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2006年10月29日

イケズの構造

入江敦彦
新潮社 1100円
お勧め指数 □□□□■ (4)

 京都人の特性である「イケズ」についての解説書である。ぶぶづけ食べていきますか?と言われて、はい、といったら「とんでもない失礼にあたる」。そんな具合に「イケズ」的な特徴は一般的に誤って認識されている。そこで、京都における重要な身のこなし方であるイケズについて、その心理的な側面や人間が普遍的にもつ傾向をもとに説明してくれている。しゃらくせぇ、こちとら江戸っ子でぇ、とすぐに口走りそうになる深川在住のわたしもでもイケズを理解することができた。じゃぁ、京都が好きになりますかといえば、まぁ、それは「無理」。イラクやイラン、レバノンなどイスラム圏の国を旅行したいと思うけれど、だからといってその国の習慣が好きにはなれないだろう。それと同じ意味で、面倒なイケズにつきあってられねぇ、ですな。

 この本を読んで理解したイケズの機能は「+」と「−」があり、一つは皮肉に代表される「人をあしらう」もの、もう一つは「より深い関係になりたい、じゃれたい」というもの。京都の人は、他人に恥をかかせんように「やんわり拒否する、教えてあげる」方法としてイケズを使う。それは普通の人が理解しているイケズ。明らかに「ー」の意図がある。だれも、楽しい気分にはらないですし。しかし一方で、よりこの人と関係したい、じゃれたいときにもイケズなことを言う場合があるようです。これは「+」の意図。言葉だけ聞いていると、すごい皮肉合戦で嫌な気分になったります。しかし、当の本人たちは「ー」の感情はない。そもそも、嫌いな人は「無視」だそうです。日本のいじめの一つである「シカト」ですね。結局、根のところは陰湿なんですが。

2006年10月28日

座る技術

万大
かんき出版 800円
お勧め指数 □□□■■ (3)

 どうすれば通勤電車で座ることができるのだろうか? このテーマでのメルマガを再編集して解説イラストを付けた本である。半分冗談か、あるいは、著者固有の環境にしか役に立たない記事かと思いきや、電車に乗る人ならば無意識に実施しているような小技が解説されていて、誰にも役に立つ良い本だと思う。いかなることでも前向きにユーモアを交えて考察すれば、よい作品が生まれる可能性があるという教訓になりそうな本である。

 解説されている方法では、始発にのるとかそういうくだらないものはなく、どの列に並ぶとどうなるのか、どの車両の出口に並べば良いのか、どういう人の前に立てば良いのかまで考察されている。たとえば、本のしおりに手をかけている人、身だしなみを整えている人、アナウンスの直後に目をごしごししている人などは、おりるサインであるとかそういう内容である。たしかに、そのような傾向はある。自分がそのサインを発していることもある。

 日常のなかにも、考察対象はあふれているのだあと関心しました。

暴かれた9.11疑惑の真相

ベンジャミン・フルフォード
扶桑社 1600円
お勧め指数 □□□□■ (4)

 徳間では「トンデモ系」が払拭できなかったのか、それとも売れるから引っ張られたのか扶桑社での発刊である。内容は徳間とほぼ同じ。状況証拠の解説と証拠写真という構成になっている。おまけにDVDもついている。こちらの方が、911だけに焦点が絞られている感じがする。こんだけ有名になると、つけ狙われたり消されたりしないのかなこの著者は、と心配になってしまう。日本の記者は、こういうジャーナリズムには関心がないないようなので、海外から来ている人の記事に頼るしかない。有り難い情報源である。

無意識の構造

河合隼雄
中公新書 697円
お勧め指数 □□■■■ (2)

 ブックオフで100円だから手にした。冒頭の「臨床事例」はひきこまれたのだが、それ以後の一般論は、どちらかというと退屈である。ユングについての簡単な紹介と臨床例として「夢」診断について書かれていた。臨床例も夢診断も無意識にあることが、意識下における行動に影響を与えているという一般的な解説であるのだが、後半は通常の生活では把握しずらい心理学概念の解説に深くはまっていくので、ピンと来ない。読者への配慮が弱いので新書としてはもう一つ。

