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2013年6月22日

裸でも生きる

山口絵里子
講談社
お勧め指数 □□□□■ (4)

情熱大陸で取り上げられていそうな人の自伝。
活力を持て余している女性のマインドを大いに奮起しそうなお話だった。

バングラディッシュの貧困に対して自分は何ができるだろうか。
現地で生活までして、いろいろ考えてみて、現地でバックをつくってフェアーな価格で日本で販売することにした。
ビジネス立ち上げのレポート?になっている。

若い人ならば大いに鼓舞されるんだろう、かしらね?
すごいなぁ、情熱的で素晴らしいなぁ、と思う。
尊敬する、ほんとに。

しかし、この人かなり変わっている。
考えと行動とがかなり変。
成長過程から「普通じゃない」ですね。
だから多く人は「へぇすげぇなぁ」と見てるよりないです。
まちがっても、こうなりたい、とは思わないんじゃないかなぁ。

「そんな方法もあるのか」という生き方をする人は、普通に成長して成人に達していはいない。
だから、普通の人、つまり、普通の成長過程(学校行ってってことだけど)にある人あった人には、参考にするようなところがないんじゃないかなぁ、いや、わかんないですけど。

人って、ほんとにいろいろあるなぁ、と知りました。

2011年12月 2日

経済成長という病

平川克美
講談社新書
お勧め指数 □□□□■ (4)

平川克美さんを読み返したくなっていたが、一応これで完結ということになる。
この本も2回目。

一度読んだだけでは何も覚えていない。
そう改めて実感した。

どんな本でもそうだが、この本を読んで、自分の行動は以前とは違う方に「屈折」したはずだ。
つまり、読まなかったときと読んだときで、数年後には明らかに考え方やら行動方針やらが変わったはず。
で、結果的に「読まなかった時とは違う自分」になったはずである。

読んだ内容をテストされるわけではない。
憶えている部分のみみが自分にとって必要な情報だったのだ。
そうではないところはそもそも読んでもいないのだろう。

この本も「成長しつづけることが前提」の経済なんて、そのうちおかしなことが起こるんだから、ほどほどにしたほうがいいんじゃないか、と述べている。
読んでいて「まったくそのとおりだなぁ」と思ってしまう。

こんな風に素直に「そう」思ってしまうのは、ひとえにぼくが「研究職」についているからだろう。
「研究費は増え続ける」ということを前提するのが「おかしい」と思うのと同様に、経済発展がし続けるのが正しいと思っていない。

ぼくの研究活動は多額の予算を必要としないから、常に「研究費」というものを追いかける必要がない。
もっといえば、「研究なんて無くたって、知りたいことは知りたいし、実験したいことはしたい」と思っているタイプの研究者だからだろう。
予算なんて、ありゃあっただし、なきゃないで、何とかするのがいいのだ、と思っている。

エネルギー保存則というものが、世の中を全ている、ということを物理で学んでいる。
この発想は「心底」自分に身についている。

そういう話は抜きにしても、ちょっと立ち止まって考えれば、誰でもなっとくできることをこの本は主張していると思うが、それが通用しない世の中になってしまっているのだろうか。
実はそのあたりが実感できないでいる。

2011年11月11日

計画と無計画のあいだ

三島邦弘
河出書房新社
お勧め指数 □□□□■ (4)

一人の若者が、自分の考える「こうあるべきだ」を実現するために、無謀にも会社を起こし、面白い仲間を集めて成功する話。
実話というか、ミシマ社という出版会社をおとぎ話にした、読み物である。
面白い。

面白い物語には定形がある。
若者が無謀なことを決心し、仲間と出会い、様々な苦労を経て成功し、故郷に帰る。
要するに、桃太郎ですね。

これは、古代メソポタミアの神話であるギルガメシュの時代から人々に好まれるお話の定形で、この本もそれに連なっている。
本が大好きな若者が日本の出版業界に疑問を感じ、自分が考える「あるべき出版社」を成功させるのだから。

この本では知ったかぶりをして若者のヤル気を削ぐ敵キャラはでてこない。
けれど、一風変った(しかもかなりの才能のがある)人を仲間に引きこんで、ハァハァ言いながら努力し成功させるところは、物語的な爽快感がある。

就職前の学生さんならば、おれも真似してみようかな、と思って、自分なりの活動を始めてくれるかもしれない。
若者を鼓舞する、というのは、若くして成功した人でないとできない役割だ。

面白かったし、これからもミシマ社の本で面白そうなものは買ってみようと思った。
が、多分この本のことはすぐに忘れてしまうだろうという気にもなった。
つまり、類例をいくらでも考えることができるから。

若くしてうまくいった人の話はみな同じ筋になるので、全部ミシマ社の話と同じになってしまう。
次に似たような成功談を読んだら、それに上書きされてしまうかもしれない。


2011年10月23日

ユーロが世界経済を消滅させる日

浜矩子
フォレスト出版
お勧め指数 □□□□■ (4)

ギリシャの問題がニュースで連日報道されている。

ビジネスに興味のない人に、わかりやすく報道してくれるニュースはないので、何をもめているのかさっぱりだ。
かといって、民放ニュースを見るつもりはさらさらない。
NHKも適当な時間に解説番組をいれてくれるわけではない。

こんなとき、手っ取り早いのは信用できそうな人の書物をアマゾンで買って読むことだ。

浜矩子さんの本はわかりやすい。
それがどれだけ正しいのか、ぼくには判断できないのだが、平川克美さんがそう言っていた。
なので浜さんの本を選んでみた。
一般的というか、(儲け話しか考えていない)ビジネスパーソンに、浜さんがどれだけ受けているのかはわからないが。

で、この本を一読してみた。
ちょっと前の本だけど、ギリシャ国債とユーロの関係はこのときから変わっていないようだ。
なので、本書の内容を一読したら現在のニュースの位置づけが直ちに理解できた。

以前から借金体質だったギリシャは、国債の価値が下落して国債発行が難しい状態だった。
ところがギリシャがユーロに参加したことで、国債の利率を上げなくても引受先はずっとあった。
当然借金は増えて経済は怪しくなる一方なのだが、いざとなればユーロ参加国が助けてくれるから大丈夫だろう、投資会社や銀行は判断した。
だから高い利子を付けなくても売れ続けたのだ。

しかし、ギリシャ経済がユーロの参加前後でよくなっているはずはない。
むしろ悪くなったそうだ。
それで何年も続けているうち、いよいよ国債償還ができなくなった。

ギリシャ国債がデフォルトするとそれを大量に書かている銀行がやばい。
それがユーロ不信のきっかけになる。
ではどうしたらいいか。
それが、フランスやドイツの大統領同士があれこれ話し合いG20というところですったもんだしていたというわけだ。

なるほど、そういうことか。
ならば、ギリシャ経済を真面目に考えなかった投資家が悪いんじゃねぇか。
リーマン・ショック以来のことだが、「市場は間違えてばかり」だよね。

みんなが人の利益をぶんどることしか考えない金融をやりはじめたら、そりゃ関係する経済はつぶれれよね。
とまぁ、そういう話だとわかった。

2010年8月 4日

わかりやすく〈伝える〉技術

池上彰
講談社現代新書
お勧め指数 □□□□■ (4)

池上彰さんの本の2冊目。
分かりやすく伝えるとはどういうことか。
これについてのご自身の経験のまとめのノートような本である。
難しい理論などない。

題材は著者の経験のようだ。
なので、この本で考察された伝える技術は、プレゼンというより、現場レポートやテレビでの解説からきている。
どのように記事を書くかならば、新聞記者志望の人ならば覚えがあるだろうし参考文献もいろいろあろう。
しかしどのように現場レポートをするかは、テレビ局のしかるべき仕事についた人でないと知りようがない。
ただし、普通の人がレポーターの仕事をするわけではないが、そこから得た知見には一般性はあるだろう。

ポイントは、レポートする相手は「お茶の間」であるということ。
身を乗り出して聴こうとしている人を相手に説明するのではないこと。
それに、お茶の間の人がみな冴えた頭をもっている人でもないということ。
そういう状態でなにかを伝えるのはもっとも難しいことでもある。
相手と時間を選べないなかで、どうすれば多くの人に納得してもらえるのか。
取材した内容を短時間でインプットできるか。
その考察である。

当然、これは一般でも役に立つだろう。
それがビジネスのプレゼンにそのまま応用できるかどうかはしらないけど。
ところどころに具体的な注意がはいる。
が、一方では心構えを説くところも多い。
なるほどと思わせる部分も多いが、この本の信憑や価値といったものは、池上彰さんを信用するかどうかにかかっているような気がする。
あらゆる本がそうであるように。

 

2010年8月 2日

<わかりやすさ>の勉強法

池上彰
講談社現代新書
お勧め指数 □□□□□ (5)

池上バブルという言葉があるそうだ。
ぞくぞくと著作が出版されて、それも売れる。
特定の人に原稿執筆や書き下ろし出版が集中することはよくあるそうで、そんなときにはすごいペースで本が出版される。
が、一人でそんなに出し続けられるものではない。
内容はだんだんと粗悪になる。
品質低下は本の出来だけでなく、著者の人格も侵食しだす。
そういう怖い話。

人格については知らないが、売れる人の本はだんだん薄くなり、フォントがでかくなり、軽いつくりの本(というより雑誌?)になっていくのは本当だ。
過去そういう流れを目の当たりにしたことがある。
好きだった著者の本を次第に買わなくなってしまったことは何度か体験している。
最近では茂木バブルや勝間バブルがその例だそうで、次は池上バブルではないか。
それが池上バブルの話である。

ぼくの想像する池上さんは、一流の常識人であり、「世間から目線」をもつ数少ない知識人である。
今後ともがんばって欲しい。
だから池上バブルにはなってほしくない。

とはいえ、今現在はどんな質の本をだされているのか。
これまで読んだ本でぼくが感心したのは「そうだったのか現代史」の時代であり、あれからずいぶんと時間が経っている。
最近の状況を知りたくなったので、平済みになっていたこの本を購入した。

内容はちゃんとしている。
十分に分かりやすい。
通勤電車でこの本を読みはじめたら、あれよあれよとページをめくってしまった。
この手の普通の本を読むよりも、1.5倍の速度くらい。
最低でも1.5倍は普通の本より分かりやすいと言えそう。
決して粗製濫造ではない。
<わかりやすさ>を目指したタイトルにあるとおり、テレビ番組をみているくらい分かりやすい物言いであった。

だから逆に「へぇ」と思った。
そういう本は、今あまりないから。
経済について分かりやすく解説する本なんてない。
大抵は「おれは偉い、おまえらバカだ」的なものいい本が多いのなんの。

この本はある種のノウハウの紹介本だ。
分かりやすいとはどういうことか。
その説明の後、どういう意識で著者は勉強しているのか、どんな方法でメモを取っているのか。
そういう情報整理のコツを紹介している。
ツールに頼るのではなく、池上さんの工夫の紹介に紙面が割かれている。

