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2006年12月31日

ローマ世界の終焉

塩野七生
新潮社 3000円
お勧め指数 □□□□□ (5)

 古代ローマはどのようにして歴史から消えていったのか。終焉していく様子を扱った最終巻。古代ローマがあっけなく消えてなくなってしまったという記述をするこの巻、それに負けないくらいあっさりしている。ちょっと物足りない。私としては、「古代ローマはなぜ滅んだのか」にたいする一定の見解のようなものが最終章に名残惜しく書かれるのかと期待していましたが、ありませんでした。実にあっさりです。「なぜ滅んだのか」について、「こうこうこうした理由でした」などと書けないから15巻も費やしたのですから、そりゃそうです。無理やり「こういう理由です」と言い切れば、その言葉で表現されえないことがこぼれ落ちてしまい、いや、こぼれなかったことが少なくなってしまう。全部読んで、よく考えればそれなりの答えが頭に浮かぶだろう。そういうことです。私は浮かんでいますが、果たしてそれが妥当なものかどうかはわかりません。残念ながら。

 この物語を通して読んでみると、わたしは9巻10巻のあたりが一番好きです。そして、それは古代ローマ世界を通して考えてもピークの時代ですね。ピークにはすそ野が必要で、来し方と行く末が必要。どこにピークがくるのかは、ケースバイケースなのでしょう。人と同じです。

 今度は文庫本で最初からじっくり読んでみたいと思います。

2006年12月30日

パレオマニア

池澤夏樹
集英社 2500円
お勧め指数 □□□□□ (5)

 大英博物館をめぐると気になる展示品を見つける。そのいくつかを選び、それが発掘・収集された場所へ旅する。展示品となっている物の誕生をめぐる歴史・地域・文化について思索する。不思議なエッセイです。教養の誇示ではない。著者の思いが空まわりすることもない。歴史的文化的な視点で「物」を見つめる方法を著者自ら示してくれている。そんな思索は、大げさな表現かもしれないが、理想的な哲学することに思える。

 45歳くらいまでに、この著者の発見した思索の旅を私も実践してみよう。その頃にはイラクも落ち着いていて欲しい。シュメールの遺跡が見たいから。パキスタンも落ち着いていてほしい。インダスの遺跡が見たいから。ずいぶんと個人的な要望だけど、早いとこ紛争が小康状態になってほしい。そして、紛争が昔話になってほしいですね。切実に思います。

 3ヶ月ほど仕事の都合でロンドン近郊に滞在する幸運を得た。週末は大英博物館に通うつもり。この本は、その意味でも参考になった。

2006年12月24日

科学とオカルト

池田清彦
PHP新書 657円
お勧め指数 □□□■■ (3)

 オカルトが流行っている。まぁ、何時の時代にもあるのだけれど、現在でもなおオカルトが流行っている。カールセーガンですら、アメリカのオカルトばやりには涙しており、晩年の著作にもそれが見て取れる。日本でも、何食わぬ顔してオカルトが流行っている。

 なぜ、流行るのだろうか? それを扱ったのがこの本である。基本的には「自分について、かけがえのなさを主張したい」人がはまるのである。宇宙人にとらえられた経験談というのも、じつは「自分のすごさ」を主張したいことの遠回しな表現なのである。結局、自分を表現する機会に恵まれない、あるいは、自分は損だと感じている人がいる限り、なんらかのオカルトは残らざるを得ないであろう。ある意味、見もフタもない主張。

2006年12月22日

科学は錯覚である

池田清彦
宝島社 1850円
お勧め指数 □□□■■ (3)

 池田さんの主張のエッセンスがつまったエッセイ集。エッセンスではあるが、少し出版時期が古いことと、他の本を読んでいないと意味不明な単語が結構あってわらないということになるかもしれない。いろいろ読んだ後で戻ってくると良いだろう。池田さんの持論は変わっていくのか、とおもう箇所がある。環境についての意見などはとくにそうだ。温室効果の問題について、現在とは違って普通の人と同じような意見であるのが面白い。勉強して、変えていっているんだ。


2006年12月20日

生命という物語

池田清彦
洋泉社 1000円
お勧め指数 □□□■■ (3)

