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2006年7月30日

イノベーションの達人!

トム・ケリー
早川書房 2625円
お勧め指数 □□□□□ (5)

 発想する会社につづく第二段。働くのがすっごく楽しそうなIDEOという会社の中で考察された、「イノベーション」なことをする組織の分析。こんな人が必要なのだという人のタイプを10に分けて、どうしてそのような人が必要なのか、実際どのようなことがIDEOであったのかをもとに、楽しく解説されている。

 この方法は、「辞令」で解決することはないことは読めばすぐにわかる。方程式ではない。むしろ、後付けに近いものである。10のタイプの人を集めようとしてもできるかわからないし、採用時点で10のタイプのどれかに当てはまる人を見つけたとしても、会社のかで3ヶ月も入れば、「会社に適した人」になってしまうのだから。つまり、もともと、IDEOの様な会社でないと、この本でしょうかいされているようなチームはできないのではないか、というのが私の感想ですね。

 あるとき、IDEOのようなイノベーションメンバーを立ち上げるのだとしたら、全く新しくしかも旧態依然とした組織とは別に立ち上げないといけないでしょう。でも、それって結局新しい会社を作っているのと同じ。つまり、日々の業務をつづけていくのであれば、この本で書かれた世界は「見果てぬ夢」に終わります、たぶん。

優雅な暮らしにおカネは要らない

アレクサンダー・フォン・シェーンブルク
集英社インターナショナル 1365円
お勧め指数 □□□□□ (5)

 上品さ、楽しさ、優雅さ。そんな生き方は「所持金・資産」の増加関数ではない。つまり、所得があることと優雅に生きることはよく考えると相関はない。没落貴族の家系に育つことは、人がもつある種の「気品」の良い面を観察するための視線を設けてくれる。この本のタイトルは決して「ルサンチマン」な態度の表明ではない。

 結局のところ、工夫する意思があれば、結構楽しく生きていける。そして、「何が本当に幸せを与えてくれるものなのか」を深く自省した人がもつ発見があれば、収入が多くないからといえ不幸なことになることははない。会社を首になるのでは、という不安や「資産がないことに対する恐怖」は、結局のこところぬぐい去れないのだ。

 どうやって、優雅に生きるのか? この本では具体的な方法は示されていないが、著者のよぶ「優雅に生きる」という意味は十分に理解できるように書かれているので、後は自分の生活に合わせて、工夫と発見とを続けていくよりないでしょう。でも、さすがは貴族ですな。感心しました。

2006年7月29日

小林薫と訪ねる 美の巨人たち

テレビ東京編
日本経済新聞社 1800円
お勧め指数 □□□□■ (4)

「美の巨人たち」というTV番組のナレーション原稿が本になっています。小林薫さんのナレーションで紹介する美術の案内番組。私は、ことに気に入っています。なぜって、毎週毎週高品質な番組をずっと続けてけるスタッフに興味があるからです。リサーチ一つとっても、半端じゃないです。本を圧縮してナレーション原稿を書いているような気がしません。ちゃんと、意図がある。紹介する対象を見つめる視線がある。そんな解説を毎週書けるのはすごい。

それに、小林さんの読む「日本語」が素晴らしい。NHKのアナウンサーのような「キレイかもしれないが薄っぺら」な日本語とは一味違う趣が小林さんの朗読にはあります。なぜでしょうか。そこが、役者とアナウンサーの違いなのでしょう。体言止めや倒置を自然につかった日本語には、いつも真剣に聞き入ってしまう。自分もそんなふううに話をしたいから。

古事記

角川書店篇
角川ソフィア文庫 629円
お勧め指数 □□□■■ (3)

 古事記の現代語訳。さすがに「古事記」というものがあることは知っていても、内容までは知らない。日本の古典も1000年以上の歴史があるのだし、「知らない」というのももったいない気がしたのでこの本を手にした。なにせ、現代語訳ですから。

 へんな名前の人が多い。でも、いくつかの物語は知っている。因幡の白兎とか、海幸彦山幸彦とか。イソップ物語と同じような道徳的な短編だと思っていた物語は、いわゆる大和朝廷の歴史の「流れ」の中に配置されいているトピックだと知った。ちゃんとした「編者」がいた。そんな事を知った。

 古代とか現代とかいっても、一人の人間の歴史はたかだか100年に収まっている。古代の人が編纂した物語でも、現代人の私が楽しめるのか。もっと読んでみよう。そう、思わせる本でした。

