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2007年8月22日

三月は深き紅の淵を

恩田陸
講談社文庫 667円
お勧め指数 □□■■■ (2)

 もうひとつだった。ここのところ好みにマッチする本ばかりがつづいたのでさすがにがっかりした。4つの物語で1冊の本を構成するスタイルについて、著者なりの実験を試みている。第1部、2部は許せる。第3部あたりで怪しくなり、第4部はダメである。面白くないとういより、読み飛ばしてしまうレベル。エッセイと物語とを交互に入れているが、理瀬という女性が主人公の話が全くダメで、完全に読み飛ばした。嫁さんに聞いたところ、恩田陸ファンのなかでも人気が高い「理瀬シリーズ」だそうだ。私からみれば「なんだこれ」というものなのだが、きっと10代の女性に人気があるのだろう。

 そろそろ30代後半の男性でもたのしめる恩田作品は弾切れになったようで、残念な気がする。


2007年8月19日

クレオパトラの夢

恩田陸
双葉文庫 600円
お勧め指数 □□□■■ (3)

 MAZEに登場した「恵弥」が主人公で、なにやら謎解きをする。MAZEよりばファンタジーさが薄れ、その分ミステリー色が強められている。ベースになる背景事実(本当かどうかは知らないけど)はなかなか味わい深いもので、別の人が小説にしたことがない題材ならば、本格ミステリーが組めるかもしれない。ただし、この小説はそこまでやらない。結局、登場人物の会話が面白くて、ついつい最後まで読んでしまった。

2007年8月17日

黒と茶の幻想(上・下)

恩田陸
講談社文庫 各650円
お勧め指数 □□□□□ (5)

 面白かと言われれば、地味に面白いとこたえる。その味わいはこの本の登場人物ぐらいの年齢が必要なのだろう。30も後半になれば。

 この小説、いってみれば「夜ピク」なんだと思う。やっていることは同じなんじゃないかとも思う。ただし、中年に手が届く年齢になると高校生と同じように学校中心や恋愛中心に感心が限定されるわけではない。それに、未来が開けているという感覚もなくなり、どう過ごすかという惰性延長的なことに興味がうつるということもある。人生って不可逆現象なんだという当たり前のことにどう対応するかに感心が集まってくる。ただし、人間の意識は連続なんだから一皮むけば夜ピクのときと同じようなことを結果的に悩みつつ楽しんでいるところがバレてしまう。ビールがうまく感じる人には、夜ピクはまぶしすぎるだろう。こちらの方が自分たちの身体とマッチするだろう。

 それにしても、恩田陸は普段どのようにして思索しているのだろうか。小説中の登場人物の無言の思索は作者のものだろう。その中には日ごろ私ですらぼやっと考えるような内容が書かれているところをみれば、著者もある時期いろいろ考えたのだろうと想像していまう。あるいは、何かの本で読んだものをとってつけただけなのかもしれない。それでも、あぁ、わかるわかる、と感じながら読み進めることになり、小説を読んでいるうちに知らないうちに自分についてあれこれ考えていることに気付く。なんなのだろうか、この面白さは。

 だからこの小説はミステリーでもエンタメでもないような気がする。恋愛だのなんだのの小説でもない。著距離を歩くときにぼやーと自省してしまいそうな、またその媒介となりそうな分野のもの。変に一人旅行に出かけて考えを整理するより、この本を読んだほうが手っ取り早いような感じがする。


MAZE

恩田陸
双葉社 550円
お勧め指数 □□□□■ (4)

 古代遺跡そのもに興味をもっている。この本もそれが関係しているような紹介だったので読んでみたが、古代遺跡が関係するしないとは関係なく引き込まれる。この設定は科学的にどうのこうのを検証するミステリー・ファンでもSFファンでもないひとには、なにも引っかからないだろうし、そんなところを気にしようとう気分が起きないのは、登場人物のキャラに興味がからめとられてしまっているせいだろう。謎解きというようり、エンタメという部類にはいるのだろうか。なるどと。そう思ったり、ちょっと怖くなったり。そういう気分を覚えることができる小説として、さすがは恩田さん作品だなぁと感心する。さて、次はなにを読むか。


2007年8月14日

そして誰もいなくなった

アガサ・クリスティー
早川文庫 672円
お勧め指数 □□□■■ (3)

 もっとも評価の高いミステリー作品の一つといえばこれ。さぞかしスゴイ、あっと驚くようなものなのだろう。そう思って読んだのだが・・・拍子抜けがしました。内容は全くしらなかったし、初めてみるトリックなのだけど、面白いか、興奮したかといわれれば・・・。

 すっごい不思議。なぜなんだろうか。全体的に古い感じがするのは翻訳のせいなのかもしれないけど、これをTVドラマでみてもうーんという感じがするだけかもしれない。いつものポアロの方がよっぽど好きかな。要するに、私がミステリーファンというカテゴリーにいない人なんだろう。

2007年8月13日

Q&A

恩田陸
幻冬舎 1700円
お勧め指数 □□□□■ (4)