人によっては面白くないかも知れない。
今ちょうど久々に論説文を書きはじめたぼくには「なるほどな、じゃぁ今書いているものに適用してみよう」というところが多々あり、いきなり実用的な意味で役立っている。

社会の出来事を知り、それが何を意味するのかを考えるには、新聞やニュースから情報を仕入れるよりない。
それをどう利用するのか。
こういう視点での教科書である。
それはそれでよい。
が、ぼくはそもそも、マスコミ自体に信用をもっておらず、池上さんがどう説明してくれようとも、新聞は読まない。
その意味ではもうひとつ役に立たない本ではある。
それはぼくの特殊事情だけど。

これならば別の本も読んで見たい。


 

2010年7月23日

衝撃! EUパワー 世界最大「超国家」の誕生

大前研一
朝日新聞出版
お勧め指数 □□□□■ (4)

EUはもやは一つの国である。
アメリカ合衆国が州の集合体として一国をなしている。
その意味でなら、EUは国であろう。
リスボン条約が成立すれば、EUにも大統領が登場することになる。
ウェストファリア条約で成立した近代国家という一つの単位が、少し変わってくるかもしれない。
そのとき、人口、国土の広さや経済規模を考えても、EUは堂々たる世界一の国家というポジションにつく。
アメリカに最大の注意を払い、中国やインド、ブラジル、せいぜいロシアにだけ注目するようでは、目の前の大きな現実を見えていない。
こういう趣旨の本であった(とぼくは思っている)。

大前研一さんの著作だから、一般に理解されていない(マスコミでの報道されていない)ビジネスチャンスのある場所を提示し、日本がグッドライフをもとめるならばそこでのビジネスを展開するよう促す本である。
EUを一つの国家として扱うという報道はどのくらいなされているのか知らない。
BRICSのような古い発想が新しいトレンドとして放送されているんじゃないか想像するが、日経や夜のニュース番組での取り扱いはどうなのだろうか。

毎度毎度読み終わった後に感じるのだが、この本の対象読者にぼくは含まれていない。
なるほどそうか、と知ったからといってEUにビジネスを展開しようと思うような仕事をしていない。
また、そのチャンスもない。
もっといえば、そういうこととは関係ない市井の人である。
こういう本、何らかの組織の社長は部長といった人向けなんだろう。
でもまぁ、大前研一さん流の見方や考え方を知る上では面白いから、それでいいけれど。

 

2009年11月18日

ヒラメキを、即、行動に移そう。

中谷彰宏
中谷彰宏事務所
お勧め指数 □□□■■ (3)

 やっている事が好きなのかどうかを判定する方法が書かれている。好きなことをすることは、どうやら「ご飯を食べる」ようなものらしい。つまり、「する」こと自体が喜びであって、その先にあるもの(結果)を手にすることは当面の感心の外にある。これをしているときが楽しいんだよ、ということ。

 そうだと認めると、世の中かなり生きやすくなる。好きなことを実行中の人にとって、その他のことは色あせる。言葉としてネガティブであるが、一方で嫌な事も色あせるのだからポジティブとも言える。仮にやっていることが非常に面倒な作業であっても、結果的にうまくいかなくて高くついても、人から認められなくても好きな事ならやってしまう。損得というロジックがない。あるいは、不合理なことのような気がする。

 好きな事をやるとはどういうことかについて、そう言われると納得できる。人から認められない、結果が出せないということをやっている人ならば頷けるだろう。不思議なものなのだ。論理的に説明しても他の人にはわかってもらえないだろう。もし、やるなと言われて止めてしまうようなものならば、「それは好きなことではないんだよ」と判断するよりない。

 かなり大胆な物言いだが、ぼくはすっかり納得してしまった。ちょっと待てよ、そうかなぁ、というネガティブな感情は覚えなかった。というのは、今のぼくの生活パターンの根底を支えているのは、好きなことをやり続けるとどうなるだろうか、という疑問に対する探究だから。中谷彰宏本を三百冊近く読んでいると、いかにも中谷彰宏さんが言いそうなことを自分でも考えているから面白い。ここまでくれば、かなり学べたと思いたい。

 中谷彰宏さんの主張には、「やってみる」というメッセージが必ず入っている。本の題材によっては「すぐに」とか「まずは」とか「失敗しても」とか、いろんな副詞がついてくる。しかし、根幹はDOなのである。そのメッセージの内容は否定しようがない。誰も反対しようがない。だから、安心して読んでいられるのである。そして、仮に失敗しても「勉強になった」という捕らえ方をすればいいし、そう推薦されている。やったから一歩進めたのである。そう考えるのだ。

 人によってはうさんくさい物言いに見えるらしく、中谷彰宏さんに否定的な評論をする人も結構見かける。が、ぼくはそうは思わない。全く妥当なことを極端なことをは行っていないし、迷わすようなことしてもいない。宗教かどうかの「ABC判定」でいえば、救済は保証してないし、何かを信じさせようとはしていないし、仲間を増やそうとはしていない。これにより、中谷彰宏さんの著作は宗教ではない。

 読んだ後に「さぁ、がんばろう」という気分がわき出るのだが、じゃぁどうやろうかなと具体的な一歩を考えると??となる。これが中谷彰宏さんの本のいいところでもあるし、限界でもある。その辺りも変わっていないようである。

 タイトルに「。」があるのは変だなぁと思い、出版社をしらべたらご自身の会社であった。そうか、自社で出版するようになったのか。完全なシステムが完成している。おそるべしだ。 

なぜあの人は人前で話すのがうまいのか

中谷彰宏
ダイヤモンド社
お勧め指数 □□□■■ (3)

 ぼやっとビジネス本のコーナーを歩いているとふしぎと目に飛び込んでくるのが中谷彰宏本である。いかんいかん、もう読むのは止めたはずだ。確か276冊読んで、もういいやと思って止めた。読む側が書く側に追い使わないほど出版していた時期があり、妙な対抗意識で出版されたものを全部読んでいたことがあった。当然だが、切りがないので止めた。それに、最近は以前ほどの勢いで中谷本は出版されていないようだ。最近ではほとんど読んでいなかった。

 とはいえ、買ってみようかなと。中田に本を買うとき、まず発行年月日を確認する。題名だけでは読んだかどうかが怪しいから。出版日を見て、その時期には買っていないと言い切れるなら、中身を確認して買う候補に挙げる。立ち読みでぺらぺら読めば内容は推測できるので、今買うべきかどうかを考えて決める。

 来年一月に大学院で授業を二時間受け持つことになっている。九十分を2回。何を話そうかなのおおよそ決め手はいるが、どういう態度で話をするか決めかねていた。学会発表とは違うだろうし、学生になれなれしいのも問題だろう。はて、と考える。そういえばぼくは初めて学生さん相手に授業するのだった。さぁ、どうしようかと少し不安になったが、まぁ、まだ先の話だからと忘れていた。

 そんなことが無意識にあったのだろう、この本に反応したのだ。ということは、反応したからには買う方がいい。そんな出会いで買ってみた。いつも通り、気軽に読みはじめらえるのがこの人の本の良いところである。

 人前で話す方法のヒントが書かれているが、同時に人の話の聞き方が語られている。どれも極端なところはない。シンプルなロジックだから頷いてしまう。そりゃそうだと感心してしまう。もっというと、簡単に出来そうな気がしてくる。

 では、役に立ちそうか。有益ではあるが、ある意味自明な内容でもあるので実践が難しいと思う。「話すときは気を飛ばせ」的なことは心情としては理解できるが、どうやってやんのさ。

 中谷本は変わっていない。相変わらず楽しい。

2009年8月 6日

断る力

勝間和代
文春新書
お勧め指数 □□■■■ (2)
購入店 bk1

 勝間和代さんの思索がいろいろとつまっているが、その断片どれもが面白くないので驚いた。この本なぜ売れるの? 要するに勝間さんがビジネス書で学んだことの「総合テスト」の模範解答になっているからだろう。典型的な良い娘の考えそうなことだし、だれも反論しないようなものなのだ。もちろん、一つ一つはきちんと考えられているし、これまでのビジネス本的なアイデアを踏まえて各論を展開しているから、決して胃いい加減な本ではない。おそらく間違ってもいない。だからと言って、面白いわけではない。人間の感想なんて実に不思議なものだ。勝間和代さんがそういうタイプの著作をもつ人だと知っていたら絶対に買わなかったのに、とがっかり。

 面白い本というのは、正確な知識をもとにした記述や豊富な引用にあるのではない。独自の切り口で考察し、今までにない新しい見方を提示してくれるものだ。そういものとは大局的な模範解答には、好きではないというよりも反発すら覚えてしまう。

 この本がビジネス書として売れたらしい。その理由は、ひょっとしたらビジネス本を読読破したい人のショートカットとしてなのかもしれない。いわゆる売れているビジネス書を読み込み丁寧にまとめ、そして「依頼を断る」を具体例としてつけてある新書。理想的な手っ取り早いサラリーマン通勤時の教科書といえなくもない。一冊読めばいろんなビジネス書を読んだのと同じなんじゃないか、というお気楽な期待ももてる。もちろん、著者のキャラクターに魅かれてというのが一番の理由だろうけど。

 しかし考えてみると、こういうビジネス書はあまり無かったような気がする。ビジネス書好きな人たちの到達点だから。ビジネス書を読んでいけば、いつかこういうことを考えられるかもしれないという希望。でも、全く面白くない、としか言い様がない。面白い模範解答なんてあるわけないのだから。

 これまでにないような視点を提示してくれないならわざわざ読む必要がない。問題は人それぞれ違うのだから、そうなると見方考え方くらいしかそれぞれの人には実際役立たない。大前研一さんの古い本を読むほうが、よっぽど勉強になるよな。勝間本は以後手を出さないことにする。


2009年5月10日

グローバルリーダーの条件

大前研一+船川淳志
PHP
お勧め指数 □□■■■ (2)
購入店 bk1

 大前研一さんの対談本なんて初めてな気がする。過去に読んだ大前本を思い出しているが、ちょっと思いあたらない。珍しい、どうしたんだろうか、と思いながら読んでみた。が、結論は残念ならが腹立たしくなってしまった。良い印象を受けない本だった。
 対談相手の船川さんは大前研一フリークで、アメリカに留学してMBAをとって、現地でコンサルタントをやって、それなりに成功したのようである。だからだろう、二人の意見は基本的に一致している。あまりに一致しているので、対談になっていない。
 内容も言ってみれば単純なもので、ふつうの日本人をダメだしである。両者ともに成功した人たちで、一緒になって高見から評論しているわけである。そんなものを普通の人が読んで愉快なわけはない。まぁ、それは極普通の日本人であるぼくがそう思うだけかもしれない。対象読者はこれから未来のある若者に限定されているのかもしれない。
 両者の主張は、といういか、大前研一さんの主張は昔から一貫しているので、とくに新しいことはない。対談相手は、小前研一のような人だから、内容に新しいものがでようはずもない。オリジナリティーという意味からは〇点である。

