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2006年4月30日

シュメル ー人類最古の文明

小林登志子
中公新書: 940円
お勧め指数: □□□■■ (3)

 シュメルだけを扱った新書は珍しい。新書なのでただ学術内容だけを簡潔に記述したような本ではなく、現代の生活と関連を付けるような記述が多く見られる。アテネオリンピックのイラク選手団の入場行進の状況やイランイラク戦争で持ち去られたシュメル美術品などへの言及されている。

 ハンコは日常品である。ハンコを現在でもつかっているのは、実際問題日本だけである。シュメールでも日常生活に円筒印章というハンコが使われていた。ヒモを押すことで、IDカードやアクセサリーのようなものでもあった。泥に押した印影をもとに、シュメールの文化をこの本はしてくれる。有名な遺品を陳列し、解説をつけるだけといったつまらない本とは違い、一つの作品をまめに解説している。つまり、ちょっとしたガイドさんのようなところがある本。

 いつか、中東に行ってこれらの美術品を直に見てみたい。それがだめなら、大英博物館かルーブル博物館。そんな気分を涌かせてくれる。

2006年4月29日

ローマ帝国の神々

小林英雄
中公新書: 780円
お勧め指数: □□■■■ (2)

 古代ローマ帝国の時代の神々を紹介する小冊子。著者の思い入れはあまりない感じがするので、面白感じはしないのだが、知識を整理する意味では意味がある本。ただし、あまりお進めできない気はする。この本は、五賢帝以後のローマ史をしらないと登場人物の羅列のような無意味な気分になる記述が結構ある。

 古代においては、文明の記録というのは要するに神々の記録ようなところがある。農業の知識というより祭儀の知識がかかれているのか、物語がかかれているのかである。シュメールのように、文字の練習や貢ぎ物の記録というのも存在するのだが、人の興味を引くものは物語になる。本書も古代オリエントの神からミトラス教、キリスト教へと紹介を進めている。

 古代ローマでは肝臓占いや鳥占いもあったのだが、西暦紀元をまたぐ前後で信じられなくなっている。人の行動を左右する影響力というのは、結局のところ人が信じるかどうかで決るのだから、今も昔も似たような流行り廃りのパターンがある。ミトラス教の遺跡は結構あるものだと本書で知った。次のローマに行くときにはよく見てこようと思う。

2006年4月27日

梅原猛の授業 仏になろう

梅原猛
朝日新聞社: 1300円
お勧め指数: □□■■■ (2)

 カルチャースクールでの仏教講義。普通の人に向かって仏教とは何かを端的に紹介している。要するに、仏になることが目標の行動だという結論である。そこが他の世界宗教であるキリスト教、イスラム教と違う。かれらは、神になろうなどと想像だにしない。上座部仏教の発想ならば、まぁ、そうだろうということになる。「救われる」という発想そのものは、そもそも仏教ではないだろうということは、素人の私にも理解できる。そして、行動規範として、参考になることを詩の形で述べているのが仏教ならば、仏教は宗教ではなく「哲学」に近い。
 そんなことを考えるきっかけになる本である。

2006年4月26日

書きたがる脳

アリス・W・フラハティ
ランダムハウス講談社: 1900円
お勧め指数: □■■■■ (1)

 書き出したら止まらない状態(ハイパーグラフィア)や書きたくも書けない(ライターズ・ブロック)という「症状」を医者が解説した本ということで購入したが、まぁ、つまらなかった。この著者が要するにハイパーグラフィアなんでしょう。解説書のような形で「構成」がされていなく、思いついたことを蘊蓄を交えて並べているだけです。著者が悪いというより、編集者がダメだった。

 本を書く訓練をしていなと、ライターズ・ブロックと同じような状態になります。いろいろ頭の中に言いたいことがあるような気がするのですが、いざ言葉を綴ると何もでてこない。これは、表現できないのではなく、実際何もない状態が多いです。書きたいことがあるような気がするクオリアを感じているだけです。文章を書く訓練をしていれば、ハイパーグラフィアとは行きませんが、少しずつでも引きだせますから。

 茂木健一郎が解説ということで買ったのですが、失敗しました。茂木さんならこの本がいいか悪いかぐらい判定できると思うのだけど・・・。

2006年4月24日

ローマの道

藤原武
筑摩書房: 2400円
お勧め指数: □□□■■ (3)

 ローマ街道を歩いた旅行記。雑誌のコラムのような、しかも軽い気持ちで綴った文章なので、塩野七生さんの書く世界を読んだあとの私には拍子抜けした感があります。悪い本ではないですが、ちょっと個人的な印象が強いです。
 
