以外は「手」。量に「言葉入れる特別な入れ物(口)」と「道具(工)」を携えて、神に祈る場面が由来になっているそうです。古代世界ではおしなべて「神」が社会を統べていたことがよくわかります。あるいは、呪術といったものが、どれだけ力を持つと思われていたのかも。そんなことについて、現代の感覚から離れて世界を見ることができれば、漢字が成立した世界を想像できます。

 漢字をぼやーっと見ていても、文字のそもそもの由来を想像できるようになると、電車の縦吊り広告を眺めるのもまた違った意味で楽しみが持てます。漢字そのものの成立に興味を持たせてくれる導入の一冊としてお勧めします。

2005年10月23日

こまった人

中公新書: 700円
お勧め指数: □□□□□ (5)

 養老さんのエッセイ。雑誌に掲載されいているものをまとめたようです。内容は時事問題ですが、昆虫集めや東大教授時代の体験の視点から、見えてくる社会を教えてくれます。そして、語るときの判断基準は「だって、そうだろう」という常識なのです。人というより虫の視点から、といってもいいかもしれません。ある意味、至極全うなことを言ってくれます。例えば、

” ブロイラーとして飼育されている鶏は、現代の都会人に似ている。目の前を餌と水が流れ、小さな金網の檻に閉じこめられている。いささか狭いとはいえ、この檻をマンションだと思えばいい。  人間は自由に動き回れることになっているが、広義の餌の問題を考えると、移動は決して自由ではない。広義の餌とはつまり給料で、餌をくれる勤務先から勝手に逃げ出すわけにはいかない。移動の自由は個に程度問題にすぎないのである。”

全くそうですね。私は比較的自由な身のサラリーマンだと自分では思っていますが、それは過去に全く不自由な部署での仕事を体験したからそう感じるのです。しかし、企業の一般サラリーマンならば、悲しいけれど、養老さんの指摘する事実を認めると思います、多分。

 この本にあるような「全うな意見」がもっと増えてくるといい。マスコミの論調とは無縁な文章がもっと読みたいです。そんな、「全うな意見」を聞きて見たい方には、この本を推薦します。

2005年10月22日

逆説ニッポンの歴史観

井沢元彦
小学館文庫: 695円
お勧め指数: □□□□□ (5)

 主に戦後のマスコミについて論じています。実際にマスコミの記事を引用し、その記事のバイアス(偏見)を取り出し検討します。一種の社会科学という活動の実例です。嘘・ホント、良い悪い、正しい間違っているとい「言葉」合戦は避けて、記事の根拠とその背景、そして、それを無批判に「事実」として信じた人たちがどういう行動とっていたのか、それが、どのような結果となったのかを「明らか」にしてくれます。本来、ジャーナリズムとはこういうもんだろう、とため息がでます。「ジャーナリズム」を対象にしたジャーナリズムの良い本です。若干悲しい状態ですね、それって。文句なしに良い本なのだが、まぁ、一般受けはしないかもしれません。普段接しているメディアが正しい信じたい気持ちもわかりますし。

 著者の一つの視点が印象的です。歴史を「データベース」として捉えているところです。過去の発生した出来事を「なぜ、起きたのか」「どのような、状況でか」という視点から読むのだ、というのは塩野七生さんの著書で知りましたが、この本の著者も同じようです。

 過去の人が現代よりも劣っているわけでもないし、現代の人が過去の人より多く物事を知っているわけでもないです。そもそも生まれたときはゼロリセットされていますし。ならば、歴史は人間世界のデーターベースになりえます。『ご冗談でしょう、ファインマンさん―ノーベル賞物理学者の自伝』に「方程式が同じなら、現象も同じ」と発言するシーンがあり、なるほどと感心したことをよく覚えています。ならば、このことは物理だけでなく、人の世界にも十分宛てはまるかもししれない。 歴史はそう捉えれば良い。

 自分とは関係のないストーリーとして記事を読みたい人、自分がもっとも知性的であるという事実を口にしたいがために新聞を読む人がいるのなら、このような人からはさっさと距離を置いたほうが良い。新聞というのは、無意識に何が真実で何が正しいかをすり込んでくるので、注意したほうがよいです。活字慣れしていない人ほど、新聞は洗脳の効率的な道具になってしまいます。