 哲学者との対談はつかみ難い言葉が踊るのでつまらない。話している本人は楽しいのだろうけど、一般向けの対談としては分かりにくいものだろう。もっとも、掲載雑誌は哲学系のものなので、それに見合った対談になっているのだろうけど。

虫の目で人の世を見る

池田清彦
平凡社新書 756円
お勧め指数 □□■■■ (2)

 昆虫のエッセイや思い出すことなどのエッセイ。これまでのような「世の中に向かってホントのを事をいってしまった」という感じの本から外れていた作品を集めた感じがあります。結構な昆虫マニアでないと面白くない感じがします。というか、私はいまいちだった。

 逆の見方もできます。反面教師としてこの本を見ると、どういう文章をかくと読まれないのかがわかります。冒頭から自分の興味のある内容をずらずら書く、有名でない固有名詞や日付がずらずらつづくとか。文章って、書き出しが大切ですね。想定する読者が知らないであろう事や自分の好悪の対象から書き始められたものは「絶壁」みたいな気分がして、好きな作家の文章でもとても読む気にならん。勉強になりました。

科学の剣 哲学の魔法

池田 清彦 西條 剛央
北大路書房 1680円
お勧め指数 □□□■■ (3)

 池田さんの後継者のような演出がされている「西条さん」という心理学者との対談です。西条さんは池田さんフリークのようです。ただし、若手研究者としても有望な人のようですね。

 とはいえ、対談が面白いかといわれると、いまいちでした。すみません。構造主義の話で盛り上がるのはいいのですが、池田さんの本を読む以上の情報は入手できなかった。別の角度からの情報が入るかといえば、そんなことはない。お二人は楽しいのだろうけど、部外者はピンと来ない。よいしょしているわけではないのだろうけど、読者は引く。そもそも西条さんの新刊の宣伝じゃねぇか、と思うような箇所も多々ありましたし。

 もう、池田さん関係の本、面白いものは残っていないのかなぁという予感がしてきました。


ウェブ人間論

梅田 望夫
新潮新書 714円
お勧め指数 □□□□■ (4)

 平野啓一郎さんとの対談。「ウェブ進化論」を読んだとき何かしなきゃと焦ったのだが、この対談でもブログ更新しようと思った。このような識者が二人して10時間以上も話しあうくらいのインターネットだから、インターネットはすごいのだろう。そうであることに反論するつもりはないが、実はピンと来てない自分が恥ずかしい。

 「質」をうんぬんするほどの情報を普通の人が発信できるとはあまり信じられない。だって、作文だってろくに書く機会がなかったはずななのに。何もないよりもいいだろう、という程度のブログならば私でも更新できる。その程度だ。この二人が語っているウェッブの情報って、結局普通の人が作っているブログとは違うものをさしているのだろう。だとすれば、実際問題、彼らの発言はウェッブの本の一握りをさしているだけ。googleの検索結果の100番以降の結果のようなページは誰も見ないと梅田さんは言し、確かにそうなんだけど、でも、100番までに入るページってウェッブを代表しているページじゃないよな。

 まぁ、識者と思われる方がどうネットをみているのかが分かる一冊でした。ちゃんとした書評ならば、このページなんかいいのでは?
極東ブログ


2006年12月11日

すべては脳からはじまる

茂木健一郎
中公新書クラレ 700円
お勧め指数 □□■■■ (2)

 茂木さんの本を懲りずに読んでみた。最近、マスコミで良く見かけるので、当然忙しく、必然的に書くものがつまらないものになっている。忙しいことの代償とはいえ、読者としては寂しい限りである。この本も雑誌に連載されていたエッセイを束ねたものであるため、さほどの期待はしていなかった。

 さすがに、一つ前に読んだブログよりもきちんとした書きかたであった。プロといえでも、ブログの文章って読むに絶えないものなのだ。雑誌とはいえ、同じようなテーマを扱っていながら文書の仕上がりには違っている。ところが、このエッセイも「いまいち」感はぬぐえない。一言で言えば、エッセイを書くための「コスト」がかかっていないのだ。エッセイのきっかけは自分の体験であったとしても、そこから生まれるものには「考える」「思い出す」「調べる」「工夫する」など、コストがかかるはずなのだが、この本を含めて、対してコストがかかっているようには思えない。思ったことを書いているだけだから。