 この手の本は、結局はリーダー待望論におちる。それ以外の展開をほとんど期待できない。発言者は、すでに成功した人で、自分はリーダーだという自覚を持っている。そういう人たちが、リーダーが何よりも大切だと説く。なんてことはない、要するに俺はなにもよりも大切だと言っているのだ。俺のような人がもっとたくさん出現するべきで、そうでない人は必要ないゴミであると言っている。一般に頭の良い人は、自分こそが大事であると主張することに抵抗がない。そして、成功した人の発言になると、もう誰も止められない。
 しかし、世の中にリーダーなど大勢必要ない。僅かだけいればいい。ピラミッド階層で理解すれば、その頂点がリーダーということになるが、頂点は一つである。全員が全員勉強して、努力して、才能に恵まれたとしてもリーダーは少数になる。人の社会は、そいう形式以外を取らないので、リーダー待望論などを今になって主張する必要などない。人の集団は昔からそうしている。
 実際のところ、リーダーというものを「教育によって」生み出すことができるのであろうか。人の性格が生まれつき決まっているとは思わないが、それでも方法性というものがあるらしいことは自分の経験からもわかる。リーダーというものは、数学者と同じではないかとぼくは考える。原理的にはだれだってリーダになれるかもしれないが、結局は好き好きの問題になってしまう。この本の中で大前研一さんはマッキンゼーで多くの人を採用し教育してきた経験を語っている。そして、どんな人でもたたけばなんとかなるという趣旨の発言をしている。つまり、そうせざるを得ない環境に放り込めば、人間なんとかなる、というのである。数多くの経験を証拠としてあげている。
 こういう例を読むとぼくはため息がでてしまう。そもそもマッキンゼーに入社する人は強烈なセレクションを通過した人のはずで、上澄みのようなものだろう。そんな人たちでも相当しごかないとリーダーにならないのならば、それは、普通の人と関係のないことである。日本人全部を母集団として考えた場合、ほとんど意味をなさない。大前さんを初め、ビジネスで成功したリーダーたちには、普通の人など「人」として見えていないのかもしれない。ぼくをはじめごく普通の人が日本人の圧倒的多数であり、日本人や生活者といった言葉の意味する人々はぼくのような人をさす。ビジネスの成功者からみて「人」といえるような人材でないのである。
 リーダーの存在が大切なのはそうかもしれないが、圧倒的多数の人がどうすればいいかを考えるほうが、実は意味がある。圧倒的多数の人は、一握りにの「リーダー」たちの奴隷ではないのである。こんな簡単なことを、果たしてこの人たちは理解できているのだろうか。大前研一さんは、韓国のある大学のビジョンをひいて賞賛している。その大学のビジョンとは学生達にグローバルカンパニーのアジア支部長のような人として育って欲しいというものである。なるほどそれはそれで明解なゴールかもしれない。しかし、なぜ「部長」なのだろう。それは役職だ。教育のビジョンとして目指すものではない。社会的な取り決めでしかない役ではないか。
 なぜ、リーマンなど目指さなければならないのか。収入が多いからだという、分かりやすい理由かもしれない。しかしそういうもの釣られる人は結局のところ、人が生きるとはなにかということを考えたことがないのだろうと思うのだ。電車の運転が好きな人や文章を書くのが好きな人がいる。こういう人は、それが好きなのであって、なにもリーダーになりたいわけではない。だからといって、リーダーの奴隷になりたいわけでもない。リーダー以外の方法で生きていく人のほうが圧倒的多数である。リーダーになる人は、どんな障害があってリーダを目指すんだから、ほっときゃいいんじゃないか。

 船川さんが日本のだめな例として英語教育について主張している。アジアでもっとも英語ができない国であると。そして、できない理由を挙げるのをやめて、英語を勉強しろいっている。出来ない人は、もうどうでもいい人間だという主張である。
 こういう意見を聴くと、この人はアホだなぁと思う。日本人が英語が出来ない存在し、単純明解なのだ。それは、日本人の圧倒的多数の人は、幸せに生きていくためは英語が必要ないのだ。普通の人が生活するうえで英語は全く必要ない。そのように日本の社会はできている。単純な例を挙げる。日本語での本の出版は「採算がある」のである。日本語を母国語として読める、あるいは聴ける人は1億人以上いる。だから日本語の本は商売として成立する。これは内田樹さんのブログで主張されていたことで、ぼくはこれで目が醒めた気がした。もしも日本の人口が少ないか、日本人の識字率が低いかすると、日本語での出版がビジネスとして成立しなくなる。そうなれば、例えば教科書などは英語なりフランス語なりで読まなければならなくなる。そいういう国の人は、本を読むために英語を使わざるを得ない。映画だって同じだ。そんな自体は祝福すべきことではなく、単に不幸なことなのだ。過去の日本人が積み上げてきたものがあるので、日本語でやっていけている。そして、あまり使わない英語を必須になる状況を作り出し、自分たちの価値を限界まで高めている。自分じゃぁなにも生産しないのに。
 リーダー論を述べる人たちは、すごく大切な人たちような印象を受けるが、実のところいてもいなくてもいい存在である。農家がいないと困る。工場労働者がいなくても困る。店員をする人がいないと困る。しかし、コンサルタントはいなくても実はこまらない。損はするかもしれないけど、なくなっていい。

 リーダー論の本はリーダーになりたい人たちに向けた本である。何かを生産するための手段ではない。リーダーになれる人は限られている。だから、圧倒的多数の人が目指す必要はない。しかし、大抵のリーダー本は、圧倒的多数の人に読ませようとしている。本を読んでリーダーになろうと努力したとしても、慣れる人は限られている。そして、失敗すればなにもない。仮にその目論みが成功して、日本中の人がリーダーになり、みんながサラリーマンになる世界が、どうして求むべき姿のだろうか。

 大前研一さんの著者句は敬意を払って読んできたのだが、それらの本が作り出した結果がこの対談相手の船川さんような人だったのかもしれない。それはコピーではないか。そんな人を大量生産することが、大前研一さんの目標だったのだろうか。
 ずっと昔に読んだことがあるのだが、大前研一さんが若い頃一緒に仕事していた人は、早期定年退職して家具職人になったのではなかったのか。リーダーが重要で、それが重要な仕事であり、その仕事している人が幸せなのだとしたら、なぜその人は家具職人になどなろうとしたのだろうか。
 リーダー論にはもううんざりしてしまった。グローバルやリーダーなどがタイトルにある本は読むむのは止めにしよう。もっとも、大前研一さんの本はこれからも読み続けるつもりだが、もうこんな本はでてこないことを期待する。

2008年10月14日

サラリーマン「再起動」マニュアル

大前研一 小学館 お勧め指数 □□□□■ (4) 購入店 八重洲ブックセンター

 著者は一昔前に、「Reboot」という本を出版していたはずである。今度の本も「再起動」と日本語を使っているが、Rebootということで、前作とどの程度内容がちがうのだろうか。まぁ、でも同じようなものかなと疑問に思いながらも手に取った。なぜなら大前研一の本は買って損はないから。読んでおいたほうが身のためだろう。
 この本は普通のサラリーマン向けに書かれている。考え込むような論文拡張の話が書かれているのではなく、「大前研一ライブ」のダイジェストのようなものである。普通のニュース番組ではあまり話題にならないが、世界ではこんな企業がある、こんな技術を使った活動がある、というマスコミに取り上げられていない一歩先の情報である。読んで楽しい。

 テーマはこれまでと同様「見えない大陸」での社会ではどんなことが起きているのか。この先の予測、その予測から導かれる萌芽のような会社の紹介である。
 書店に並んでいるこの手の本はだいたい2タイプある。アメリカ礼賛か、あるいは煽りか。しかし、この本はどちらでもない。ITという技術はマスコミで紹介されている以上に浸透しており、それがもとで社会のあり方、国のあり方、会社の利益の出しかたが変わってきている。それを実況中継するがごとく、いち早く「新しい企業」という視点から紹介されている。ZARAの話などはすでに数年前の大前研一ライブで放送していたので、必ずしも最新ということではないが、そこは大前研一の視点からZARAを可能にしている技術や今後の見通し、関連事業のヒントなどがさらりと説かれている。専門家ぶっている他の多くの評論家の本よりは、ちゃんとしている感がある。

 この本は、単に情報を提供することが目的でもないようである。言いたい事の一つとして、はサラリーマンサバイバルがある。このままだと「食えない」状態に陥ってしまうよ、なんとかしたほうがいいよ、という警告である。一昔前に同タイトルの本があったので、主張したことは変わっていないのだろう。
 今後は、普通にサラリーマンやってる、という状態があり得なくなってしまうという。というのは、いま普通のサラリーマンがこなしている仕事はITの更なる利用、国境越えの仕事の再配分などとをしていくうちに消えてなくなってしまうから。
 また、そもそも日本の現在を作ってきた産業が日本を支える事ができなくなるだろうという理由もある。いずれにせよ、大幅にやる事を変えないと職がなくなる人が大勢でるだろうという見通しが前提になっている。

 確かにそうなんだろう。だからといって、今の自分に出来ない事を身に付けるには地道な勉強と訓練しかなく、劇的には生活は変わらないだろう。生き残れないという気もするし、それはそれで仕方ない。人生成功したって死ぬんだから。
 
 こういう本を読むと、勉強しなきゃという気分と同時に、人生ってなんなのだろうかと考え込んでしまう。その答えをきちっと定義できれば、負け組だろうがサバイバルできないだろうか、対して問題ないような気がする。

2008年8月 9日

ベンジャミン・フルフォードのリアル経済学

ベンジャミン・フルフォード
日経BP社 14870円
お勧め指数 □□■■■ (2)
購入店 bk1.co.jp

 ベンジャミン・フルフォードの本はこれまで「えー、そうなんだ」というため息をつくようようなモノばかりだったはずだが、この本はもうひとつだった。とくに、後半は株の買いかた指南みたいなもので、これを本にする意味を全く感じない。どうしちゃったんだろう。

 「日本がアルゼンチンタンゴを踊る日」のような衝撃的なものはもうかけないのかもしれない。それは、著者が有名になったから。よくわからん外人だからかける。そういう立場にいない。それに、日本に帰化してしまったので、日本の問題も冷ややかにみる目がなくなってしまったのか。

 もし、そうだとすれば残念だ。大切な視点を失ったということだから。

 本書には、水を燃料としてエンジンを回すという永久機関でマスコミを騙した会社のことが、新技術をつくる会社ということで紹介された。ベンジャミンが科学の記事を書くとしても、それは人からの受け売りだろうということがバレてしまった。なんだか、また一人お気に入りの「視点」をもった人がいなくなってしまった感がある。