 人生のテーマとしてローマ街道、橋、水道をめぐって思いをはせるというのは私も抱いているので、参考になります。どの程度の語学力や知りあい、海外渡航経験があるのか。このエッセイを読んでいるとそのあたりが読み取れます。今ならばブログだったでしょう。知ろうとの私が目標にするとよい本だと思っています。ティムガッドやパルミラに行って見たいですね。

2006年4月22日

ひらめき脳

茂木健一郎
新潮新書: 680円
お勧め指数: □□□□■ (4)

 aha!体験についての解説本。楽しくよめます。これは、テレビ番組にゲストで登場したときの話しをまとめたものなので、実はあまりないようが深くない。冒頭の「aha!」についての説明している部分がほぼ全ての内容といっていい。この本も養老孟司の「バカの壁」と同様、著者が編集者に語って、それを編集者が本に興すという作成方法がとられている。だから、どうも茂木健一郎的ではない本である。冒頭にでてくる絵は面白い。何を書いた絵ですか?をあてるだけなのだが。私は全部わかった。ただし、4枚のうち二枚は4時間以上考えたあとでわかったのだが。

2006年4月20日

危機の日本人

山本七平
角川oneテーマ21新書: 680円
お勧め指数: □□□□■ (4)

”倭の風俗では、あらゆる事がらや技術について、必ずある人を表立てて天下一とします。ひとたび天下一の手を経れば、それが甚だ粗悪で、甚だつまらないものであっても、必ずたくさんの金銀でこれを高く買い入れ、天下一の手を経なければ、甚だ精妙な物であっても、ものの数ではありません。”
 秀吉の時代に韓国の知識人から日本をみた印象の記録である「看羊録」というものが残っている。それによれば、以下に日本が今で言う韓国・朝鮮より劣っているかが書かれている。そのなかの特徴的な日本の見方として、上のような職人にたいする評価がある。
 こういう気質が良かったのか悪かったのかは別として、純然と価値をもっていた時期があった。明治どころか現在に至るまで、職人にたいする一種の尊敬は対外の日本人にはあるのではないかと思う。

 それが国際社会においての日本人の危機と関係があるのかといわれれば、実はよくわからない。明治以後、世界から借りたお金をきちんと返済した国は日本だけだと言われている。現在における発展途上国とはそこが日本と決定的に違っている。そういう主旨の発言がある。確かにそうだが、なぜ日本だけが?ということも少しは考えておく必要がある。職人気質だけが借金を期日までに返済することの理由にはならない。外貨を稼ぐ手段として「生糸」があったのだ。精神論だけではなく、からくりも知っておく必要がある。

 「空気の研究」と同じ議論になってしまうが、昭和にいたるまで「現実」に価値を置く素養が日本の社会にはあった。それがなくなってしまうと、日本全体はとくにマスコミは「空気」に支配されてしまう。そして、おかしなことをして自滅する。そういう性質なのだから仕方がないのであって、それはそれと知っておくことが日本人を危機に陥らないための方法である。それを具体的な議論で教えてくれる本である。

2006年4月18日

聖書の起源

山形孝夫
講談社現代新書: 650円
お勧め指数: □□□■■ (3)

 ハリーポッターでも抜き去れない歴代ナンバーワンのベストセラー文学である「聖書」の成立に関する小史を紹介する新書。古代オリエントを初めとする古代文明に興味がある人のみならず、美術でも文学でも西洋を理解仕様とする人にとって必須の教養の原点が成立した背景について教えてくれる。

 本当にあったのかなかったのかという次元での論争に私は興味がない。それよりも、どういう背景で成立して、それが同発展してきたのかについては興味をそそられる。その一つの切り口は、口伝文学としての「進化」である。

”福音書に限らず、一般に口承文学に関して、ある物語が、口から口へ伝承されていく過程において、もっとも変化を受けやすい部分は、物語の様式や全体の構造ではなく、むしろ細部の付随的な部分である。それは、人間の好奇心と結合したイマジネーションの結果であるが、好奇心というものは、つねに物語の核心よりも、その細部の明細化にむかって働く傾向をもつからである。
 この法則は、福音書の場合にも、ほとんどそのままあてはまる。たとえばひとつの伝承は、後期のものになればなる程、古い伝承では曖昧な部分ー人名とか地名が明確化されている。イエスと共に、十字架につけられた強盗は、誰であったか。イエスの墓を見張っていた看守長は誰だったか。こうした疑問は、最初の伝承では、ほとんど関心のなかに入ってこない。”