2005年10月19日

インストール

綿矢りさ
河出文庫: 380円
お勧め度: □□□□□ (5)

 「蹴りたい背中」は読みました。面白かったです。「インストール」の単行本は、装丁(とくに表紙のイラスト)が気に入らなかったので買っていませんでした。ただし、中身には興味をもっていました。今日、本屋で別の本を購入した際、レジ脇にあったこの文庫本があり、表紙も気に入ったので買ってみました。

 すごいです。なぜ、主人公の描写がないのに、行動の描写がないのに、主人公のセリフと頭の中で考えた意志を言葉にしたこと(つまり、思ったこと)だけで、こんなにまで「面白い」と思わせる小説がかけるのか。小説家ってのは、訓練や努力などとは関係なく「どんなものが良いと思うか」の基準できまるのなだなあとつくづく思いました。

 この本では、主人公の言葉遣いで「いい感じの女子高生」だとわかるし、登場する小学生も「かなりしっかりした子供」を醸し出すことができるのですね。あきらかにフィクションなのですが、こんな世界が実はあるんじゃないかと思ってしまいます。

 プロの人からは賛否両論あると思います。しかし、言葉の面白さを知るためには、こんな本を読まれていいのでか。本を読むことが苦手の人にも「綿矢りさ」は推薦できます。

 ただし、「キッチン」のころはよかった吉本ばななのような変遷を遂げるのだとすれば、いいのは今のうちだけなのかなぁ、という気もする。ともあれ、次の作品が楽しみです。

人は見た目が9割

竹内一郎
新潮新書: 680円
お勧め指数: □□□■■ (3)

 ノン・バーバルコミュニケーションの勧め。「言葉を用いないで意志疎通をはかる」意味で、しぐさや服だけでなく、声の高低、間なども範囲に含まれます。要するに、第一印象を決めるものをさしています。

 著者は演出やマンガ原作が仕事にしているそうです。その仕事のなかで、「なぜ、同じ原作なのに、マンガ作家や演出・俳優によってこうも結果がちがうのだろうか」ということに興味をもったようです。込められた言語メッセージは同一にもかかわらず、全く違う結果になるのは「言葉ではないもの」が結果の大半を決めるからだろう。そういう視点からの観察を本としてまとめられています。

 この本の初めの3分1はとても参考になります。マンガのコマ割りやキャラクターの配置など、「なるほど、そんなことで確かに印象が全然誓う。これは、人の心を制御する因子になる」と理解できます。が、残りは基本的に受け売りです。私でも知っている心理学実験の結果を紹介したり、時事ネタの解説をしたり(しかも、それは違うだろうと私は思うレベルのもの)で、全くダメです。要するに、これは、無理やり話しを膨らませて関係のないものを編集者が入れてしまった結果であろうと想像します。

 「マンガの伝達力」という章だけは、マンガのからくりがわかってとても良いので推薦できます。でも、立ち読みでよいでしょう。

日本人とユダヤ人

イザヤ・ベンダサン
角川ソフィア文庫: 460円
お勧め指数: □□□□□ (5)

 山本七平の日本教徒論です。文句なしの本です。知識を消化するとは、このような思考活動をさすのでしょう。よく、このような本を著すことができる、とため息がもれます。恐らく、私とは全く別次元の脳を持っているのだとわかります。かなわん。

 ごく普通の日本人がもつ世界に対する認識(いわゆる、常識でしょ?という類い)の勘違いを説明してくれます。そして、ここが類書と違うところですが、「なぜ、そうなるのか」について書かれています。そして、それを日本人が指摘するのではなく、日本人とは別の視点、しかもヨーロッパ世界史からみても「外人」となるユダヤ人の視点から解説している。さらに、、その説明方法はもはや「理系」のそれです。テレビをつければ出演されている「いわゆる評論家」のもつあやふやな「偏見」をベースに語っているのではありません。私は、これが山本学か、と感嘆しました。

 この本の中では、いくつも感心し、驚きを感じた説明があったのですが、その中から一つ紹介します。P.195 にある関東大震災後のデマによる朝鮮人虐殺の発生原因です。そして、それに関連して、いわゆる「差別問題」の根幹的な問いを投げ掛けています。

