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2012年9月23日

私とは何か 個人から分人へ

平野啓一郎
講談社新書
お勧め指数 □□□□■ (4)

著者の小説は読んだことがなかいけど、新書は一冊読んだことがあり、それはとても興味深かかった。
だからこの新刊も期待して読んだが、期待以上の驚きがあった。

主張していることは単純な疑問。
「"個人"と呼べるような確固として一貫した存在が、自分の中にあるのだろうか」

アイデンティティーと呼ばれる自己同一性(おれは、おれだ)は、ある年齢を超えれば大抵の人は持っている。
朝起きたらそれは昨日の続きだと疑問感じなく思っているから。

自己同一化された自己が自分の想像しているもの期待しているものと違うと「自分探し」などにまで出けてしまう若い人もいるけど、基本的には昨日と今日の自分は連続であると考えており、ならば自己同一性があるといっていいだろう。

ただ、どんな人でもそうだろうけど、あつかう話題や話を振ってきた相手によって、同一のはずの自分は微妙に違って対応する。
一貫しているつもりでも、相手によって答えやニュアンスが変わる。

ところがどのように変えるのかは、事前に決めていない。
その時々に自然に出てくる。
振られた話にどう応答するのか、その瞬間に生成しているようなところがある。

ということは、個人と呼ばれている実態はなく、相手によって「生成」しているのではないのか、と疑問になる。
つまり、個人というものは、実は相手や状況によって生成されるより小さな単位の人格に分割できるのではないか。
それを分人と読んだらどうだろうか。

この問いについて、著者の考察が紹介され、なるほどなぁと思うような話が展開されている。

この著者に興味をもったのは、このような問いをもとに、小説を創作しているところである。
この分人のアイデアについても、ある種の思考実験として小説を展開している。
小説家って、そういう方法で作成している人もいるんだなぁ、面白い。