 現代における『薮の中』。決して後味がいいわけでも、ミステリー的な問題解決が味わえるわけではなく、どちらかといえば横に話がスライドしていくだけ。しかし、それが今の時代でもいろんなことが『薮の中』であることを思い知らせてくれる。あらゆる都市伝説の生成過程を想像させてくれる。どうして都市伝説のようなあるいは前世話のようなものが流行するのだろうかと疑問に感じていたが、かんがえてみれば、人間はシューメールの時代から変わっていないのだから当たり前か。理性の下にある感情をむき出しにすれば、人の行動や考えることなど動物だよなぁ。そんなことをつらつらと考えたあとの結論は、まったく、恩田さんの能力はすごいものだ、に至る。いやはや、なんとも。

 ちなみに、この本を紹介してくれた嫁さんはラストが今一だといっているが、それは彼女がミステリーファンだからであろう。私はこれはこれでいいと思う。

2007年8月12日

木曜組曲

恩田陸
徳間文庫 520円
お勧め指数 □□□■■ (3)

 恩田陸のミステリー何かない? と嫁さんに聞いたところ読んでいないもので目ぼしいものはこれくらいだとこの本を手渡された。内容は、女の人が飯をたべならが飲みながらぺちゃくちゃするものだという。なんでそんなものが面白のか変わらないが、とりあえず読んでみた。

 ミステリーといえばミステリーだし、エンタメといえばエンタメ。本格というタイプではないが、これといって読むものがないし、疲れ気味の時にはよい題材となるだろう。熱心にではないが、一気読みだった。登場人物が食べているもの、飲んでいるものがうらやましくなるというほど表現はないので、腹が減ることはない。余り、この手の表現を恩田さんは得意ではないようだ。


2007年8月11日

象と耳鳴り

恩田陸
詳伝社文庫 562円
お勧め指数 □□□□■ (4)

 『9マイルは遠すぎる』は面白かったので、同じような小説を選んでくださいとお願いしたらこの本を渡された。恩田陸作品にも短編ミステリーがあるらしい。何でも、嫁さんはお気に入りの作品らしい。早速読んで見ると、ナルホドそれが伺える。9マイルのような短編を書いてみたかったのなんだと伺わせるものばかりか、作品中に9マイルが出てくるものがある。面白い事に、さすがに古さを感じない。やはり、9マイルは古いようだ。

 この作品の中で、都市伝説を扱ったものがある。あれが一番面白かった。都市伝説を研究する社会学者がいるが、ああいう物のインチキさを妙に納得させてくれるものだった。都市伝説の由来をミステリーのごとく解説するだけの学問である。あれは、証明しようがないので科学ではない。アマチュアがミステリーについて蘊蓄垂れるのと、さして変わらない。そんな事が透けて見える作品であった。

 もっともらしい仮説を並べる事で専門家と評している人は、テレビをつければいくらでもいる。野球の解説だって同じようなものだ。そういうものとの付き合い方が分かった。ミステリーファンだと思っていればいいのだ。それなら、腹も立たぬ。

 都市伝説を扱った恩田作品が再び現れることに期待する。

九マイルは遠すぎる

ハリイ・ケメルマン
早川文庫 640円
お勧め指数 □□□□■ (4)

 スッゲェミステリーが読みたい。古典的なものを。何か紹介してよ。そう、嫁さんにお願いしたらこの本を渡された。典型的な安楽椅子探偵ということだが、この分野は初めてだった。古典とはこういうものなのか。殺人が扱われていても可愛らしい感じがする。リアリティーがないのだろうか。誰かのお話のような気分がする。しかし、推理過程は面白い。ホームズのドラマを見ているような気分はする。タだし、複雑な人間関係は設定さていないのでポアロというわけにはいかない。

 ある言葉、セリフから状況を推理する。名探偵であれば、推理によって真実に迫れる。そういう信念があるようだ。西洋のキリスト教の影響なのだろうか。推理小説の面白さは、その過程に快感を覚える事だろう。当然私も面白いと感じる。しかし、一方で、日本人的らしいのかちょっとした疑問も感じる。『薮の中』的なことにはならいのだろうか? つまり、全く同じ材料を使って別の推理が成立し、優劣つかないという状態はありえないのか?「重解」という数学用語のように。安楽椅子探偵には、重解は存在しないのかもしれないけど。

メソポタミアの春

矢島文夫
玉川選書 906円
お勧め指数 □■■■■ (1)

 非常にダメなタイプの学者のエッセイだった。大失敗といってよいだろう。ただし、この人の学者としての腕前とは関係がない。時代というものもあるだろう。高校生の旅行記みたいだし、後半はメソポタミヤではなくアラビアの話をしている。

 古いからダメというわけではない。江上波夫という人の一般向けの本は面白いから。こういう本を買ってしまう事もある。まぁ、しかたない。

日本史漫遊

井沢元彦
小学館文庫 438円
お勧め指数 □□□■■ (3)

 夏休みだし、なんか面白い本はないか。そう思ってブックセンターの文庫フロアを漁っていたときに目にしたので早速購入。井沢さんの日本史関係の本は夏休み向きだから。この本は対談だが、対談相手は桂三枝しか知らないけど、まぁいいだろう。