2006年7月22日

食のクオリア

茂木健一郎
青土社 1400円
お勧め指数 □□□■■ (3)

 食についてのエッセイ集。Webマガジンで書いていたものをまとめたもの。気軽に読める。エッセイの前半は、クオリアを軸に「食」を解説仕様としている。エッセイなのに解説を試みているので、ちょっとつまらない。一方、後半は思い出と食の自然な繋がりを書いているので、面白い。結局、エッセイもある種のクオリアを求めているようである。少なくとも私は。

 この本を読んで、お酒を覚えたくなった。「ただ好き」というだけという人がたくさん存在するのだから、実は良いものなのだろう。お酒に触れる機会があまりない自分の生活に、少し楽しみを増やそうと思う。食べるものがなくてもいいから、お酒を飲みたい。アル中までは困るが、生きている楽しみの一つを知らずして死んだらもったいないから。

2006年7月21日

旅の極意、人生の極意

大前研一
講談社 1600円
お勧め指数 □□□□■ (4)

 よく出かける人は、良いところを知っている。世界的企業をまたにかけて半端ではない数の海外渡航経験をもち、かつ、現地で一流の人と交渉を行ってきた人ならではの「海外旅行お薦めスポット」の紹介となれば、ちょっと興味を持ってしまう。おいしい店、知られざる場所など、期待してしまう。ただし、きっと「超高級」と名がつくようなレストランばかりだったらがっかりなのだが。

 紹介されているところは、確かに高級なところが多い。ベネチアの「ダニエリ」なんて、そりゃ泊まりたいけど「分不相応」という気がする。実際問題普通の人がいけるかどうかは不明なのだが、紹介されている内容に「嫌み」がないのがよい。芸能人などがこういうものを紹介すると大抵腹が立つのだが、そこは大前研一さんだけあって、「普通の人が読んで、へぇ」と思えるように仕立ててある。OLグループならば「じゃ、行ってみようか」といいそうな感じの本である。

 でも、この本の価値としては、大前さんが学生のときに「通訳バイトを通じて身に付けたことが、私の人生の基本になった」という、有名な話を実感させる文章であり、証言である。これらがコラムになっている。学生時代って、偶然の出会いでもあるよなぁ。

 この本は写真も多いし、文章も易しいので気軽に読めます。リラックしたいときにお勧めかな。ちなみの、私は「ベネチア」に行って見たくなりました。来年、移行かな。

2006年7月16日

神々の世界(上・下)

グラハム・ハンコック
小学館 各1900円
お勧め指数 □□□□■ (4)

 読んでいて、久々に興奮する本でした。「シューメールと日本には繋がりがあった」というような、くそトンデモ本とは違い、ちゃんとしか考察と引用文献、それと識者との議論がかかれいて、十分知的な本です。ハンコックを悪く言う人は多いようですが、ある程度自分でものを考えた経験のある人ならば、彼の本は「読む価値がある」と思えるはずです。

 思いつきはとんでもないけど、その後仮説を明文化し、それを証明するための証拠や過去の研究を探すところは在野の作家にはない態度です。とくに、過去の文献、論文を調べて、その文献のキーマンとなる人とあって話を聞く、自分の意見を聞いてもらう、話が平行線になってもその状態を認めるという態度は学生さんに見習って欲しいところです。ハンコックの切で弱いと思う態度は、自分に不利な証拠がでてきたら、それを「全部」明示するというところでしょう。この本では、それが完全にはなされていないようですが、学術レベルに高めるときにそれがネックになるでしょう。ただし、いかなる研究であっても、そもそもは「思いつき」が動機であるし、それがこれまでの常識を覆すものであれば素晴らしい研究のテーマになるものであって、素晴らしい研究者であるにはそのようなテーマを見つける能力にあるわけですから、ハンコックの発想は十分評価させるべきです。私は研究者として、そう思います。

 さて、内容ですが、結構衝撃的です。1万年くらい昔に海に沈んだ場所に、人口の巨石文明の跡がある。それも、多くのところで見つかっている。さらに、その場所を記した古い地図には、その場所の氷河期の終わりのころの地形が示されているというものです。この場所を著者が赴き、調査し、研究者と仮説をぶつけ合う。つまんないミステリーよりもはるかに面白いです。

2006年7月15日

松下で呆れアップルで仰天したこと

竹内一正
日本実業社 1400円
お勧め指数 □□□■■ (3)