 なるほど、本当にそうかもしれない。物語が考案された初期に細部が決っているのではない、ということである。一般には逆に思われているような気がする。でも、そうではない。
 この法則は、人の噂についても該当するだろう。詳細な情報であればあるほど、かなり伝搬末期であるということだ。口伝文学というのは、そんなことまで研究されいているのかと感心してしまう。

2006年4月16日

グーグル完全活用本

創藝舎
知的生きかた文庫: 600円
お勧め指数: □□□■■ (3)

 Googleの解説本。知っているようで知らないことがおおいなぁと感心しました。毎日使っているとは言え、単語をいれてクリックしているだけ。マイナス検索なんてものすら知らなかったのだから、Googleの能力を引き出していなかったということを知りました。

 計算機に強い、おれは毎日使っているので、こんな初心者本など読む必要ない。そう思っている人ほど見てみた方がいいですよ。本当に使い倒している人には必要ないのですけど、80%以上はマイナス検索すら知らないでしょうから。濃くできる程度の便利な使い方が満載しています。この本を読んでみて、知っていることでもゼロから学んでみれば新しい発見があるのだと思い知りました。

2006年4月14日

「空気」の研究

山本七平
文春文庫: 438円
お勧め指数: □□□□□ (5)

 名著です。参りました。頭をフル回転させて読んでしまいます。日本人についての「法則」を抽出して言葉にする技は歴代の科学者に引けをとりません。スゴイ人です。

 日本人ならば誰でも経験があると思います。集まって話しをしているうちに「なんとも言えない圧力」のために、思っていることを言えなかった。それが、愚痴や誹謗のようなものならばむしろ良いことなのですが、俺はおかしいと思う、みんなそう思っているはず、だけどココで言えない、言ったら自分の損になる。そんな状況である。いわゆる「空気を読め」と言われるときの「空気」です。この本は、この空気の正体を暴きます。びっくりです。

 ある場が発生させるプレッシャー。ある馬鹿げた権力が発生する空気。第二次大戦中のばかばかしさは、殆どこれから発生しました。「竹槍ではB29に届かない」そんな誰が見ても当たり前なことを「口に出して言えば」下手をすると殺される。軍人そのものも、実は信じていないのに、催眠術でもかけれた状態になってしまう。これが、「空気」のなせる技です。

 「あの時はそんなことが言える状態ではなかった」 こう回顧する人がいます。事件の主役になった人なのどがそうです。でも、結果的に不幸になる「空気」に対する確実な対処法は存在します。それは、「水を差す」ことです。「興ざめ」や「顰蹙」と同じようにマイナスの意味が負荷されていますが、「空気」などは「水をさせ」ば即時雲散霧消します。先の竹槍の話しも、全員がそれを言い出せばよかったのです。
 ところが、「空気」はそうなることをおそれ、水を差す人に対して「黙れ」と命令します。そこで黙ってしまえば終わります。

 昔の話ではなく、いまでも毎日そこいらで「空気」が発生しています。そして、「空気」の正体は全体主義的無責任体制ですから、絶対に見逃しては行けない。見つけ次第、「水を差す」。花についたアブラムシと同じです。さっさと手をうたないと、自分もばかばかしさに巻き込まれる。自信をもって、水を差そう。そんなことを教えてくれる本です。

2006年4月12日

オリエント神話と聖書

S・H・フック 山本書店: 840円 お勧め指数: □□■■■ (2)

 山本書店の絶版の本。ISBNが振られていない。内容は、起源前後の神話について。古代文明を知るときの基礎知識なのだが、一冊にまとまっているのがありがたい。奈良に旅行にいったとき立ち寄った古本屋で購入した。

 確かにオリエントの神話が説明されているのだが、専門書的なレベルの記述ではない。かといって、一般の人の読み物としても、使いようがない事例が多い。近年の本は、新書サイズのものであってもこの本にあるような神話は説明されていることが多いので、私はあまり良い本だとは思わなかった。でも、山本書店の本ならば、きっと良いものなのだろう。参考書として本棚にあるのは悪くない。

2006年4月11日

千円札は拾うな

安田佳生
サンマーク出版: 1200円
お勧め指数: □■■■■ (1)

 久しぶりに読んだビジネス書がこの本なのだが、全く面白くないかった。ビジネス的には成功している人なのだろうけど、自分がどうして成功したのかという理由は実はわかっていないようだ。少なくとも、この人、命題論理を知っていない。15分もあれば読めます。

 一つ評価できるとしれば、「自分では似合っていると思っているスーツは実は似合っていなかったのだ。」ということを説明しているくだりである。最近「こだわり」という単語がプラスの意味を持っているように使われるけど、普遍性がない価値観にしがみつくというマイナスに意味ももっていることはご存知だろうか。こだわりを持っていない点が上手く作用したよいエピソードとして面白い話である。