2008年7月15日

東京ファイティングキッズ・リターン

内田樹+平川克美
バジリコ 1500円
お勧め指数 □□□□■ (4)
購入店 amazon.co.jpマーケットプレース

 二匹目のドジョウ。ではあるけど、前回の往復e-mailに量の制約はなかったのだし、両者はずっと友人であって昔からこういうやり取りを続けてきたのだろうから、この企画はいつまでもつづけらるのかもしれない。読んでいて、前回からの続きだとか、2冊目のテーマといったようなものは全面にでているようには感じられなかった(ぼくがわからないだけかもしれないが)。つまり、始まりも終わりもないような、川の流れのようなやりとりがずっとあったのだし、あるのだろうという気がしている。ぼくはたまたまある一部分を本という形で読んだけ。

 そのなかでも個人的に気になった箇所がある。

 ぼくは、標準化、大量生産、分業生産といったものが、ものづくりの中心的な課題を破壊させたと書きましたが、それは別な言い方をすれば、ものづくりの中に脈々とながれている時間といったものが消失してしまったということだろうと思います。

 ビジネスについての件でのやり取りなのだけど、工学をやっているぼくは以前からずっと同じことを考えている。とりたたて新しい主張ではないのだけど。

 すぐに結果を得られれば効率は高い。効率が高いと「よい」という判断をされる。これが研究であってもそうで、「この研究は〜の効率を上げることを目的とする」というものを見かける。それに、いわゆる「プロジェクト」というものが分業の最たるもので、研究活動までがプロジェクトになってしまう。一体なんんだろうかとずっと思ってきたので、ビジネスに向けられての言葉であっても気になるのだ。

 そういう話ばかりではなく、たまにおばちゃんのような意見を目にすることがある。それは、人の生活を第一に考えるという姿勢からの記述である。政治家の問題とか国際関係の問題かなにかについてのコメントをいろいろ集めた記事があったそうで、その中での小林カツ代の意見を取り上げていた。

「他国が嫌がることで、すぐやめられることならばやめましょうよ。誰も損をしないんですから」

 まったく。こういう発言をひろってくるのがすごい。全く妥当な話なんだよね。オッサンは、なぜか「床屋談義」が好きで、それが本当に社会に貢献できると信じているからくえないのだけど、そういうところをおばさんはついてくる。

 二人の会話もいろいろ言っているけど最後は現実に設定されている。すべきろんとうか、天下国家を論じるオッサンたちではない。マージャンをやりながら話すとお二人はいっているようだけど。

 だから、こういう発言もでてくる。

 大きな政府と小さな政府のどちらを選ぶんだと問われれば、俺は、「そうねぇ、中ぐらいがいいんじゃないの」とあいまいに答えるしかない。

 「本当に」考えるとそういう答えでしかない。白黒つけない。というか、白黒つけるという選択そのものがバカなんだよ。そいう教えてくれるようだ。


2008年7月12日

ビジネスに「戦略」なんていらない

平川克美
洋泉社 780円
お勧め指数 □□□□□ (5)
購入店 amazon.co.jp

 なぜビジネスなのに「戦略」ということばを使うのだろうか。おかしいだろう。だって、戦争じゃないんだよ。そういう物言いが、いつもまにやら自分たちの考えを侵食し、「戦争をやっているんだ、弱肉強食なのだ」という幻想を持たせてしまうのだ。

 要するにそういうことを教えてくれる本である。会社をおこし、経営し、たのしく生きていくということをずっとやってきた人だからかける話なんだろうと思う。世間で戦略戦略いっているひとは、会社を経営するのではなく、ずっと勉強してきた人ばかりなんだなということにも気付かせてくれる。考えてみれば、あたりまえなんだ。

 単純で明解な目標を与えれば、人材は馬車馬のように磨り減るまで使えるはずだと思い込んでいるわけです。
 わたしは、人がその力を発揮するためには、自らの仕事への敬意と自らがフルメンバーであるところの会社に対する信頼が必須の条件であると考えています。


 当たり前だよね。でも、MBAマインドの人は「青臭い」とか「それじゃ生き残れない」とか「グローバルスタンダードではない」とコメントするはず。ぼくはどちらかといえばそういうマインドの本ならば相当読み込んだので、読まないで言っているわけではない。

 「戦略」という言葉を使うことで、いつのまにやら「死ぬか生きるか」という状況におちて、兵士は道具ということを受け入れるようになってしまうのかもしれない。そういうことって、あるような気がする。

 だからといって、そういうことを言って働いているのはその幻想の中にいるので非難しても意味がない。そういうところからは「逃げる」のみだろうとぼくは思う。なんとかなるよ、たぶん。

 なんでもそうだけど、生きるってなんだろう、を本気で考えないでくると人生おかしなことになるのではないかと思う。働くことまでが小学校の続きでやってくれば、生きるってなんだろうなんて考えない。馬車馬のように「使われる人」も「使う人」も、どちらも小学生のマインドなんだな。そういうのって、注意したところでどうにもならないだろう。

 こういう本を読めて、自分は本当に幸せだと思う。今の自分を後悔しないですむことも幸せなことだと思う。


2008年7月 5日

株式会社という病

平川克美
NTT出版 1600円
お勧め指数 □□□□□ (5)
購入店 amazon.co.jpマーケットプレース

 内田樹と親しい人で、若い頃会社を立ち上げていた事もある人だそうだ。内田本でもよく登場する、尊敬すべき人ということだ。以前から気にはなっていたが、マーケットプレースで安いものがあったので購入してみた。

 のっけは少し「きちっとした」説明から始まる。株式会社とは何か、それがどういう問題をもっているのかについて。読みごたえ十分で、この前書きだけでもこの本を買ったかいがあったといえるものなのだが、休日にソファーで座って読む本ではないかもしれない。読み始めでは頭のモードが切り替わっていなかったので少しくらくらした。水を飲んで、姿勢を正して読み始めた。

 会社というものが輝いてた時代、サラリーマンが憧れだった時代、その理由と社会背景の説明、社会の変化、会社は誰のものかという問題がある。この辺りは、どこかで一端を読んだことがある。なるほどなるほど、と読み勧められる。そして、利益を追求する態度、限界がある自然な欲望と無限に拡大する人の欲望の話。働くというプロセスから結果を求めることへのショートカット、そして金で金を買うという論理。自分の父親の時代から自分の時代へと流れるように現象、背後関係、その先を見せてくれる。この辺りは、感動てきである。頭のいい人が自分の周りにいて、こういうことを折りに触れ語ってくれる人がいたらなぁとつくづく思う。まぁ、そのためにはぼくがすごくないといけないから、ちょっと無理かな。

 つまんない授業をやるよりも、こういう話をしてくれたほうが先生の存在意義があるんじゃないかと反省した。たまに学生と接することがあるが、次からはそれとなくこういう話をしてあげられたらと思うが、まぁ、「説教」という認識になるからムダかもしれない。それでも、ぼくにこういう助言をしてくれる先輩友人後輩がいたらなよかったなぁと思うから機会があったらしてみたい。結局、内田樹や平川克美を読め、ということで話を締めくくるだけかもしれない。それだと効果ないのだが。

 『ウェッブ進化論』への疑問提示が印象に残っている。知はネットで検索可能であるという主張の本にたしての平川の疑問。お前のいう「知」は、情報ではないのか? すごい、すごすぎる。インターネット礼賛のなかで、こういう疑問を提示してくれた人はいなかった。まったく、いなかった。つまり、これは「漢和辞典があれば、漢字博士になるのか?」というものに近いだろう。教科書持ち込みにしたら記述式テストは100点がとれるのか、に近い。いや、最近はネット検索でレポートを書く人が多いのかもしれないけど、それって要するに「カンニング」だよね。カンニングは結局自分の損にしかならないのだけど、それが「知」なのか? そういうことを考えさせられた。というか、ぼくも気付かなかったのだ。

 ということで、平川克美の本も漁ってみようと思う。


2008年6月19日

presentationZen

Garr Reynolds
NewRiders $29.99
お勧め指数 □□□□□ (5)
購入店 amazon.co.jp

 プレゼンテーションに関する本は何冊か読んできたが、この本はそれらを大きく引き離している。ビックリした。いやはや、こういう本を探すにははやり洋書を漁らないとダメだということを身にしみて感じた。絶対に翻訳されると思う。だから、その時買ってもいいとは思うが、ちょっとしたタイミングの違いで出版を見過ごしたら二度とあえなくなるかもしれないと思うと、はやりアンテナは洋書もカバーしておく方がぜったい良い。なるほど、世界は広いわけだ。

 プレゼンテーションってなんだろうか。そういうところから考えさせられる。もちろん、グラフィックデザインを指向したクリエーターっぽいページをつくれればそれで終わりでもないし、必ずしもそういうものを必要とするわけでもない。もっと根源的なところに素晴らしいプレゼンテーションとは何かを考察している。著書は、「素晴らしく良くできたドキュメンタリー番組」のようなものだと思っている。印象深い写真、映像、そして、ムダのない、また、引き込まれる文章とナレーション。そこには事実とともに物語がある。そうものだ。

 ダメなプレゼンテーションと良いプレゼンテーションとがある。ちなみにぼくが過去感心したことがあるものは、Steve Jobsと坂村健、そして、大前研一である。Steveは内容とビジュアルとが相当高いところにある。彼のプレゼンはマネしようと思ってできるものではない。バイオリンが好きだからといって、世界一の人のように弾けるようになれるは数人なのだろう。練習してなんとかなるレベルは、おそらく、日本人ならば坂村健と大前研一であろう。論理性を鍛える、語る内容を心底信じている、これらをマスターすればなんとかなるだろう。そう、思う。一方、普段目にするプレゼンで良いものは、全くない。普通の人はそうだろう。パワーポイントのテーマをそのままつかったものを平然と使い、細かい字やデカイ字を箇条書きにしていればいいというものしか普通お目にかかれない。当然、だからこそプレゼンテーションの限界というものに接したことがない人がつくるプレゼンは、自分が見たものを越えるはずがない。よりダメなプレゼンを自分は作ってしまうというわけだ。

 良いプレゼンを見ること。悪いプレゼンは見ないこと。そして、なぜ良いプレゼンを良いと思うのか考えること。解剖すること。出来そうなことは自分でマネしてみて、どうなるか試してみること。ある程度はこれで上達する。しかし、この本ような指導があれば、もっともっと高いところへ行けるであろう。メッセージに含まれるもの、そもそも論、ビジュアルの大切さ、これ以上落とすことができないであろうプレゼンマテリアルのチェックリスト。この本は、本として読者のプレゼン力を高めるためのこれ以上ない方法を提示してくれる。おそらく、これ以上のガイドブックは存在しえないだろう。

 僕自身、次のプレゼンからのこの方法を全面的にとりいれる。大きいな変更である。だから、多分うまくいかないだろう。それでも、数を重ねれば、普通の人がたどり着けないところへ上がれるような気がする。この本は、出会えて良かったと思う、数少ない良いガイドブックである。


2007年9月30日

旅する会社

平野友康
ASCII 1600円
お勧め指数 □□□□■ (4)