 自伝風のエッセイ。新卒で松下に入社し、帝国陸軍みたいな”サラリーマン”社会を身をみって14年体験し、その後アップルに勤めた人の体験談であり、両極端の世界を見た人が残した貴重な資料として読める。松下にいるときは、軍隊よろしく朝からマラソンだの、接待の席次だのにこだわった。そのリーマンの世界をダイジェストで紹介する。「世の中に、こんな会社があるのだなぁ」とちょっと驚いた。私がこれまでソニー本ばかり読んできたこともあるが、よくこんな環境で製品がつくれるものだと思う。人間、自分がいる場所しか知らないのならば、その場所でなんとかするのだなぁと思った。一方、アップのいい加減というか、独自というか、「組織戦」という人間の妄想とは全く縁がない世界での「俺が一番」という世界も驚く。あなたが出した結果にお金を払うのであって、人間としての社会生活の支払いはいっさいしないという態度もすごい。手当てがいっさいないのはまぁそうだろうと思うが、一方で年俸+交通費という費目はさっぱりしていてよい。福祉といえば、社内にある自動販売機がただということらしいが、それも、ある意味すごい。

 この本を読んでみて、自分のだらしない生き方を反省する。もう、遅いかもしれないけど、まだファイティングポーズはとれる。とりあえず、留学生に英語の個人レッスンでもつけてもらおうかと思う。決心などどうでもよく、大切なのは自分の時間の使い方の変更であるということだから、まずは、そこから始めよう。

入門Debianパッケージ

やまだあきら
技術評論社 2880円
お勧め指数 □□□■■ (3)

 Debian/GNU Linuxを使い始めた。いい加減な知識でセットアップすることでやり過ごしてきたが、ライブラリなど細かい設定が必要になり、数日はまったことを反省して、せめてapt-getだけでもちゃんと学ぼうとこの本を買ってみた。表紙がさっぱりしたデザインで、持っていてもいいかな、と思わせる本なのでかなり高かったが購入した。

 APTツール郡について概要はわかった。dpkgについてはとりあえずペンディングでよいやと思った。これを読むと、これまで結構危ない使い方をしていたのだなということがよくわかる。昔はソースからコンパイルするのが当たり前だったのだが、ライブラリ依存関係が面倒になったあたりにはすでにUNIXは使っていなかった。だから、バイナリでパッケージをインストールするという方式にどうもなじめないでいたのだが、この本をざっと読んでみて、概要がわかったのでありがたい。WWWページを彷徨う時間を金でかったと思えば、まぁ、気にならないかな。ほんの装幀がきれいだと高い本でも許せる。

入門csh and tcsh

Paul Dubois
オライリージャパン 2900円
お勧め指数 □□□■■ (3)

 最近になって、なんの因果か再びtcshを頻繁に使うようになった。初めて使った頃からもう、10年以上たっている。知識はここ7年はアップデートしていない。覚えているわずかなコマンドでやり過ごしていたが、知識が歯抜けになっているのが自分でも歯がゆいので、オライリーの本でいったんreloadする。まぁ、WWWを探すとたくさんんリファレンスとなるページは存在するのだろうけど、紙のページに線を引きながら読まないとダメなんです。古い人間なんですね。

 とりあえず、ざっと読んでみて、いくつかこれぼれていた知識を復旧し、新しいことも知った。総数にして10個くらいかもしれないけど、この本を読まなかったら永遠に身に付くことがなかったものなのだから、十分ペイしたと言えるだろう。知識のかけれが、あるとき絶対的に強さを発揮することがあることを私は知っているので、損をしたとは思っていない。思っていないのだが、高いよなぁ。古本であっても、高い。

2006年7月 8日

涼宮ハルヒの憂鬱

谷川流
角川スニーカー文庫 514円
お勧め指数 □□□□■ (4)

 いわゆる「ライトノベル」というカテゴリーの小説らしいのだが、結構面白かった。バカにしたもんではないです。確かに、読んだからといって「何かを考えるきっかけになった」という要素はないです。元気な高校生の女の子に萌えっ、とした感情が沸いてくるからこの本は面白いと感じのでしょう。だから、この本が歴史に残るのかと問われれば、ちょっと心もとない。

 ストーリーの背景としては、ナウシカのような面倒くさいところがない、子供のころの妄想と不安が種のストーリーです。それは、心理学の世界にはよく知られていることで、幼少のときに感じると言われています。「実は、世界には自分しか感情をもっていないのではないか、自分以外は実は人間ではないのではないか。」 それを膨らませたもの。