”では一体全体、朝鮮人はなぜ虐殺されたのか、この大天災に遭遇して、思わず日本人と同じことをしたゆえに殺されたのだといえる。そしてこれが、迫害において見逃すことのできない一要素なのである。アメリカでも、黒人が白人と同じことをすれば迫害される。黒人はこれを皮膚の色(およびそれに象徴されるもの)の故だと思い込んでいる。しかし日本に来てみれば、それが誤りであり、問題はもっと深刻なことがわかるであろう。事実、日本人と朝鮮人には皮膚の色には差はないし、外見もわれわれには見分けがつかない。従ってこれは、異種族への動物的・本能的拒否とでもいう以外に説明はつかないであろう。”

 私個人、これが差別問題の根底にあるのだと同意します。論理でも偏見でもないのです。差別感は、会ったときにすでに決ってしまうのです。それは匂いなのか、しぐさなのか、はたまた声なのか。いずれにせよ、理性の問題ではないです。

 しかし、これは逆に言えば、理性でがんばって押さえ込む必要はないかもしれません。あるとき、違和感が「ふうっと」消えることもあるかもしれません。空腹感は食事をとれば消えてしまうように、なぜそんなことを感じていたのかと不思議に思うくらいに、完全に消えることは十分あり得ます。

 山本さんの本を読むことが、私にとってはもっとも「頭を使う」時間になっています。こんな本があるという事実は、生きて勉強を続けたいなぁという動機になります。

2005年10月16日

呪の思想

白川静+梅原猛
平凡社: 1800円
お勧めゲージ: □□□■■ (3)

 白川静という先生の本に興味をもっています。漢字の先生ですよね。とくに、象形文字について著名ということです。しかし、私はどうも漢字や中国史については詳しくないし、興味ももてないです。三国志すら読んだことがない。とりあえず、梅原猛さんとの対談ならば取っ掛かりになるだろうと思って読んでみました。

 甲骨文についての記載がおもしろいです。なにやら遺物らしき骨に、筋がたくさんついている。それをよくみると「雨降らんか」って書いてある! 久々に驚きました。本当に象形文字って使われていたのだ。しかも、すごいシステムなんだ。かなり賢い。私はこういう「工夫」にはとてももろい。涙ぐむくらい感心してしまうたちなのだ。

 本書の構成は漢字というよりも、中国史や古代日本の中国文明との関わりに話しが多いです。私はアイヌの人の習慣は縄文時代からのものが残っているということ(江戸期まで貝塚をつくっていたということなど)が印象深くの残ってしまいましたが、これはどちらかというと梅原さんの脱線話であって、本書の筋ではないですね。「詩経」や「孔子」についての語らいが中心のようです。

 やっぱり漢字の由来は面白い。漢和辞典など読んでもちっとも面白く感じないのだが、「白川学」と呼ばれるものには興味をもってしまう。地味にだが、調べてみようと思いました。 そんなきっかけとなる本です。

食べちゃおイタリア!

パンツェッタ・ジローラモ 光文社知恵の森文庫: 686円 お勧め度: □□□■■ (3)

 ジローラモさんのエッセイ。イタリアでの思い出と食べ物の話しが綴られている。登場人物もエピソードも「おもしろいなぁ」というものばかり。悪い人がいない世界のように思えてしまうので、休日の午後に読むには持って来いの本。本当のこと?なのかどうか、詮索しようという気にならないのは、奥さんの日本語訳がジローラモさんのしゃべりにマッチしているからでしょう。つい、笑ってしまう。

2005年10月14日

新聞・テレビはどこまで病んでいるか

稲垣武
小学館文庫: 476円
お勧めゲージ: □□□□□ (5)

 新聞・テレビの報道を真に受けるとどうなるのか。真実とか不偏報道とか、どの程度のものなのかを検証している。かなりバランスがとれている。普通、このようなタイプの本は、「こんな記事はこの程度のいい加減な根拠、記者の価値観で独善的に書かれている」ということを書いている方法が「いい加減な根拠、著者の価値観で独善的に」書かれているものだ。しかし、この本はちょっと違うようだ。

 朝日・毎日・読売・産経、および、ニュース番組の過去の事例を中心に「なぜだめなのか」をきちんと説明している。取り上げられている内容を読むに、こんなニュースのために金も時間を費やしたくないものだと、心底思う。