2006年10月27日

けなす技術

山本一郎
ソフトバンクパブリッシング 1575円
お勧め指数 □□■■■ (2)

 けなす技術といっても、それが主題の本ではない。どちからといえば、山本さんのブログ調の語りを集めた本であって、いや、ブログで書いているブログ論をまとめたようなものになっている。「こうけなすとよい」などという本ではない。私はてっきり後者だとおもったのだが、編集者に乗せられてしまった。

 ブログって、ただ続けるのでも意味がある。いや、他人様にとって意味があるのではなく、作者にとって+の経験になるという意味ではある。この本でも、続けることについてちょっと言及しているのだ。ただし、書くこと以上に(他人様の書いたものを)読むことをすすめている。だから、自分にしか興味がない人へは効果がないかもしれない。残りの内容は、これといって「へぇ」と思ったところは少ない。皮肉交じりの口調での、評論と経験談である。さらにいうと、紙面をうめている感のある箇所もある。全体的には買いとは言えないかな。プログを購読しているのならば、それで十分でしょう。

5000年前の男

コンラート シュピンドラー
文芸春秋 650円
お勧め指数 □□■■■ (2)

 以前から気になっていたので、読んでみた。マンモスほどではないが、氷付けの古代人発見の話。紀元前3000年というのだから、シュメールなどの時代の人と同じ。この人、文字は知らなかったのだろう。しかし、遺品として残っている斧や矢筒などは、本当に良くできた工芸品ですね。ロープやヒモなども。手工芸の世界。極めて当たり前なんですけど。

 この本は、そのミイラの発見とそのミイラについての一般向けの報告資料をまとめたものであって、そんなにワクワクするような記述ではない。おそらく、そういう本を書いたことがない人の本なのだろう。発見にまつわる(人間臭い)エピソードは、まぁ、どうでもいい。しかし、古代の持ち物や衣類の説明など、できればTVで見たかったなぁというのが正直な感想ですね。

 この手の本は、通常の3倍以上のスピードで眺める読み方をしてしまう。知識を得ることが、あるいは、興味を満たすことが目的なので、「文章の善し悪し、表現のうまいへた」などは期待していないからか、通勤電車ではぺらぺらページをめくってしまう。そういう読み方もありかもしれない。この本は、それでも分かるような記述であったともいえる。

オイディプス王

ソポクレス
岩波新書 420円
お勧め指数 □□□□■ (4)

 要するに、短編のミステリーです。良くできた作品。そういっては、あまりにも失礼な感じがしますが、哲学も文学も芸術(演劇)も神聖視していないので、損直な感想を申し上げるとそうなります。昔、「走れメロス」という大宰の短編を読んだことがあると思います。セリヌンティウスが登場する話です。あれ、面白かったですよね。今読んでも面白いです。そして、ちょっとした教訓もある。それと同じような感じを受けました。

 古典はまず脚注でやられてしまいますよね。うざったくて、先に読み進められない。この岩波文庫版は、日本語訳の面からも脚注の面からも、一般の人に親しんでもらおうと配慮されているようです。漢字もフォントの大きさも。これ以上読者に妥協すると、逆効果になっていまうような気がする。そういうギリギリの状態ともいえます。ここまで古典がすり寄ってきているのだから、是非読んでみるといいと思いますよ。

2006年10月22日

ローマは一日にしてならず

樺山紘一
岩波ジュニア新書 600円
お勧め指数 □□■■■ (2)

 ローマ史の話ではありません。世界史のイベントを「有名な言葉」をもとに解説している雑学書です。ジュニア新書ですから、余計なことは言わずに丁寧に記述している。ギリシャからの年代、地域別に言葉を集めています。集めた言葉だけから、何か世界を感じさせるような意図はなく、また、教訓になりそうなことはあえて選ばれていないのです。もし、世界史に興味をもっていない人が見たら、全く意味のない本になります。すくなくとも、解説も面白くない。

 子供相手というのは、分かりやすさが第一なのかもしれません。そう心がけていることはわかるのですが、歴史の重要性など個殿にはわからない。だから、せめてですが、「ふーん」と言わせるような構造を持たせないとだめですよね。卑屈な例として、日々の学校社会で起きやすい事例をにおわせるとか。そういう努力をしないで、歴史への興味を持たせるきっかけをねらうならば、物語をにおわせる工夫がないとだめですね。どっちにしても、面白くない。