 続きが読みたいかといえば、読みたいかな。流れるような文章だから、読んでいることが楽しい。谷川さんの力量はたいしたものです。ただし、挿し絵とカバーのイラストは勘弁して欲しい。電車のなかでは、人目が気になります。

2006年7月 7日

女には向かない職業2

いしいひさいち
東京創元社 600円
お勧め指数 □□□■■ (3)

 女性ミステリー作家の日常を漫画にしたものです。小学校の先生をやめて作家になったという設定。1巻が面白かったので、2巻も読んでみました。高村薫さんのような人がでてきて、「作家ってのは、えらく不健康な商売だなぁ」と思ってしまいます。自堕落な生活。ちょっとオーバーなのでしょうけど、当たらずとも遠からずのようなところがあるのだと思います。

 しかし、苦しんで(というか、疲弊して)小説を書いていて、楽しいのでしょうか? 会社員とは違うのだから、自分のなかから発生する動機が強い人がなる職業の人は、みんな人生をエンジョイしていると想像するのは錯覚なのでしょうか。こういうイメージを作家にもってしまうと、ミステリーって読みたくなくなるんですよね。まぁ、どうでもいいことですけど。

2006年7月 6日

君子の交わり、小人の交わり

養老孟司, 王敏
中公新書ラクレ 700円
お勧め指数 □□□□■ (4)

 養老孟司さんの対談集。今度は中国について。中国出身の日本文学研究者である王さんと現代の中国について話しあうというものです。中国の政治を議論してもしょうがないのですが、そこは養老先生のことです、政治議論にはなりません。中国語には「冠詞」がないことから、抽象と具象の違いをどう表現するのか? その違いがないから、「日本人が悪い」などという抽象と具象との違いをかんがみない行動になってしまうのではないか? というような話が展開されます。

 興味を持ったのは日本文学についての話。本の内容とは直接関係ないのだけど、村上春樹への言及が面白かった。曰く、あの人の作品には「日本の土俗性が全く感じられない」というもの。だからこそ、世界で受け入れられるのだと。なるほど。そうかもしれない。王さんが日本文学の研究者だからでしょうけど、中国の人と日本の人の「考えの背景」にあるものの違いを知ることで、それぞれの文学の違いについて知ることができました。

2006年7月 5日

村上春樹、河合隼雄に会いにいく

村上春樹、河合隼雄
新潮文庫 438円
お勧め指数 □□□■■ (3)

 ブックオフで100円だったので買ってみました。内容は水のようななものです。栄養にはならないけど、なんとなくさっぱりするような。対談としてしんだというよりも、単純に「話してみたいな」という思いが、なんとなく実現した。それがたまたま本になった。そういう本です。河合さんがカウンセラーだからでしょうか、結局村上さんが自伝的なことを語っている。自然な流れでこうなるのでしょうか。村上フリークでもない私は、村上さんのスタンスを知ることができて、ちょっとよかった。

 初期のころの村上さんは「デタッチメント」に気を使っていたそうです。なるほど、あの寂寥感は著者が意図したところなのですね。養老さんの本で読んだのですが、「村上春樹さんの作品には、日本の土俗的なものがない」ということです。それが、世界で売れる理由とつながっているのだと思っていましたが、デタッチメントを意図していたという話で、その謎が解けました。村上さんの作品には「世間」のしがらみが出てこないのですね。日本の土俗的なもの=世間ですから、そう考えると、日本の若者に指示され、世界の若者からも指示される理由がわかったような気がします。

2006年7月 4日

誰のためのデザイン?

D・A・ノーマン
新曜社 3300円
お勧め指数 □□□□□ (5)

 インダストリアルデザインに興味がある人ならば書名くらいは知っているだろう有名な本である。要するに、良いデザインには、使いやすさと美しさとがうまく混ざり合っているものである、という主張が書かれている。使いやすさとは、便利な機能ではなく、アフォーダンスを自然にとりこんだ「無意識に使える」デザイン、そして、美しさとは「視覚的印象」のコントロール。

 工学系の人間は、必要以上に機能を詰め込み、論理的に構成すればそれが「つかいやすい」だろうと想像している。ところが人間は、からずしも論理的に行動するわけではない。それに、使う前に決めた機能が実用場面で無駄なく機能するかといえば、そんなことはめったにない。この2点の事実を謙虚に受け止めることがでるかどうかが、工学側の学ぶべきことである。
 一方、意匠の人間は、視覚的な印象をコントロールすることが優先される。美しいといっても、装飾的なものもあるし、ミニマリズムのようなものもある。たとえ物がそれらをまとったとしても、そのせいで運用に支障がでたらもともこうもない。道具ならば、使ってこそである。美術館に飾ることが目的ではないのだ。ならば、物が使われるときに美しさを発揮するようなデザインを目指す。これが意匠側の学ぶべきことである。