 とはいえ、ニュースを知るにはこの程度のメディアしかない。インターネットもあるが、現実的にはこれらのメディアを使うよりない。では、どうするか。最終章にまとめてよい方法がかかれている。つまり、「新聞社の癖」を知っておいて、ニュースを読むとに「癖を補正する」というものだ。

(1)各社のポジションを知る(反体制・保守、右・左)
(2)各社のキーワードを知る(反戦、環境、etc)
(3)記事内で「矛盾」を探す

 とくに(3)はかなり有効とみる。おかしな記事を書く人間が「論理的に一貫しているはずないし、それだけの証拠を集めているわけがない」ので、記事をきちんと読めば見破れるのだ。

 しかし、だ。こんなことしてまで本当に新聞記事など読む必要があるのか? じつはない、と私は思っている。ばかばかしくてここ数年新聞をとっていないが、ちっとも困らない。本当に重要なニュースならば、探さなくても耳に入ってくる。

 そもそも、新聞記者が「あたまがいい」わけがない。なぜか? 仮説を立てて検証するという作業をしてないのだから「真実」などに迫れるはずがない。こういったことは訓練しなければ身に付かない。文章書きならばまだましだが、サラリーマンでしょ、記者さんは? 期待するほうが野暮。記者に期待が持てないなら、新聞社でもむり。NTVの巨人中継のようなもんでしょ、結局。

 現在起きていることをすべて知ることはできない。また、起きていることに対して働き掛けることもできない。可制御でも可観測でもないものは、要するに「縁なき」もの。結局のところ、ニュースを知ることに時間を費やす必要などない。必要ならば、仮説をたててから集めれば良いのだから。

 そんなことを考えてしまった。良い本だと思います。

2005年10月12日

デザインの極道論

川崎和男
アスキー: 2200円
お勧め指数: □□□□■ (4)

 著者の考える「デザインという単語の意味する範囲」はかなり広い。「ファッション」やグラフィックアートといったものだけではなく、建築・映画などを含み、「医療機関の運営」まで含まれるようだ。この本で、「介護老人施設」をどうデザインするのか、という問題を考えるため、とある医療機関を著者が見学したときの驚きが書かれている個所がある。すこし引用してみる。

” ある施設では、そのオーナーである医療法人の会長自身が施設すべての汚れ物を選択しているということを知って、大変驚いた。
 その施設のスタッフに問いただしたところ、自分たちには任せてもらえないというのだ。会長に尋ねると、「なんといっても、施設で使用するタオルやリネン類の洗濯は最も重要であるから、自分がすべてを担当することにしている。肝心なことが義務で済まされてしまうと、きれいではなくなるから」という回答だった。”

 せっかく生きているのだが、何かの基準を持っていたいと思う。このオーナーは確かに持っている。このオーナーの行動を自分に置き換えて考えると、私にとって他人に任せられないことは何だろうか。

 デザインは必ずしも視角で感受するものではない、ということの意味が私なりに分かる。ある意味「問題解決のアート」なのかもしれない。

 MacPowerに連載されていたエッセイなので、昔を思い出しながらでも一気に読めてしまった。「デジタルなパサージュ」から数え5冊目。購入したのはずいぶんと昔なのだが、本棚の整理をしていたら、「デザイナーは喧嘩師であれ」が気になり、ついつい全部読んでしまった。それ以後、読んでいないエッセイ集を読み倒してしまったことになる。

2005年10月 5日

デザインは言語道断!

川崎和男
アスキー: 2200円
お勧め指数: □□□□□ (5)

 川崎さんのエッセイは強い意志であふれている。だから、読んでいるとこちらもつられて熱くなっていくのが分かる。自分の美学にこだわり、それを主張し、相手に納得してもらえるような説明を考える。そして、喧嘩っ早くなる。そんな感じでしょうか。

 では、どんな内容なのか。読み終わった今、こんな内容だったということを言葉にできないでいる。この本はエッセイを集めたものであり、内容は著者のその時の思いであるから、記憶すべき具体的な単語が思い浮かばないのだ。小説ならばプロットがあるし、教科書ならば記憶すべき知識とその体系がある。川崎さんのエッセイは背後に一貫した主張があるのはわかる。それに私も共感している。しかし、デザインにかけた意気込み、美学、生き方ということ以外、感想を言葉にできないのだ。ある意味、この本を読めなかったのかもしれない。