 デジタルステージの新しいソフトを購入したら付いてきた一冊。雑誌MacPowerに連載されていたエッセイをまとめたものだけど、デジタルステージという会社の様子について知ることが出来る。この会社はすっごく面白いし便利なソフトを作っているけど、会社を大きくするとうマインドがないのか、一品一品をじっくりとリリースしている。頻繁にアップデートだのバージョンアップだのをするソフトよりもずっと使いがいがあるので気に入っている。『発想する会社! 』のIDEOのような雰囲気なのかとおもったけど、意外にふつーだったようだ。最近は会社にカフェがあったりしてちょっと変わっているのだろけど、ぶっ飛んではいないみたい。働いている人が夕食を作るといった、家族的な雰囲気なところのようだ。

 書名の「旅する」というのは、新製品を詰めるときには合宿作業をするということを習慣的に行っており、その場所が熱海だったり屋久島だったり、イギリスだったりといろいろあるということを言っているのであって、そのことはこの本の言いたいことのトピックのようなものだった。この本では、どうやってアイディアを練っているのか、どういう事を考えて商品を企画しているのかを代表者自ら語っているところになる。

 この会社でうらやましいのは「受注、発注」発想がないこと。だれかから仕事を受注しているのではない。自分たちで「これやったら楽しいんじゃん」というものを企画し、出力していることだ。これは、会社の雰囲気だの、オフィスの様子だの、会議の場所だの、社長のメンタリティーだのいったこととで測れる会社の基準からみるとぶっ飛んでる。社会において必要な仕事を組織として解決することを請け負うという「会社」の考えから大きく離れている。私が思うに、彼らは一種の芸術家集団のようなものだ。

 ソフトのおまけにあった本だけど、すごく良い内容だったし、自分の生き方も鼓舞された気がする。とても良い一冊です。リーマン以外の生き方をもっともっと社会に知らしめて欲しいものです。


2007年5月22日

ザ・ゴール2

エリヤフ・ゴールドラット
ダイヤモンド社 1600円
お勧め指数 □□□□□ (5)

 ビジネス書を読む動機はなにか。目前に困ったことがある人が参考にする、ではない。それでは間に合わない。おそらく、困ったことが起きたときに対応できるような知識・行動様式を身に付け、その時点で活躍できるように準備する。社会人になってから、ひとから強要されずに本を読むのだから勉強の意味合いが強いはずである。しかし、ビジネス書というのは「ファンタジー」みたいなものや「床屋談義」、あるいは、「説教」のようなものが少なくない。サラリーマンの職種は多種多様であるから、全部に当てはまるような表現や教えは、どれもこれもつかみ所がなくなる。それが原因であろう。かといって、つまらない本がよい本だということにはならないのだが。トム・デ・マルコの「デッドライン」のような、小説形式の教えは成功するといかなる教科書よりも面白い。そして、そこで知ったことを元手に、専門書にわけいる勇気が持てることがある。本は読んでいる途中の面白さ、そして、読後に抱く自分の変化の認識具合で評価できる。小説だからということで、読まないのはもったない。

 一連のゴールドラットの本は、まさに良質の教科書である。もともと、著者自身の理論であるTOCの考え方を普及させる起爆剤として小説を書いたのだから内容が的外れであるはずない。なるほど、TOCにはそんな内容も含まれているのか。論理的だけでなく、感情的にも納得できる。第2巻は、思考プロセスについてが主題である。困ったことが起きているときには、まず何をすればよいのか。いかなる分野にも適応できる具体的な行動をステップずつ解説している。問題を把握する、ということ一つとっても具体的な方法はないものだと思い込んでいたが、実は成功する考え方はちゃんと存在しているのだ。なんで、だれも教えてくれないのだろうかと不思議に思うのだが。問題を「2つの命題(あるいは要望)の衝突(コンフリクト)とみる」方法は、はっきりいっていかなる分野、日常の些細な口論や諍いにも適用できる。実際、この小説では子供との言い争いで実践してみせてくれている。「思考プロセス」を意識的に身に付けることは、楽しく生きるコツ、ということだ。

 思考プロセスの内容は本書を読んでみればいい。この本では、その方法の結果として最後に議論される「会社」の存在意義についての議論がユニークに描かれている。まず、会社がうまくいっているときといっていないときがある。うまくいっていないときは、従業員を解雇するのが普通である。それを、この小説の主人公は全く愚かな行為だと断言している。これは、思考プロセスの結果から導き出される結論なのだ。会社が存続する必要条件とは何か。それを次のように定義する。


 (1) 現在から将来にわたって、お金を儲ける
 (2) 現在から将来にわたって、従業員に対して安心で満足できる環境を与える
 (3) 現在から将来にわたって、市場を満足させる


 それに異論はないだろう。そこで注意しなければならないのは、これらは目標ではなく「必要条件」なのだということだ。ほとんどの会社は希望的状態程度としか考えていないだからだめなのだ。

 ”必要条件を侵したら、目標は達成できないのだ。「必要条件」という意味はそういうことなのだ。”

 でも、会社の業績は変動する。うまくいかないとはレイオフしかないではないのでは?という問いに真っ向から反対する。最大の間違いは、人を仕事に「貼り付ける」ことになる。人はリソースなのだと考えれば、業績悪化に対応できる。それは、市場に適応すればよい、というのだ。

 "もし、もっと儲けの大きいセグメントが現れたら、会社は儲けの少ないセグメントからこのセグメントに乗り換える。リソースが柔軟だから、それができるんだよ。セグメントが悪化したら、別のセグメントへ標準を移す。だから、セグメントを最初からすべて独り占めしてはいけないんだよ。"

 変わるものは変わる。伸びたらかならず減少する。こんな状況に見舞われる可能性があるものには、リソースの柔軟性からくる対応方法は有効である。会社活動にかかわらず、個人の生き方にもつかえる。

 思考プロセスをつかって、上記命題を導きだす様子がこの小説で体験できる。理論や知識を知っていないと手も足も出ない、ダメなミステリーのような筋ではない。だれでも出来そうなことをステップを踏んで導き出す。ならばこの方法が、私がかかえている問題に適応でいないことはないだろう。そう思え、そして行動するように導く良書である。読めて運がよかった。


2007年5月18日

プロフェッショナル進化論

田坂広志
PHPビジネス新書 800円
お勧め指数 □□□□■ (4)

 このタイトルは「ウェッブ進化論」を参考にしたんだろうと思うのだが、内容はこれまでの田坂本と違和感なくつながっています。読み始めの部分のフォントが大きいので失敗したなかと思いましたが、メッセージは明確だし事例も理解しやすいしで心温まるビジネス本だと思います。この人の本でビジネス詩集なる世界が創造されたのですから、生き延びるためには相手をだまして殺せてきな競争がベースにあるような世界にうんざりしている人には是非お勧めです。

 今後のプロフェッショナルはどういう方向に進むのかがテーマです。順序だって未来を予想し、それに適応したプロフェッショナルの姿がこの本で描かれていますが、そのなかで興味を持ったものは「ブログ」というか文章(あるいはメッセージング)のあり方についてです。

 あるアイデアを言葉にして伝えるのは難しいことです。なんで分かってくれないのだろう。そう思うことは誰しもあると思います。そこで、ロジカルシンキングとかロジカルライティングが求められたということですが、それでは足りません。相手が人間である以上、興味をもって貰えないとどんな方法をとっても「無理」というもの。そこで、物語の能力が問われるというわけ。

”すなわち、様々な情報の中から、意味のある「物語」を感じ取り、そして、その「物語」を魅力的に語る能力である。英語で「ストーリーテリング」と呼ばれる能力でもある。”

 そうなんですよね。理科系だろうがなんだろうが、人を相手にするときって物語として語れるかどうかって結果にすごく影響します。だいたい、人が話を理解する時点で物語を無意識に探していますし、それを覚えるときにエピソードとして面白いと残りますから。論理は相手を選ぶから、今一これ味が良くない。

 ストーリーテリングをどうやって鍛えるのか。そんなの無理じゃないか。

”「師匠」を見出し、「私淑」し、その仕事から「知恵」を掴み取る。

 やっぱりそれしかないか。書生ができる時代でも、そんな年齢でも、あるいはそういう人もいないのが普通ならば、仮想的に「この人を師匠としよう、弟子入りさせてください」とするよりない。フリークというやつです。この人の作品が好き、ファンになった、いや超はまっている、という具合に特定の作家なり芸術家なり教師なり先輩なりを崇拝することはありますが、その続きということでいいのかどうか。

 まぁ、崇拝するというよりも「研究する」という態度をとるのでしょう。好きな作品を「なぜ、それがよくできているのか」観察する、考える、まねてみる。そういう具合的な行動にでよ。そう理解します。好きな人の本を読んで終わり、ではなく何度も読む、全集を読む、自分でまねてみる、そういう行為なのでしょう。修・破・離。基本はそこにありということ方法は昔から分かっていた。それを個人が再発見すればいいだけです。なにより、やってみるしかないか。

2007年5月16日

チェンジ・ザ・ルール

エリヤフ・ゴールドラット
ダイヤモンド社 1600円
お勧め指数 □□□□□ (5)

 メッセージがはっきりしている。

”{新しいテクノロジーが価値をもたらすのはどういう時かな?」スコットが訪ねた。「新しいテクノロジーがメリットをもたらすのは、新しいテクノロジーを用いてこれまでできなかったことができるようになった時、つまり既存の限界を超えることができた時だ。単純な常識だよ。」”

”それまでそこに限界が存在してきたことを意味する。その限界と長い間、共存してきたということだよ。どうやって共存してきたかだが、わかるかい。限界の存在を認識したら、それに合わせて習慣、評価尺度、ルールを作ってきたはずだ。」”

”新しいテクノロジーをインストールして、そのメリットを享受するには、それまでの限界を前提にしたルールも変えなければいけない。常識だよ。”

 著者の考えのコアを登場人物が重要なシーンで口にさえる。劇的な演出であり、また、よいアイディアを授業で聞いたときより印象深くすり込まれる。これ以上のことは体験するしかないであろう。そう、TOCという理論を機能させるERPとうコンピュータシステムをダシにして、組織の活動の問題についての一解法を提示している本なのだ。小説という方法は授業よりは効果がある。

 人間はなにかと適応する。困ったことがあっても、イヤなことがあってもずっとそれが存在しつづけるならば「認識」できないようにしてしまう。あるのだけ、気がつかないようにしてしまうのだ。組織内の問題も同じ。大きな問題であっても、ずっと一緒にいて、それが当たり前だとすると「注意が向かなくなる」のだ。空気のようなものになる。そこに、その問題の根源にメスを入れ、問題でなくなるような処置を新技術によって行ったとしても、人の行動はかわらない。そして、それに気付かない。外部の人が注意しても、そんなのは大切なことではないとされ無視される。

 では、どうすればよいか。答えは冒頭の引用にある。問題がなくなったら、人間の認識、これまで普通とされていた生き方やり方(つまり、ルール)を変える必要がある。とくに、何を善とするのかという価値についても変更しなければ。ただし、そんなに簡単にいくわけないじゃないか。