 もうひとつな感想。たぶん雑誌の記事だったものだろうけど、話の展開に対して、中途半端に終わってしまう。論じ足りない、議論足りないのだ。アーダコーダか、そう来たかという展開がない。相当ヒマなときに読む文にはよいだろう。ただし、読んでいるときは楽しいので損には成らないと思う。


2007年8月 6日

中学生でもわかるアラブ史教科書

イザヤ・ベンダサン(山本七平)
祥伝社 1000円
お勧め指数 □□□□■ (4)

 アラブってなんだろうか。新聞やTVのニュースは何かを煽ることが目的なので「そもそも」論的な解説はなされないのが普通。最終的にはアメリカがどうしたとか日本はどうするとかいうことが扱われ、アラブってなんだろうかということを全く理解しないまま記者は記事を書き、アナウンサーは記事を読み上げる。そういう状態は石油ショックの時代からあまり変わっていないのだろう。だから、この本の価値は大きいのだろう。出版してくれて有り難い。

 イスラム教ってみながみんな自爆テロをするわけではない。一部の宗派が全体の説明なってしまっている。その愚かさを指摘する解説があった(本文P27ページ)。

 考えてみれば、義務教育の範疇で現代を学ぶことは「実際問題」ない。歴史の授業は古代からはじめていくので、たいてい現代までたどり着かない。また、現代史が「テストにでる」ことはないので、まずもって学生は「切る」はずだ。だから、昭和史さえろくに知らない状態であって、そんな人が中東情勢など知り得る機会などない。そこへもってマスコミのインチキな報道を「うのみ」にすることになる。そういう構造の中に自分たちはいる。山本七平のように「ご参考になれば幸いです」という姿勢で、学術的にも裏付けがあるレベルで物事を教えてくれる人は滅多にいない。そんな人の中東史のガイドがあった。それを発刊してくれた。実に私にとってはラッキーであった。

「デタラメ思考」で幸せになる!

ひろさちや
ヴィレッジブックス 740円
お勧め指数 □□□□■ (4)

 気がらくになります。もし、この本の内容を「斜めに」見なければですけど。

 子供の頃に少年ジャンプを読んだりすると自然に「努力・友情・勝利」の思想がインプットされ、歯を食いしばることが(できるできないにかかわらず)一つの理想型になってしまいがちです。努力せい、という言葉が背後から聞こえてくるような感じで。そういうのって、物事にうまくいかないときには重荷です。その状態をつづけていくと最後には無気力という自衛的行動に陥り、大抵復帰できない。そういう「あるべき姿」が重しになっている人にこの本は妙薬でしょう。

 著者は仏教学者として有名でおびただしい著作があるようですけど、私は新書を一冊読んだだけです。内容はこの本とほぼ同じ。要するに、自分の人格全面肯定のすすめだと思います。良い行いをしなきゃいけないけど、そうはできない。そんな自分を嫌いになる。そういう状態を戒めるものです。「しかたねぇじゃーねか、そういう人なんだから。それでいいよ」とまぁ、結論だけ読むとありがちな本なんですが。私も加藤諦三さんの本を昔やたら読み倒しました。主張は近いと思います。

 こんな自分でもしょーがねーじゃねーか。そういう一種の諦観が逆に日々を楽しくしてくれますし、結果的に諦観を持たなかったときよりも「良く」なるのかもしれない。

イラク歴史旅行

高橋英彦
NHKブックス 750円
お勧め指数 □□□□■ (4)

 この本は池澤夏樹さんの本の中で紹介されていた。反射的に「日本の古本屋」サイトで購入した。全般の本なのだが状態がよい綺麗なものが入手できた。

 イラクの石油プラントに関係する商社マンが趣味の風景画を描くために訪れたイラクにある古代遺跡を巡るエッセイなのだが、たんなる感想を超えた歴史紀行の本になってる。商社マンではあるが、かなりしっかりと歴史を歴史の見方を勉強したようで、随所で語られる背景知識が光る。しかし、あくまでも添え物程度に抑えているので嫌みがないさっぱりした解説である。時には小さな子供や奥さんを伴っての遺跡巡りをしたようで、10歳の子供が廃虚に佇んだときに口ずさんだ詩がのっている。メソポタミア文明に興味があるひとならば一度はいって見たい場所ばかりなので、なんともこの子がうらやましい思いがする。

 留学や海外赴任など、とくに変わった仕事をしていない人にでも本が書ける機会にあって、どういう行動をとればいいのか参考になる。もちろん、著者はそんないやらしいもくろみは無かったのだが、紀行文として本を上梓できるほどになれば、記憶だって半端ではないはず。その意味で、多いに参考にしたいと思ったのだが、いかんせん背景知識や学問の素養が自分には足りない事にすぐに気がついてしまう。この本で紹介されいている本は自然と古いものばかりだが、古本を入手して私も知識を増やそうという気分になる。やはり、歴史を知ってその場を旅行することは、時間を超える有効な方法だし究極のエンタメものだから。