 では、私はどう思ったのかといえば、ちょっと不満。格言集ではないからしかたないのだけど、言葉の選択が「なるほど」とおわせるものになっていません。ブックオフで100円でしたが、その程度の価値のような気がします。時間をかけて失敗したというところです。

インディアスの破壊についての簡潔な報告

ラス・カサス
岩波文庫(青427-1)560円
お勧め指数 □□□□■ (4)

 南米アメリカに対するスペイン人が行った虐殺についての客観的な報告書。映画や小説よりも「怖い人」が歴史上たくさんいたし、そして今でもそういう人がたくさんいるのだろうなぁと想像さてくれます。コロンブスが新大陸を発見したあと、当然だが現地を探査し、領土を獲得、資源を搾取、原住民を抹殺あるいは奴隷化するというのは、人類史が記録されるまえからあったのかもしれません。とはいえ、ルネッサンスと呼ばれる時代においても、平気でヨーロッパ人はやっていたんですねぇ。キリスト教徒でなければ人殺しをしても平気だったはずのキリスト教司教バルトロメー・ラス・カサスという人が、スペイン人が行う虐殺行為があまりにもひどいので、スペイン王になんとか止めてもらいたいという動機でつづった報告書がこの本です。

 それにしても、高度な文明があったインカ、アステカは数少ないスペイン人に言いように殺戮されちゃいました。現地の人はスペイン人に食料供給などもてなしをしたうえでの殺戮ですから、まぁ、スペイン人が言い悪いというより、そういう考え方をもった人類なんでしょうね。同じようなことは、北米大陸においてのインディオについてもアングロ族、サクソン族が行っていますから、まぁ、ゲルマン族、ゴート族など「蛮族」とくくられる人は、現在でも洋服を脱げば何も変わっていないのでしょうね。おおこわ。

 ただし、結局のところ、武器がないから言いように滅ぼされたインカ・アステカから何を学べばいいのでしょうか、私たちは。マキャベッリの言う通りなのかなぁ。歴史において殺戮の実積がある人たちと付き合うときには、「ハードウエアの人間としては2万年変化していない。おそらく、同じ状態になれば、同じ行動をとる」ということを忘れないようにしておいたほうがいいですね。

聖書の生いたち

F・ケニヨン(山本七平訳)
山本書店 1600円
お勧め指数 □□■■■ (2)

 山本書店の本で、山本七平さんの翻訳だから読んでみましたが、ピンときませんでした。秦剛平さんのような迫力がある解説とは違って、視点が一般向けではないからでしょうか。私の興味が聖書の中身にあるのではなく、考古学というか、世界を動かした本の起源というか、どちらかといえば情報の編纂と拡散の事例に興味があるからなのかもしれませんが。

 こういう本は、「原点はどうなっていのか?」ということに動機があって解説されているのだと思います。しかし、原点に近寄れば近寄るほど「多種多様なものが存在していたことがわかる」ということになると、一体どうするつもりなんだろか。多くの自然発生的なものが自然淘汰され編集されて一つの本としてまとまっていたというところが現実だったりすると、原点を探すということは混乱を生んでいくわけで、そのとき研究者はどういう態度をとるのか。そんなことを知りたかったのですが、この本はその期待には応えてはくれませんでしたね。秦剛平の著書の方がよいと思います。

2006年10月21日

英語の感覚・日本語の感覚

池上嘉彦
NHKブックス 970円
お勧め指数 □□■■■ (2)

 放送大学の教材を一般書に編纂し直したものということで、内容は気軽に読むにはちょっと高度なものにまで達している。といっても、専門書に近いという意味ではなく、電車で気軽に読むには読者に要求される英語のレベルと文学的指向のレベルについてである。文学を学ぼうという姿勢の人には、気軽に読めるような内容なのかもしれない。