 そもそも論。なぜ、皆さんは自分の作業の効率を上げようとするのだろうか。プロセス全体から考えると、各自が最善の努力を目の前の仕事にすれば、全体も良くなると考える。それはなぜなのか。この小説に、解答があった。


”こうした限界がある中では、組織ができることにも限りがある。それぞれの部門、部署、ワークセンターごとに、自分の目の届く範囲で最善を尽くす。それ以外に方法はない。要は、部分最適化をベースにしたマネジメントをせざるを得ないということだ。”

 そうだよな。いままでは「仕方なかった」というわけだ。パレート則やオッカムのかみそりという考え方は、TOCの前では色あせますね。

2007年5月14日

クリティカル・チェーン

エリヤフ・ゴールドラット
ダイヤモンド社 1600円
お勧め指数 □□□□■ (4)


 生産スケージュール問題におけるTOCの考え方をプロジェクト・マネージメントに適用する活動を例にした小説なのだが、そういう背景を忘れても「小説として」十分成立している。理論を具体的な言葉で説明することに長けた人の話は、聞いているだけで「分かった」気になる。単に、小説を読んだだけに近いのだが、勉強してしまった感じがする。

 TOCについては、『ゴール』を読んでもらうのが一番よい方法でしょう。単語による定義を記憶するよりも、人の活動を通して「全体として」TOCの意図を理解できます。その、TOCですが、生産管理の現場以外にもいろいろ適用範囲がある、と著者は語りたいようです。というか、いくつかの工程を順番に実施してくか、並列に実施していくか、というモデルに置き換えらるプロセスはTOCが適用できるのですね。それを、「プロジェクト・マネージメント」という問題に適用してみました。「クリティカル・パス」が「クリティカル・チェーン」という概念に拡張されて説明されています。

 あるものごとを見る別の見方が提示されています。物語のなかにふんわりと入れているのですが、著者からの明確なメッセージであろうと思います。例えば、相反する必要条件を解く一つの方法に、オプティマイゼーション(いわゆる最適化)があります。この本では、「あれは、最適化ではなく妥協だ」といっています。よくありますよね、相反する要求を満たすには両者を天秤にかけた「トレードオフ」が必要になる、というような話を。そして、どのようにトレードオフするかは、何かを「最適に」するような方法をとるのがよいというが一般に信じられています。私もそう思っていましたくちです。しかしです、この本ではちがいます。それは、「相反する2つの必要条件を受け入れるのではなく、そもそも2つの必要条件がおかしいのではないか?」と疑ってみよと勧めています。なるほど、よくよく考えると矛盾する必要条件なんてとる必要はない。良く考えれば、べつの必要条件のセットがとれ、それらは矛盾しないものを選べることがあると。

 TOCの考え方に関係するのですが、おかしなものはもう一度前提を疑ってみたほうがよいということです。そもそも、活動の目的は何か? どうすればそれをみたせるのか?(スループットを上げられるのか?)ですね。コストを下げる、競争に勝つとか、そんなのは目的たりえない。ちょっと、自分の普段の行動にも適用したくなります。

2007年5月 2日

ザ・ゴール

エリヤフ・ゴールドラット
ダイヤモンド社 1600円
お勧め指数 □□□□□ (5)


 ”『ザ・ゴール』が日本語で出版されててしまうと、世界経済が破滅してしまうので許可しないのだ。”

 そう著者が発言したというプロセス管理の全体最適化の理論の伝導書がこの本。すっげー、おもしれー。なんで物理学者からスケジューリング理論に転向したオッサンが書けるんだろうかとう本である。トム・デマルコの『デッドライン』という本をご存知ならば、スケジューリング理論に関してのそんな感じの本ですよと言えば分かりやすいですかね。

 ”局所最適”ばかりに目が行く人にはお勧めできないでしょう。TOCという理論が母体なんですが、要するに「一見損なことをなんですけど、実際はその方がもうかるんですよ」という考え方を扱っています。魔法でも数学的なトリックでもないです。効率だとか生産性だとかコストだとか、そういう単語に反射的に感情を抱く人には目からうろこを体験できます。というのは、そもそも効率って何?コスト削減って何?という根本から見直しますから。「さおだけ屋」が好きな人には向かないかもしれませんが、それはそれでいいでしょう。全員が知る必要ないですし。

 あるコンセプトをそもそも論に展開して考えるってのは、哲学ですね。大抵の人はイヤがります。理由は、自分が何をやっているのか実は考えている人は少なくて、それに気付くのがイヤだからです。経営と関係なく、一種の人生論として読んでも以外に面白いかもしれない。


2007年4月 5日

欲望解剖

茂木健一郎・田中洋
幻冬舎 1200円
お勧め指数 □■■■■ (1)

 最近、茂木さんの本は外れが多いのですが、この本はどうかなぁと思って読んでみましたが、ダメでした。齋藤孝さん状態になっていますね、茂木さん。すっごく「コスト」がかかっていない本しかだしていない。明らかです。マスコミで活躍されているのはいいのですけど。

2007年4月 2日

ヒット商品を最初に買う人たち

森行生
新潮社 700円
お勧め指数 □□□□■ (4)

 久々に森さんの本を見かけた。「私の視点」というWWWページを作られている方で、「マーケッティング」って面白いなぁということを実にあっさりと教えてくれる。ただし、考え方、現象のモデルを教えてくれるだけで、マニュアルを期待したらがっかりするかもしれない。

 例によって、イノベーター理論、プロダクト・コーンの話。簡単に言えば、売れる商品にはそれを買ってくれる人たちの動きに一定の法則があり、その人たちの特性を見据えればその商品がどのように受け入れられていくのかというモデルを紹介するだけの本なのだけど、概念を分かりやすく説明するための例題に「ヘルシア緑茶」などの実例をリアルに語ってくれるのが面白い。もっとも、実例はすべて「事後」のものなので、理論が当たっているのは当たり前なのだが。

 この本の内容は完全にマーケッティングなのだけど、なぜ理系研究職の私が魅かれるのかといえば、「研究だって、同じだろ」と思っているから。真実を明らかにする、という命題と殉教するタイプの研究者ではない不埒な工学系は「何が面白か」を常に探している。その際、何を問題として扱うのかという視点を探すときには、「なんだ、マーケと研究は同じじゃねぇか」と思ったので、それいらいこの人の発言には注目しているということなのだ。

 ちょっと残念なのは、この本は前作「シンプル マーケッティング」を越えていないということ。新書だからあたりまえかな。それに、モデルはすでに分かっているし、より詳しいモデルをさがしても実際のマーケッティングには関係しなから、新しい物を競って勉強する必要はないのかもしれない。

2006年7月15日

松下で呆れアップルで仰天したこと

竹内一正
日本実業社 1400円
お勧め指数 □□□■■ (3)

 自伝風のエッセイ。新卒で松下に入社し、帝国陸軍みたいな”サラリーマン”社会を身をみって14年体験し、その後アップルに勤めた人の体験談であり、両極端の世界を見た人が残した貴重な資料として読める。松下にいるときは、軍隊よろしく朝からマラソンだの、接待の席次だのにこだわった。そのリーマンの世界をダイジェストで紹介する。「世の中に、こんな会社があるのだなぁ」とちょっと驚いた。私がこれまでソニー本ばかり読んできたこともあるが、よくこんな環境で製品がつくれるものだと思う。人間、自分がいる場所しか知らないのならば、その場所でなんとかするのだなぁと思った。一方、アップのいい加減というか、独自というか、「組織戦」という人間の妄想とは全く縁がない世界での「俺が一番」という世界も驚く。あなたが出した結果にお金を払うのであって、人間としての社会生活の支払いはいっさいしないという態度もすごい。手当てがいっさいないのはまぁそうだろうと思うが、一方で年俸+交通費という費目はさっぱりしていてよい。福祉といえば、社内にある自動販売機がただということらしいが、それも、ある意味すごい。

 この本を読んでみて、自分のだらしない生き方を反省する。もう、遅いかもしれないけど、まだファイティングポーズはとれる。とりあえず、留学生に英語の個人レッスンでもつけてもらおうかと思う。決心などどうでもよく、大切なのは自分の時間の使い方の変更であるということだから、まずは、そこから始めよう。

2006年7月 2日

企画書は1行

野地秩嘉
光文社新書 700円
お勧め指数 □□■■■ (2)

 企画書のコアは1行のフレーズである。そこにイメージを広げられるものが含まれているのならば、読んでもらえるだろう。そういう趣旨のことを書こうと、著名な(勝ち組)の人にインタビューした記事を束ねた新書である。だらだら書かれているものは良くない。大事なことは一言で言えるはずだ。そういう信念にあうものをピックアップしている。

 確かに、インタビューされている人は成功組である。インタビューで答えている内容も立派な発言である。しかし、私は思うのだ。これらの記事はともすると「熱意」とか「勝負」とか、企画書とは関係ないファクターを語っていないか? だらだら説明するのでは聞いてくれない。それは当たり前である。言葉が人を動かすのだが、その言葉の精度、構想の緻密性はかならずしも企画書の凝集とは一致しないだろう。もっといえば、一言でいえることもあるが、一言で言えないこともおおい。その意味で、とりあえず、人に気付いてもらうために「1行にしたら?」。そういう意味の一行運動なのだろか。インタビューは、かならずしも企画書が1行ということと、インタビューを受けた人の成功体験とを結んでいないので、正直この本の全体の信頼性は低いような印象を持った。

 こういうビジネス本がおおいなぁ。すべてが広告業界の成功法則にかかるわけではないのだが。とはいえ、私はこの本をタイトルで選んでしまったのだがら、この本は商業的には成功する要素の一端を語っているのは間違いない。

2006年6月15日

ハイコンセプト

ダニエル・ピンク
三笠書房 1900円
お勧め指数 □□□□□ (5)

 大前研一訳の本は珍しいと思って手にすると、その理由がわかる。これは、以前から大前さんが主張している内容ではないか。ある水準までマーケットが成熟した後、カスタマーが求めるのは「物語」である。これを実に平易な言葉でかっている本である。久々のビジネス書らしいビジネス書である。

 情報、知識、文脈、そして感情を小さなまとまりに要約してくれるのが物語である。それ自身でパッケージなのである。そして、人類史のうち、言葉で残っているものは神話であり、ようするに物語であることを考えると、これまでもこれらも物語の重要さはかわらないだろう。食うや食わずから、一定の余裕がうまれれば、商品の違いを決定づけるのは「物語があるかどうか」である。実に分かりやすい主張である。

 売れ筋のCMをみてみればよい。製品の性能よりもイメージ、イメージよりも「物語」をおしてるものの方が記憶にのこる。残っているのは情報でも印象でもなく「感情」というか、クオリアなのである。そして、無意識のうちのクオリアを人は選択する。それがよいものであれば。いかに、人の中に入り込むか。共感という言葉は、ついにはマーケティングに使われる時代になったということ。そう思って、今後の商品を見ていくと、売れるものが売れる理由がよく見えてくる。