 とはいえ、電車の中で読むには最適な本だと思います。著者の熱さが、やる気を振り起きさせてくれれるので、テンション高く仕事を開始できますから。

2005年10月 4日

魅せる技術

西松眞子
インディテックス・コミュニケーションズ: 1500円
お勧め指数: □□■■■ (2)

 マナー全般の入門書。「こうしなさい」という指導ではありません。「こうしたら良い感じです。きっと、周りの人もそう思います。そういう感覚の本です。

 服装や食事マナーよりも、視線の先にあるものという考えが気に入りました。女性は男性のどこをみているのか。指先? へぇ、そうなんですかねぇ。爪を切る、手をどこにおいて話す、顎をどのくらいの角度にするとどう印象が変わるのか。読んでみて、納得しました。

 私はあまり交友関係が広くないし、オシャレな人から教わることはないし、一人で気づくという機会も少ないです。だから、こんな感じの本を読むとちょっと得した気になれます。

2005年10月 3日

プレゼンテーションの極意

川崎和男
ソフトバンクパブリッシング: 1500円
お勧め指数: □□□□□ (5)

 表題よりも著者を見ればどいう本なのか想像つくかもしれない。熱い。著者の意図が伝わってくる本である。だから、直接話を聞いているかのように面白い。教科書を眺めているのとはまったく違う。

 プレゼンテーションでは「発想・表現・伝達」が基本。これらを重んじるならば、発表者の価値観、基準、といった内面がそもそも問題になる。意図がない、意志がない、価値があると信じていない発表には付ける薬がない。表現ではないのだ。PowerPointを使って、まいしてやテンプレートを使っていることそのことが、「この発表は聞く価値がない」ことを表現してしまている。とまぁ、こういう強い意志で書かれた本である。

 発表者が「伝える必要がある」と持っていないなら、発表の工夫をしても無駄である。伝えたい、と情熱をもっていないものはそもそも伝わるはずがない。伝えたという情熱を持てるかどうかは、つまるところ人格に関わってくる。例えば、何かにこだわりがない人が、情熱などをもつだろうか、使命感をもつだろうか、ましては、聞く価値のあることを持っているだろうか。そんなことは絶対にないだろう。

 久々に、切れのよい論理を聞かせてもらった。こういう人間に出会うことはまれだから、本の中の出会いだけでも大切にしてきたいと思うのである。

2005年10月 2日

伝わる、WEBテキストのつくりかた

栗原明則
BNN: 1600円
お勧め指数: □□■■■ (2)

 WEBテキスト(WEBページにのせる文字情報)の基本的なガイド。グラフィックデザインと同様に、人が理解しやすい「文字情報」について、著者なりの工夫が掲載されている。フリーのWEBデザイナーとして実績がある著者が「私はこうしている、参考にしてください」という覚え書きが列挙されている。

 内容は平易な言葉で無駄なく説明されている。悪く言えば、ちょっと考えれば「それはそうだ」というものが多い。受動態ではなく能動態、否定ではく肯定で文章をつくる、単語の配置の選択基準、漢字とひらがなのバランス、文字サイズ、行間などについて、著者が獲得したスタンダードを知ることができる。

 よい内容だとは思うが、物足りない。もっといえば、つまらない。このような本であれば「必要な情報がコンパクトにまとまっていることが使命」なのだから、この本は使命を果たしているのだが、読んでいてつまらないのだ。なにか、遊びがちょっとであればいいのだけど。

好かれる技術

西松眞子
インデックスコミュニケーション: 1500円
お勧め指数: □□□□■ (4)

 好かれるといっても性格や話題といった高次のものではなく、「生理的に」嫌われないためのちょっとした工夫のこと。本の装丁が綺麗で、ちょっと女性向きなのかなと思って立ち読みしてみたら、「アンガールズのジャンガジャンガは好かれる要素をすべて含んでいる」といった章が目に留まったので買ってみた。

 握手や目線、姿勢やしぐさといったボディーランゲージ、立ち位置、服の色の基本などの「簡単に清潔感・高感度が上がる」方法が書かれていた。また、その実例を裏付けるハリウッドスターのスナップが掲載されていて、「へぇ、なるほど」と思えるような説得力を持っている。さすがに好感度を研究しているコンサルタントだけあって、本の作りも好感度が高い。

 うさん臭くなく、押しつけがましくない、しかも実用的な技術。実践、実践。