 私が興味を持ったのは、the と thatの類似である。the -> 単語、that -> 節という説明は、分かりやすかった。なるほど。でも、知ったところでどうかなぁとう話ではあるが。こういう機械的な内容ばかりでなく、I belive John honestと I belive that John is honestのニュアンスの違いのような説明も結構あった。表現の話ですね。

 ただし、全体的に言えば、全体として「テーマが散乱」していて、読者層も絞れていないような、中途半端な印象を持ってしまった。新書としては×ですね。

ギリシア人ローマ人のことば

大西英文・中務哲郎
岩波ジュニア新書 780円
お勧め指数 □■■■■ (1)

 いわゆる格言集かと思って購入するとがっかりする。ジュニアだから説教臭いことを意図的になくしたのかもしれないし、人生について考えさせるような言葉をあえて抜いてあるのかもしれない。そうでも考えないと、この言葉の選定は「なんで、こんなものをつくったのだろうか?」と首を傾げてしまう。この手の格言集は山ほど出版されているだろうと思うのだが、新書サイズの手軽なものはあまりない。誰もが納得する内容に限定されているだろうから「ジュニア新書」を購入したのだが、くっだらない、という意味でのジュニア新書なのかもしれない。

 格言があり、その出所と簡単なエピソードがあり、現在社会にもその格言が遜色なく機能することを示す。知恵を集めたものであり、読んで笑ったり、関心したりしながら「人間とは変わらないものだな」と思うための本のはずであろうが、そういう意図が全くない。おそらく、この著者が自分の知っているエピソードから逆に言葉を選んだのだろうか。そもそも、格言がテーマになっているのが半分くらいではないか。あとは、不十分な古典の紹介。損した、という気分を十分に味わえる。

使える読書

齋藤孝
朝日新書 720円
お勧め指数 □■■■■ (1)

 どうしたんでしょうねぇ、齋藤孝さん。全くダメですよ、この本。この本の言いたいことである、「面白かった、つまらなかっただのの読書感想文はやめて、その本の要約となる作者の言いたい部分を探し出し、それを何かの機会に引用できるようにせよ」には十分頷けるのだが、それは3色ボールペン以来の主張だから得に新しいことはないし、もう何冊も本を出している。この本は、その実戦例なのかもしれないけど、内容がいかにも薄い。週刊誌の連載記事だからで済ませることも可能かもしれないけど、齋藤さんの本に対する姿勢はずいぶんと落ちたんだなぁと関心するほどである。

 この本の感想を言えといわれれば、いやぁ、TVにたくさん出演するということは怖いことですね、ということか。

9・11テロ捏造―日本と世界を騙し続ける独裁国家アメリカ

ベンジャミン・フルフォード
徳間書店 1680円
お勧め指数 □□□□□ (5)

 先日、中国経済の実体についての本を読んで、なーんだ結構いい加減だなぁ、と気分が軽くなる気がしたのだが、一方アメリカの方を読むと気分が暗ーくなる。日本の隣人も参ったものだが、日本がすり寄っている国も参ったものなんだなぁ。”とかくこの世は生きにくい”ということなのだろう。

 ベンジャミン フルフォードさんは、官僚の実体についてずいぶんとちゃんとした本を書いている。日本人が書いたら消されちゃうような内容だけど、カナダ人が書いているから嫌がらせぐらいで済んでいるのだろう。だから、何冊か読んで「実体的には良くかけてるの」と思ったのだ。今度はアメリカについての本。あぁ、気付かなかったなぁ。マイケル・ムーアの方は「困った人がアメリカを混乱させている」という、どちらかといえばコメディーを感じたのだが、フルフォードは、「やり場のない絶望感」を感じ、ため息がでてしまう。

 あらゆることで言えることだが、国の性格とそれを個性する個人の性格とは大分違ったものになる。国の性格というのは、とくに意識的な性格というのは、代表者のキャラクターに過ぎない。何億もの人口がいたら、もっとばらばらなもので、いい人もいっぱいいるし、嫌な人もいっぱいるのだ。単に、たまたま見えている人々の性格が、国の性格になる。アメリカでも、中国でも、官僚でも全部同じである。だから、「国を嫌う」という発想はばかげている。