2006年6月 2日

使う力

御立尚資
PHPビジネス新書: 800円
お勧め指数: □□□■■ (3)

 普通のビジネス本。勉強はいいから、それを結果に結びつける行動をしろ。蘊蓄を語るより、知識を仕入れるより、企画をして実践をする。要するに、それをやることなしに、この先は開けないぞ。そういうメッセージの本である。

 この本も、キーワードを並べるだけでだと「うんざり」するタイプの本なのだが、読んでいるときにはあまり気にならなかった。でも、最後は「仕事を楽しめ」とか、そういうつまんない話になっている。言われなくてもそうしている、という気になる。典型的なビジネス本ですね。

2006年6月 1日

即戦力の磨き方

大前研一
PHPビジネス新書: 800円
お勧め指数: □□□□■ (4)

 もし、大前研一の著書を読んだことがないのであれば、この本は導入としてお勧めである。一方、たいていの本をよんでいるのならば、なにもこの一冊を読む必要はない。そういう、エッセンスのような本である。
 英語と財務と問題解決力(論理思考僻)を身に付け、自分で提案して仕事を作り出せ。仕事をまっていたら、同期との格差は100倍つく。そういう世の中なのだ。だから、勉強しよう、行動しよう。文部省教育を脱ぎ捨てないと、生きていけないぞ。つまりはそういうメッセージなのである。このように、キーワードにするとへんな気分がするのだが、著書を読むと実に納得する。つまりは、大前さんの話は、エッセンスだけで「伝授できない」何かがあるのだ。

2006年4月11日

千円札は拾うな

安田佳生
サンマーク出版: 1200円
お勧め指数: □■■■■ (1)

 久しぶりに読んだビジネス書がこの本なのだが、全く面白くないかった。ビジネス的には成功している人なのだろうけど、自分がどうして成功したのかという理由は実はわかっていないようだ。少なくとも、この人、命題論理を知っていない。15分もあれば読めます。

 一つ評価できるとしれば、「自分では似合っていると思っているスーツは実は似合っていなかったのだ。」ということを説明しているくだりである。最近「こだわり」という単語がプラスの意味を持っているように使われるけど、普遍性がない価値観にしがみつくというマイナスに意味ももっていることはご存知だろうか。こだわりを持っていない点が上手く作用したよいエピソードとして面白い話である。

2006年3月 6日

ロウアーミドルの衝撃

大前研一
講談社: 1600円
お勧め指数: □□□■■ (3)

 一億総中流から二極化へ。持てるものはさらに富、持てないものはさらに貧しく。これからの日本の社会変動がこうなるので、中流と考えている人はどうなっていくのか。もう、マイホームもマイカーも望むべくもないのではないか。「考える技術」の続編です。「サラリーマンにがんばってもらう」と税調審議会の会長が言うくらいの時代です。ようするに、搾取対象は「大多数のサラリーマン」ということなっていく。さて、どうやって自衛していくべきか。

 大前さんの発言を嫌う人は「すーぺー」と言ったりしてちゃかしていますが、そう言う人はアホなんだから仕方ありません。どう考えようとも、借金は数学の原理で増えていきます。考え方でどうなるものでもない。「前向きに考える」ことですべてよくなるというのは、60年前の日本の「精神主義」です。それを不意調子が軍やマスコミが「一億総自決」まで考え、自らの考えが「悪い」というところにいたらなかったことを思い出しましょう。

 いろいろ書かれていますが、大前さんの本ですから、主張は一貫しています。サラリーマンの人が自衛できるとしたら、その方法は、(1)マイホームを買わない、(2)マイカーを買わない、(3)教育に金をかけないで、自分の時間をそそぐ、というものです。年収の大きなところから手をつけて、それでいて社会的な生活に支障を満たさず、かつ、幸せな気分で生きていくことができるという「解」です。

 これ、良くできた方程式です。上記の(1)ー(3)を実践すること、自動的に政府や業界にお金をむしり取られることになっています。早い話が罠なんです。だから、実はこの程度の工夫で結構楽しく生きていけることがわかります。決して、財テクに走る必要などないのです。収入と支出、最大のファクターに対応すればよい。実に明解。

 さて、こんなメッセージを殆どの人はどう受け取るのでしょうか。それは、ちょっと興味深いです。たぶん、殆どの人はダメなんでしょう。


2006年2月20日

続「超」整理法・時間編

野口悠紀雄
中公新書: □□□□■ (4)

 野口悠紀雄さんの本は読みやすい。すらすら読めてしまう。内容が興味深いこと、言葉が優しいこと、ユーモアにあふれていること。これらが面白さの根源であろう。内容が役に立つのは文句なしで、自分でも工夫の余地があると思わせるところに、さらに興味津々となってしまうのかもしれない。ひょっとしたらおれも思いついたのかも、という具合に引き込まれていく。

 この本の組立はわかりやすい論文の基本である。SCQA構造、トピックセンテンスメソッド。ビジネス書を研究すると身に付く読みやすい文章の特徴を備えている。だから、飛ばし読みでもよい。工学の素養と経済学の文章とが融合しているだけでなく、背後に多くの読書の結果が見受けられる。

 それだけで読みやすい本ができるのだろうか。そんなことはない。そもそも、この本の骨組みがシッカリしているからが第一原理である。この本の構成は章末の「まとめ」にある。「まとめ」とあるが、私が想像するに、これが本を書く時につかった内容の組立そのもである。このメモをつくりながら、この本を書いたのだろうと推定する。逆に言えば、この分量のメモが溜まれば新書一冊分の本が書けるはずなのだ。


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2006年2月12日

企画の教科書

おちまさと
NHK出版: 1400円
お勧め指数: □□□□■ (4)

 「企画」の教科書。文字通りです。TV番組やイベント、新商品の企画とその他の社会活動での企画とに違いはない。結局、この教科書にかかれていることがほぼ全てではないでしょうか。

 この本は「発想法」の本とも言えます。結局、現在の自分(育った環境、置かれている社会的立場、その時の興味)をもとに、社会の何に着目して、その分をとりだし、それをどう拡大していくのか。いくつかの着眼点をどう組み合わせていくのか。「ほんとう、やろう」と思えば大抵の人にできることだけである程度の企画はできるのだという「教科書」として、この本は素晴らしいです。

 企画の立場にあるとき、マス(大勢の人)を相手にするには、マスが個人から成立していることを忘れるなという指摘がありました。自分が神様にでもなった気分で大勢の人を「マス」と見てしまうのは避けられないでしょう。でも、それをやると企画は外す。業界の人って、わりとちゃんとしているのだな。そんな感想を持ちました。


2006年1月10日

おとなの小論文教室

山田ズーニー
河出書房新社: 1300円
お勧め指数: ■■■■■ (0)

 うーん、面白くなかった。というより、久々に損した。山田ズーニーさんの本、私好きなんでが、これはくらだんかった。いや、このような本を読みた人がたくさんいることは分かるけど、それは20歳まででしょう。3chで高校生がうだうだ言っているような番組やら、恋の悩み相談やらが好きな人はきっと「興味深く」読めるのだとは思います。が、書名と著者を信頼して買うと「なんじゃこりゃ」という事になる人も多いでしょう。

潰れないのはさおだけ屋だけじゃなかった

リテール経済研究会・三銃士編・著
宝島社新書: 700円
お勧め指数: □□□■■ (3)

 ベストセラーを補完する本です。フォントは大きいし、小説仕立ての構成は「へたくそ」ですが、内容は面白いです。とっても、「宝島社」的です。悪い意味ではなく、視点が面白いという意味です。ただ、どうなんでしょう。会計とは関係ないです。「なんでこんな店がここにあるのだろう? お客は?」という素朴な疑問に答える本です。だから、読んでいて「はー、そーなんだぁー。なるほどなぁ。」という感想を声に出してしまいます。よく、大自然の中でいきる「おもしろい」植物や昆虫のような話しがありますね。あの「商売版」と想っていただければまちがいないです。商売って、生命とおなじように「進化」している生命体系のようです。文化遺伝子ミームのような気配すらします。いや、金を稼ぐ仕組みとしては、ウイルスようなものに近い工夫まであるのかと驚いてしまいます。私は「さおだけ屋は」の本よりも、こっちの方が好きですね。


2006年1月 9日

さおだけ屋はなぜ潰れないのか?

山田真哉
光文社新書: 700円
お勧め指数: □□□■■ (3)

 タイトルから興味をそそる本です。そういえば、なぜなんでしょうか? 近所にもたまにやって来ます。その理由がわかるのか? ミステリーのようですね。ならば、ここでその回答を書くわけには行かない。会計の精神ようなものが寓話でかかわれている。プロの会計士ならば書けないだろう本です。すくなくとも、会計に「疑い」をもっていて、それを理解する格闘の結果をこの本のタイトルような形で紹介しているのですから。ただし、これを読んでも会計を知るにはほど遠いですけど。


2006年1月 8日

説明上手になれる「らくがき」の技術

ミリー・ソマネン
PHP: 1200円
お勧め指数: □■■■■ (1)

 落書きをすることで、意外によいことがある。ビジネスで話しを進める上でも、馬鹿にできないメリットがある。さぁ、あなたもやってみよう。そういう感じの本です。アメリカのビジネス本です。落書きというより、視覚的に「考察」するための手引きに近いと想います。べつにうまく書く必要はないです。絶対に、視覚的に考察することにメリットはあります。ただし、「絵心がない」という言い訳をたてて、殆どの人はそうしません。そんなの損ですから、もっとやってみよう。そういうセミナーのような本です。
 私自身、内容にはピンときませんでしたが。絵を描くということの面白さを想い出すきっかけにはなりました。通勤電車のなかで手帳を広げ、いたずら書きする。考えていること、心配なこと、風景、向かい側に座っている人の顔やしぐさをらくがきする。すると、〔良く見える」ようになっていることを体感できます。その意味から、無駄を承知で読まれてもいいかもしれない。


2005年12月25日

メディチ・インパクト

フランツ・ヨハンソン
ランダムハウス講談社: 2200円
お勧め指数: □□□□□ (5)

 クリエイティブなアイディア、イノベイティブな結果はどのようにして生じるのか? 方法論とも成功談ともちがうアプローチの本になっている。クリスチャンセンの本ほど論文の体裁を取っていないが、あまたある発想本ほどインチキではない。一応は、ハーバード・ビジネス・スクール・プレスですし。

 クリエイティブなアイディアとは価値のあるアイディアである。イノベイティブなアイディアとは実現させるアイデアである。そして、それらは、いろいろな知識と価値観とを持つ人が遭遇する「交差点」で発生する。言ってしまえばこのような主旨の本である。

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2005年12月 9日

グローバルスタンダードと国家戦略

坂村健
NTT出版: 2300円 お勧め指数: □□□□□ (5)