 感動したという事実を書くこととしてもだ、「その感動を伝えよう」という工夫がまったくない。何時から茂木さんこんな下手くそになったのだろうか。年齢を重ねたせいか、「道徳」や「説教」といった世間に対する愚痴も多い。何もおカネをはらって読みたかないよ。

 小説を書いても、考察を書いてもちゃんと時間をかけているであろう文章は面白いのだから、忙しいのだろうけど、もうちょっと時間をかけた作品を書いて欲しい。このままだと齋藤さんのような感じになってしまうようで、心配してしまう。


2006年12月 9日

構造主義科学論の冒険

池田清彦
毎日新聞社 1300円
お勧め指数 □□□□□ (5)

 科学とは、変なるものを不変なるものと同じだと言い当てる行為なのだ。そして、現実に存在することはすべて「変なる」ものであり、不変なるものは言葉がさす内容でしかない。言葉の指し示す内容は時間を持っていないのだ。そういう主張の本である。

 科学は真理を追究する。そう思っている人は宗教者である。真理などない、という議論をするのではなく、言葉で表現する科学には、真理を追究する能力などありえず、単に、言葉で表現された目で見ないものと現実が同じであると言いたいだけなのだ。この発想は、ある一定期間以上科学者のやっていることを見ていると分かる。確かにそうだ。そしてそれは、科学に限らないのだと分かる。

 目の前の現象を決して記述することはできない。その発想はびっくりするのだが、ソシュールという人の言語論を聞くにつれ、「そうだ」と分かる。もう、目からうろこである。言葉の指し示す内容(シニフィエという)は、私流に理解するならば「クオリア」の一種であるようだ。もっといえば、「それだ」と指し示しているクオリアなのだろう、と思う。

 構造主義は「知能」を考えるときにも使えるような気がする。知識の表記の問題が、なぜ簡単にできないのだろうか、という問題である。いろいろな発想につながるとても良い本を読んだと思う。

昆虫のパンセ

池田清彦
青土社 1800円
お勧め指数 □□□□■ (4)

 昆虫についてのエッセイ集。エッセイというより、哲学を語っている。知的に熱いなぁ、この人。

 構造主義生物学、構造主義進化論を実際の昆虫をつかって説明している。ただし、生物学という科学の教科書とは全く異なり、哲学的論証を行っている。昆虫と構造主義って、一体なんの関係があるのだろうか、そもそも構造主義って何よ。そういう私もで「あぁ、なるほど。確かにDNAは主役ではないね。」といたく感動した。言葉によって、あるいは、考える対象領域の慣習にそって何かを考えるときにも、大いに参考になる発想を知った。まったく有り難いことである。

 哲学的な思索といっても、自分が集めた虫の話、食べたことにある昆虫の話など、身近なところから話がスタートし、意味不明な「哲学を説明するときによくでてくる意味不明な単語」が使われてない。だからといって、中学生向きだとは思えない。逆に言うと、言葉も話題も身近なものを使っても、「常識」と思っていたような考え方を覆す説明が可能なのだとというよいお手本であろう。

英国式人生のススメ

入江敦彦
洋泉社 700円
お勧め指数 □□□■■ (3)

 「イケズの構造」の著者はイギリスに住んでいるということだったが、その人が書いたエッセイを見つけた。入江さんは頭がよくて、醒めた視点をみっているなので、これまでの「イギリスよいしょ」のエッセイとは違った情報がはいるだろう。そう思ったのだ。

 内容は「イギリスの生活」におけるイギリスの核のようなものを紹介してから、入江さんの興味あることを「細々」と教えてくれている。まぁ、店だの植物園だの映画だの演劇だの、よく研究しているなぁという感想をもつ。私の普段の生活においても、これだけ説明したくなるようなものは持っていないので、「オレの人生って、貧弱なんですかねぇ。結構楽しい毎日だけどな」と思ってしまいます。紹介が細かいし、普通のガイド本の著者さんいよりも審美眼が信頼できるので、この本はイギリスに持っていこうと思いました。

環境問題はウソである

池田清彦
ちくまプリマー新書 760円
お勧め指数 □□□■■ (3)

 地球温暖化やダイオキシンなど、マスコミが騒ぎ政府が対策をうっている社会現象、実は「嘘っぱち」なのである。単に、税金使いたいか、狂信者がマスコミを使って妄言を広めているだけ。そんなものに根拠などないのだ。そういう趣旨の本です。