 陰謀説って、世の中には流布しやすいけど、少し時間がたてば「ばれる」もの。この本の内容は、時間がたったあとに浮かび上がってきたもの。私思うのだけど、人類のシンポを一番左右するのは「報道」なんだろうなぁ。政治力が働かない、たんたんとした報道を整理することができればいい。google newsのようなものを駆使し、小さいけど、大手新聞の発表と矛盾するものを準備できれば、せっかくの人生つまんないことにふりまわされないようになるのだろう。

2006年10月16日

井沢式「日本史入門」講座

井沢元彦
徳間書店 1500円
お勧め指数 □□□□□□ (5)

 自分のことを知る。まず、何より大切なことであろうと思うのだが、自己を客観視するのほど難しいことはない。「普通、そう思うだろう」ことを、「それは普通でもなんでもないのだ」と冷静にとらえられる人がどれだけいるのだろうか。論理以前の感情の発生元をとらえるためには、そもそもなぜそれを「普通だろう、だれでもそう思うだろう」と思うようになったのかを知ることになる。感情の発生元は、じつは文化の根幹にある「宗教」であって、それを使えることができればしめたものである。

 日本史を知るためには、日本の宗教を知る必要がある。それは、仏教でも神道でもない。もっと、もっと、昔から日本人に「普遍的」に存在するものである。それが、「和」であり「ケガレ」であり「言霊」なのだ。井沢さんの「逆説の日本史」でひざを打ったこととあがるが、今、さらに親しみやすい形式で新しい本がでた。それが、この本である。

 聖徳太子の憲法十七条で一番大切なのは「和を以て貴しとなし、忤こと無きをを宗とせよ」である。五箇条の御誓文には「広ク会議ヲ興シ万機公論ニ決スベシ」とある。そして、学校の通信簿での評価は「協調性があるかどうか」が人格評価の基準になっている。結局、1500年以上確固たる宗教が存在しているのだ、日本には。「和」であり「話し合い絶対教」である。談合や稟議は、要するに宗教問題なのである。

 ざっとこういう話を分かりやすい言葉で教えてくれる。この本も、買いですね。

2006年10月15日

「俺様国家」中国の大経済

山本一郎
文春新書 790円
お勧め指数 □□□□□ (5)

 なんだ、中国の実体って、そんなものだったのか! 大前研一さんの本ばかり読んでいたので、もっと驚異的なものだと思っていたが、あの経済成長率の数値さえ「テキトー」という状態だったのか。いろいろな面からみて中国の経済ポテンシャルは高いのだろうけど、それも「絶対」というレベルではなく、いろんな要素をかんがみないと単純な「経済大発展」という現象が継続することにはならないのか。もちろん、希望的観測からいうのではなく、「大発展しても、大失敗しても、日本はそのときのために備えて手を打っていかないと、えらい巻き添えを食う」ということで、楽観視するような本ではないです。読んで安心した、というよりも、読んでなお一層中国については考慮しておく必要があるなぁと思わせてくれます。

 この本、よくも悪くも「切り込み隊長」です。そこが好きだから買ったのだけど、さすがに内容もちゃんとしていて、ますます山本さんに興味を持ちました。もうちょっと別の本、ブログを除いてみようと思います。

2006年10月11日

ラテン語とギリシャ語

風間喜代三
三省堂 2400円
お勧め指数 □□■■■ (2)

 悪い本じゃないと思うけど、よくわからないところが多いので困り者でした。いや、私が悪いだけなのだが。前半と後半とあって、前半は新書的に読めるし、エッセイ風でもあるので面白かったのだが、後半はちょっとついていけない。難しいというより、要するにラテン語を学んでいないし、文法も活用も覚えているわけないので、置いていかれた。通勤電車ではつらいです。ただし、ラテン語って、興味アリという動機付けにはなるので、トータルで考えれば読んで良かったと思います。

2006年10月 9日

チョコレート・コスモス

恩田陸
毎日新聞社 1600円
お勧め指数 □□□□□ (5+)

 ここ数年で一番の小説なんじゃないですか。こんなスゴイ小説をかける人が、現代日本にいたんですねぇ。はじめてですよ。読み終わった直後に「さて、最初から読むか」と思ったのは。映画だと2回連続で見るという話は珍しくないですが、小説では初めての経験でした。