2006年4月 7日

第一阿房列車

内田百けん
新潮文庫: 476円
お勧め指数: □□□■■ (3)

 簡素な記述。余計なことがない文章です。扱っている対象は、「鉄」である自分の行動記録なのですが、それでいてユーモア感があるので、楽しく読めるのです。内田百けん自身のおかしさ、同行者であるヒマラヤ山系君のとぼけ。なんだか、不思議な取り合わせの道中です。珍しい出来事など何一つ書かれていないのに、読んでしまいます。だから、とても人には勧められないです。それでも売れているようです。日本語そのものに興味を持っている人ならばたどり着く人なのだろう。

 読んだところで何一つ「得るものがない」ような気がする本なのだけど、読んでいることが楽しいのでまた読んでしまう。絵を見るような、おいしいものを味わうような本であって、知識を得る、賢くなるための読書の題材ではない。それでも興味を持ってくれる人にはお勧めします、ハイ。

2006年4月 5日

プロセス・アイ

茂木健一郎
徳間書店: 1800円
お勧め指数: ■■■■□ (4)

 茂木さんは小説も書くのか! とびっくりして買って読んでみた。びっくりするほど面白い。小説を書いているけど、このほうが茂木さんが思っていることを大胆に発言しやすいし、同時にいろいろな「見方」を人を変えて説明することができて便利なのだろう。結局、クオリアや意識についての本を「小説」という方法を使って記述してみた。そんな、発想の本であろう。

 意識についてのメモをかくとネタバレの危険があるので、別に思ったことを書いてみる。この本でこんな一節を目にした。一種の親睦会のようなパーティー中での人々(大学生)の行動を眺め、それぞれの人の性格を遠回しに推定させる部分。

”「ヌーメアのビーチにある、『ラ・ドルチェ・ヴィータ』というイタリアン・レストランに2日連続で行って、同じテーブルに座ったよ。ちょっとコテージ風の店で、夜になると松明が並んでいてね。いい店だった。すっかり馴染みになって、3日目には、もじゃもじゃ頭の伊達男のウェイターが・・・」
 自分の個人的体験が、そのまま普遍的な意味を持つと思うところが、隣の男の欠点だ。
 だが、女子学生を口説こうとする素振りをあからさまに見せないところは、好感がもてる。
 軍司はテーブルをたった。”

 話し相手がもっとも情熱的に話すことは、話し相手が「良かった、面白かった」という体験ではないのか? だからこそ、話しの細部を細かくも粗くもできるし、考えたり想像したりする必要がないので、淀みなく言葉がながれてくるし。確かに、「よかった、よかった」では「どうよかったのか」は伝わらないから、工夫が必要だけど、話題の選択としては自然ではないか。もちろん、初対面の人には、良かったと感想を述べる人の好みや美意識が全くわからないのだから感じが伝わりようがないから、話題としては不適切であるのだが。

 翻って考える。初対面の人には普遍性のある情報を伝えるように勤めるべきなのかもしれない。つまり、良かった、悪かったという「感覚」を基準とする評価を扱った話題をさけるほうがよい。そういうことだ。
 では、普遍的な話題とは一体何か。ただのニュースなのか。ニュースの「裏話」であれば、ニュースであることから共通の土壌を確認する必要はなく、裏話という追加情報を提供できるので興味を持ってもらえるだろう。本から引っ張ってくるのも、同じ方法。その他にはないのか。

 人と話すのも大変だなぁと思う。

2006年4月 2日

ローマが残した永遠の言葉

小林標
NHK出版生活人新書: 660円
お勧め指数: ■■■□□ (3)

 ローマ人の残した名言を1ページずつ紹介している。一言一言に重みがあるのだが、はたしてこのような「お気軽」さを示す新書で紹介したところで、読者はちゃんと受けてとめてくれるのであろうか? そんな心配をしてしまう。

 カエサルやキケロやセネカといった「巨人」の言葉には時代を超えた普遍性がある。感心するというより、びっくりする。時代も国も歴史もちがうのに、今でも当てはまるから。ひょっとしたら、これらの名言をうまく現代に当てはめて発言をすれば、いまでも「現代社会を切るコメンテーター」としてやっていけるかもしれない。そんな気がする。

 しかし、いくらいい言葉をしっていても、行動に反映できなければ価値が価値たらんとしないのだ。それについても古代ローマ時代から変わっていないだろう。だから、今でもローマ人の名言は名言であるのだろう。