 今回のネタは地球温暖化をターゲットとしています。データをちゃんと調べると「政府は一体なにを煽っているのか」という疑問が湧いてくる。そういう考察が書かれています。このテーマについては、別にすごいネタ本があるので、池田さんはその本を読んでいたく感動したのでしょう。政府がキャンペーンをはっていることは、大抵何かの出費を正当化したいだけ。それを身も蓋もないよう、やさしい言葉で語られています。中学生だったらわかるでしょう。
 ほんの20年前までは、「氷河期が来る」と世間で騒がれ、今は「温暖化する」と騒いでいる。半年先の長期予報すら満足にあたらない数値計算結果を根拠にして温暖化現象なんて、あてになるかという主張は頷けます。

UMLは手段

荒井玲子
技評SE新書 840円
お勧め指数 □■■■■ (1)

 だめだなぁ、なんでこんな本を買っちゃったのだろうか。漫画世代ターゲットの雑誌記事のようなもので、導入は「ちょっと読んでみようかな」という感じにさせますが、内容は説教(というか優越感提示)と理想論(理想の彼氏論みたな)ものです。だめっすねぇ。

 理由は簡単で、結局精神論なのです、若い人向けのね。ただ、UMLの内容をずばり書くわけにも行かないので、UMLの効用をUMLなしで、しかも対象となるシステムを限定しないで説明するのですから、リーダー論に落ちるしかない。まぁ、もうちょっと立ち読みしてから買えば良かった。そいういう本です。

三人よれば虫の知恵

養老孟司・奥本大三郎・池田清彦
新潮文庫 514円
お勧め指数 □□□■■ (3)

 軽い感じでの鼎談。人の話が面白い条件の一つには、語っている人の好きなことを語っていること、というものがあると思っている。講演会でも授業でもそれは成立する。本でもそうです。学校の授業が面白くない最大の理由は、そもそも先生自身が教えている内容を「面白い」と思っていないからです。まぁ、そういうこと。その点、この本はこの人たちの好きなことしか語っていないので、虫について興味を持っていなくても、興味を持ってしまうくらい面白いです。ためになるというよりも、楽しく時間を過ごすための本です。

2006年12月 2日

イギリス式人生

黒岩徹
岩波新書 630円
お勧め指数 □■■■■ (1)

 イギリス式というが、内容はイギリスの話ではなく、日本の政治家・官僚批判である。自分は安全なところにいて、それで知識人として批判するというタイプの愚痴ばかり。こういう事を言う人って、大抵「新聞記者」なんだけどなぁと思って著者略歴をみたら、新聞社の特派員だった。なーんだ。読まないでよい本である。☆一つなのは、極たまにイギリスの慣習がかいてあったから。

世界の歴史 <7>

J. M. ロバーツ
創元社 2400円
お勧め指数 □□□□□ (5)

 革命の時代。産業革命、フランス革命、名誉革命、7月革命、5月革命、ロシア革命・・・とタイトルだけは知っているのだが、その内容は怪しい。世界史はジェームスなんちゃらとか、どうでもいいやと思っていた高校生だった私は、ナポレオンすら辞書の逸話しかしらない。

 産業革命がなぜイギリスで起き、その後うまくいったのは「それ以前の準備」にあるとうこだ。なぜ、日本で明治維新後の急速な近代化が成功したと同じで、目立つルールを持ち込んだから成功したのではない、ということ同じようである。こういう話を書いてくれるロバーツ先生、司馬遼太郎さんのような「語り部」の要素を持っていますね。

 この巻では、ルネッサンス以後のヨーロッパの国の再編、産業の発達による経済効果の変化、および、アメリカ大陸での動きなどが書かれていて、それが「出来事の記載」ではないので、電車の中でも面白く読める。産業革命期の記述は「わくわく」してしまう。

 中世後、ヨーロッパの農奴たちは悲惨な生活だった。しかし、産業革命が起きても、農奴から開放された人が都市のスラムでの生活を余儀なくされ、これまで悲惨。時代の動きと関係なく、悲惨さ生活をする人はいつまでも悲惨の生活をするようで、なんとかならんものあろうかと偉大な思想家でなくても考えてしまう。