 内容は、要するに演劇。そもそも大学時代つきあいで見た程度しかないので、その世界についてはさっぱり知りません。TVや映画と舞台は違うだろうから、普段見ているとも言い難いし。それでも、魅了されました。主人公が女性たちで、私が男性だから魅了された、というのとはちょっと違うと思います。当然内容については書きようがないので、これ以上は説明できないです。

 恩田陸という小説家。これまで学園ものがメインだと思っていたので、ちょっとショックを受けました。もう、学園モノかかんでいいですよ。それより、このチョコレート・コスモスのようなものを書いて欲しい。恩田さんは演劇好きだろうから、ここまで書けたのかもしれない。となると、他のジャンルでは無理なのかな。

 とにかく、読んで損はない。今年はこれが読めただけでも、収穫があったと思います。

2006年10月 8日

驕れる白人と闘うための日本近代史

松原久子
文芸春秋 1600円
お勧め指数 □□□□■ (4)

 かなり珍しい本である。率直に言えば、近代の西洋社会がやってきたことなど「とんでもない悪どいことなのだ」ということを教えてくれる。そして、江戸期の日本社会は、動じたいの世界と比較して、決して「おかしな、未開の」生き方をしていたのではなく、むしろ、高度なそして平和な社会を築いていたのだということを教えてくれる。そして、この本の作者は、ずっとドイツ、ひいてはヨーロッパ社会の論壇で日本を語ってきた人で、その思考の論理性から尊敬を受けているのである。

 近代史は、学校の歴史教育のなかではほとんど扱われない。古代から学習を始めるから、大抵そこまで授業が到達しないで試験期間になったり、戦争責任の問題を「陽」に扱うことを入試も教師もさけるからでしょう。私も知りません、自分で読んで仕入れた知識以外は。そういう意味で、せめて江戸時代末期のアジアの歴史を知っておくといいですよね。アヘン戦争なんて、だれもが中国に同情するし、現在の中国がなぜ世界に向けてそういう態度をとるのかよく分かりますしね。

 我が身を知る上で、読んでおくと良い本です。司馬遼太郎さんはこの本の視点ではあまり発言をしなかったしね。

2006年10月 5日

サイレント・マイノリティ

塩野七生
新潮文庫 460円
お勧め指数 □□□□■ (4)

 読むのは2回目である。イタリアへ出張した帰りの機内で読んだ。この本を読むのは2回目であろうと思う。少ない理由は、冒頭の数章がイタリアの時事問題に関するエッセイだらであろう。ただし、それ以後はイタリア以外にかかわらず普遍的な内容の話が扱われており、どちらかといえば哲学的な記述が多い。哲学科卒とうことを自信の一つにしているらしい塩野さんのおどけのような書き出しから、一気に考え込ませる内容へと引っ張られていくエッセイは、人生勉強に近い。

 私は多くの人と関係する仕事をしていないためか、古代から現代まで一貫している人間の問題を考えるきっかけはあまりないので、こういう本は大切なのだ。

マキアヴェッリ語録


塩野七生
新潮文庫 420円
お勧め指数 □□□□□ (5)

 もう何回読んだのだろうか。イタリアへ行く機会に恵まれたとき、機内ではかならず塩野七生さんの本を読む。陽気な気分になりたいのならば、ジローラモさんエッセイの方がよいだろう。しかし、どちらかといえば「何かしらを学びたい」という気持ちも、たとえ観光であっても持っている私としては塩野さんの本を読みたいのだ。
 前の席の人が背もたれを深々と倒されたときに感じる不憫さと、外は明るいのに照明を落とさなければならない機内のなかで、エコノミーの苦しさを紛らわすよりもそれと正面切って受け止めならがなにがしかを考えたい。そう、ちょっと変わった?気分からそうなっている。

 決して覚えようとしているわけではないが、歳を取る毎にこの語録が自分の語意に自然と含まれていることに気づく。あ、これ、この本で読んだ言葉だったのか。自然と身に付くのは、それを事実だと体感したからに違いない。のほほんと生きている私だが、それなりに社会の中で生きているようである。