 インダストリアルデザインに興味を持つ人ならば、あるいは、人にとって使いやすさとはなにか、を真剣に考えるときには是非ともこの本を読んでもらいたい。話はそれからだ。

2006年7月 3日

第二阿房列車

内田百けん
新潮文庫 400円
お勧め指数 □□■■■ (2)

 「鉄」のエッセイである。第一阿房列車が良かったので、続編として読んでみた。実に不思議なエッセイである。内容があるわけはない。人の機微を知ることもない。鉄のおっさんと、その鞄持ちの車中記でしかない。内容は「鉄道」そのもの記述は少ないのがおかしい。結局、登場人物のキャラクターやそれに見合った行動を面白く書いているだけである。

 文士という言葉が幅を利かせていた時代である。その時代でも、読んでいるときに楽しめる「音楽」のような読み物があったのだなぁ、と感心する。文章そのものは、さすがに悪くない。漱石の弟子ですから。

2006年7月 2日

神仏のすみか

梅原猛, 中沢新一, 松井孝典, 日高敏隆
角川出版 1800円
お勧め指数 □□□■■ (3)

 梅原猛さんの対談集。テーマは、まぁ、人間や宗教。それ以外のものを選べってのは無理な話かもしれない。哲学者として、科学者として、対談相手の人との共通な関心を語り合うという対談集的な対談集。意外性はないようです。

 梅原猛先生はもう80歳だというのに、まだ多くの本を書きたいようで、ずいぶんとエネルギッシュな方です。私のような門外漢の人間が読んでも、なるほどなぁ、という発言をされているので、私は学ぶことが多いので対談集もなるべく読むようにしている。この本は、対談相手の人それぞれに興味をもっているので読んでみた。

 アイヌ文化は縄文文化を残している。言葉も含めて。だから、日本語の起源について調べるとき、アイヌ語は重要になる。そういう意味の主張を梅原先生はしている。なるほどなぁと思う。
 松井先生、日高先生との対談は、正直かみ合っていないような気がする。どちらかがしゃべりすぎるか、説明しすぎるかで、展開がない。なので、全体を通しては、いまいちな感がある本である。

企画書は1行

野地秩嘉
光文社新書 700円
お勧め指数 □□■■■ (2)

 企画書のコアは1行のフレーズである。そこにイメージを広げられるものが含まれているのならば、読んでもらえるだろう。そういう趣旨のことを書こうと、著名な(勝ち組)の人にインタビューした記事を束ねた新書である。だらだら書かれているものは良くない。大事なことは一言で言えるはずだ。そういう信念にあうものをピックアップしている。

 確かに、インタビューされている人は成功組である。インタビューで答えている内容も立派な発言である。しかし、私は思うのだ。これらの記事はともすると「熱意」とか「勝負」とか、企画書とは関係ないファクターを語っていないか? だらだら説明するのでは聞いてくれない。それは当たり前である。言葉が人を動かすのだが、その言葉の精度、構想の緻密性はかならずしも企画書の凝集とは一致しないだろう。もっといえば、一言でいえることもあるが、一言で言えないこともおおい。その意味で、とりあえず、人に気付いてもらうために「1行にしたら?」。そういう意味の一行運動なのだろか。インタビューは、かならずしも企画書が1行ということと、インタビューを受けた人の成功体験とを結んでいないので、正直この本の全体の信頼性は低いような印象を持った。

 こういうビジネス本がおおいなぁ。すべてが広告業界の成功法則にかかるわけではないのだが。とはいえ、私はこの本をタイトルで選んでしまったのだがら、この本は商業的には成功する要素の一端を語っているのは間違いない。

2006年7月 1日

男女の怪

養老孟司, 阿川佐和子
大和書房 1400円
お勧め指数 □□□□■ (4)

 男女関係を含めた人についての対談。「おとことおんな」を「おすとめす」という見方をすると、なんとも人間関係がよくわかるものだなぁと気付かされる。無理のないように話を自然に引き出す阿川さんはうまいものである。人間というのは「ふかいもの」というような解釈を文学や哲学ではしたがるようにみえるけど、養老さんにかかれば「必要以上に複雑なこと」のような気になるのが不思議である。生きているとは?と死ぬほど考えるよりも、自分を生物としてばっさり考えてしまうほうがわかりやすい。