 グローバルスタンダートと呼ばれるものはアメリカンスタンダードなものが多く、その導入を無批判に主張するマスコミの論調にのってはいけない。グローバルスタンダードにも背景や歴史があり、今後の流動性を含めて考える必要がある。スタンダードの導入ばかりに注目されれば、そこで思考停止がおき、独自のものをつくらなくなる。


"結論を先に言うと、独自技術開発をやめたときがおしまいなのである。日本がまだ生きながらえているのは、このことを勘違いしている人たちにもめげずに、独自技術の開発を進める人々がいたからなのだ。"

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2005年12月 5日

使える弁証法

田坂広志
東洋経済新報社: 1500円
お勧め指数: □□□■■ (3)

  久々の田坂本。すこし語り口が変わったようですが、内容は期待した通りでした。明解な論旨を枝葉のない論理で説く。たんだかんだいっても、田坂さん本は「意味が分かりやすい」です。

 今回のテーマは弁証法。なんてことはない、現在ネットワークで騒がれているビジネス方法は横文字であることを忘れてよくよく考えれば「昔あったじゃん」というものだ。そうだ、これ、魚市場の競りと同じだ。そんな問題意識を「らせん的発展」や「テーゼとアンチテーゼをアウフヘーベンする」という言葉にのせて語ってくれます。だから、弁証法。いったんその言葉を使えば、ネットビジネスで新しいと騒がれているものは、実は昔からあったのだ、と気づきます。ならば、その問題点も、その次にくる流行も予想できるはず。こんな主旨の本です。

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2005年11月18日

わかったつもり 読解力がつかない本当の原因

西林克彦
光文社新書: 700円
お勧め指数: □□□□□ (5)

 目から鱗がおちました。あぁ、そうだったのかと口に出し、私は電車のなかで固まりました。小学校2年生の国語の教科書に掲載されている文章が紹介されています。2ページ程度の短い、しかも漢字もほとんど使われていないもの。それを読んで「なんか、ちょっと気持ちが良い話し」という感想を持ちました。内容で分からなかったところなど、なにもない。かといって、「わかったぁ」という気もしなかったのですが。そして、その文章をつかって「読み」の確認をするわけです。「あーそうか、そういう構成だったのか、だからこんな言葉がここにあったのか。」 びっくりのオンパレード。と同時に、深い悲しみと絶望。私は、こんな文章すら「読めていなかった」ことがはっきりしました。小学校低学年の教科書すら完全には「読めない」のに、読書メモなんどつけて。「あーあ、ばかみたい」。

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2005年11月16日

ザ・プロフェッショナル

大前研一
ダイヤモンド社: 1500円
お勧め指数: □□□□■ (4)

 プロフェッショナルとはなにか。単にある分野のスキルがある、知識を持っているだけでは「スペシャリスト」である。では、スペシャリストとプロフェッショナルとは、なにが違うのか? この問題を平易な語り口で教えてくれます。奴隷家業のサラリーマンではなく、もっとプロフェッショナルが出現しないと日本は危うい。もっと、プロが現れてくれ。そういう気持ちで書かれた本だということです。

 この本の定義でいえば、「プロフェッショナル=スキル+規律順守精神」です。ある価値を信望することを告白する。これをプロフェスと呼び、それがプロの語源です。だから、単にスキルがある人や自己の幸せを追及する人はプロではない。

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2005年11月14日

わたしはこうして発想する

大前研一
文芸春秋: 1429円
お勧め指数: □□□□■ (4)

 大前式の発想法を「やさしく」語ってくれます。社会人対象の本ですが、言葉選びに配慮があり、これ以上ないくらい論旨を明確に絞って、しかも単純な論理で構成された本になっています。これなら、中学生の教科書として売り出せます。

 発想の手法としては、1:先入観を疑う、2:ネットワークの視点で対象を見る、3:オンリーワンを指向する、4:歴史の教訓をリアルに感じる、5:敵はどう考えているのかを想像する、6:他人に対して言葉を使って討論せよ、という具合です。(以上は、私の理解を列挙しているので、目次とは違っています)。

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2005年10月19日

人は見た目が9割

竹内一郎
新潮新書: 680円
お勧め指数: □□□■■ (3)

 ノン・バーバルコミュニケーションの勧め。「言葉を用いないで意志疎通をはかる」意味で、しぐさや服だけでなく、声の高低、間なども範囲に含まれます。要するに、第一印象を決めるものをさしています。

 著者は演出やマンガ原作が仕事にしているそうです。その仕事のなかで、「なぜ、同じ原作なのに、マンガ作家や演出・俳優によってこうも結果がちがうのだろうか」ということに興味をもったようです。込められた言語メッセージは同一にもかかわらず、全く違う結果になるのは「言葉ではないもの」が結果の大半を決めるからだろう。そういう視点からの観察を本としてまとめられています。

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2005年10月 2日

伝わる、WEBテキストのつくりかた

栗原明則
BNN: 1600円
お勧め指数: □□■■■ (2)

 WEBテキスト(WEBページにのせる文字情報)の基本的なガイド。グラフィックデザインと同様に、人が理解しやすい「文字情報」について、著者なりの工夫が掲載されている。フリーのWEBデザイナーとして実績がある著者が「私はこうしている、参考にしてください」という覚え書きが列挙されている。

 内容は平易な言葉で無駄なく説明されている。悪く言えば、ちょっと考えれば「それはそうだ」というものが多い。受動態ではなく能動態、否定ではく肯定で文章をつくる、単語の配置の選択基準、漢字とひらがなのバランス、文字サイズ、行間などについて、著者が獲得したスタンダードを知ることができる。

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2005年9月 4日

迷いを断ち切る50の方法

中谷彰宏
ダイヤモンド社: 1429円
お勧め指数: □□□□■ (4)

 本当はできるのにやらないでいるから「迷う」。全くできないことであったり、いとも簡単なことであれば迷いなどない。迷いは先延ばしする時間がある(つまり、ヒマな)証拠。さっさとやれば迷いなどないのだ。そういう著者らしい主張の中谷本。

 言われてみればそうだよな、と思うことが簡単明瞭で平易な、しかも短い文で書かれている。読み出したらとまらない。

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得する生活

橘玲
幻冬舎: 1575円
お勧め指数: □□□■■ (3)

 金融(消費者ローン)に関する知識、税金、その他得する情報についての解説。多くの人には関係がないかもしれない。アコムやプロミスといった大手消費者金融の話しから、金融についての原理的な話し、日本のゆがんだ法律とその影響、クレジット(カードやローン)についてのからくりについて教えてくれます。消費者金融で破綻する人はどういう人なのか、それをマスコミがどのような「枠」にして報道するのかよく分かります。リスクという概念、小学校、中学校という義務期間中になんども説明してほしいですね。この概念がないと、大半の人が割を食うことになるので。

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2005年9月 2日

お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 — 知的人生設計入門

橘玲
幻冬舎: 1680円
お勧め指数: □□□□□ (5)

 個人が知っておくべき金融の基本的な原理を教えてくれます。借金の本ではないのです。拒絶反応する人は多いかも知れません。この本では「「金持ち父さん」は日本には合わない」とばっさり切り捨てています。しかし、B/Sの基本的な捉え方を教えてくれます。まぁ、メンタリティーしかつかないでしょうけど。

 投資という視点を確立するには、この本は最適です。私は金融についても株式についても「よく知らない」のですが、ただ、そういったものが社会において如何に成立し、どういう機能を持っているのかを知ってよかったと思っています。利回りという感覚をどう身に付けるのか。それは、実際そういう場に参加するしかないのかもしれませんが。

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2005年8月16日

日本は金持ち。あなたは貧乏。なぜ?

R・タガート・マーフィー エリック・ガワー
毎日新聞社: 1400円
お勧め指数: □□□■■ (3)

 資産運用方法としての株式は、個人がとる方法としては日本であまり普及していない。その理由は、戦後のどさくさに端を発する、「資本主義」とは言えそうもない日本の市場と政府官僚の思惑の結果である。しかし、株式を長期保有することは、結果として最有力な方法であることに世界的にみればまちがない。そこで、一般の人にアメリカの市場でインデックスファンドに投資をするところから株式運用になれよう。そういう主旨の本である。

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2005年8月14日

川本裕子の時間管理革命

川本裕子
東洋経済新報社: 1200円
お勧め指数: □■■■■ (1)

 雑誌のコラム程度の「時間の使いかた、私の工夫」みたいな感じの内容を束ねた本。ある意味、基本であり当たり前であるもの。内容そのものに問題はない。薄い本だし、書き言葉も丁寧。しかも、分かりやすい単語で、明確なメッセージをそのまま書いている。これで内容が分からない人は、サラリーマンとして働いてはいないだろう。

 そう考えると、どうもこの本は読者不在のような感がある。というのは、「川本裕子の」というタイトルで内容を信用する人ならば川本裕子さんを知っているはずで、そのような人ならばこの本は買わないだろうから。

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2005年8月 9日

世界にひとつしかない「黄金の人生設計」

橘玲
講談社α文庫: 800円
お勧め指数: □□□□□ (5)

 『ゴミ投資家のための人生設計入門』の文庫本。内容は、庶民が知るべき「不動産・保険(年金・医療)・教育」について本質。政府があえて口に出さない「トリック」を、これ以上ないくらい明解なロジックで説明してくれます。

 初めて読んだとき、震えちゃいました。なぜ、こんな大切なことをだれからも教わらなかったのだろうか?と。この本を読んでしばらくして、生活を大きく変えました。感動や夢を与える本もいいですが、足下を見つめさせ、見えない社会のトリックを見えるようにしてくれる本こそ「人生を変える本」と言えます。

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2005年8月 3日

成功して不幸になる人びと

ジョン・オニール
ダイヤモンド社: 1800円
お勧め指数: □□□□■ (4)

 いわゆる「成功」した人のうち、かなりひどい精神的な状態に陥る人の例を紹介した本です。成功すれば、お金があれば幸せになれるというほど、生きていくことは単純ではない。それを改めて教えてくれます。まぁ、よくよく考えてみれば、あたりまえなのですが。

 心理的なメカニズムは、お金があろうとなかろうと人間には備わっています。成功したところで脳の働きが変わるわけではありません。お金があっても対人関係の基本が変わるわけではない。自分にある傾向「分裂症ぎみ」や「投射僻」などがあれば、周りにいる人との関係から「増幅」されることは十分ありえます。だから、余計猜疑心がふくらんだり、不安になったりして、結果的に不幸なことになる。

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2005年7月24日

なぜ「エライ人」は馬鹿になるのか?

伊東明
サンマーク出版: 1400円
お勧め指数: □□□□□ (5)

「聞く技術」が人を動かす』の著者の新しい本。誰しもが疑問に思う、人類史の「謎」に挑むようなタイトルです。有無を言わず手に取りました。 とても読みやすく、説得力のあり、本当に「知ってもらおう、分かってもらおう」として書かれた本だということがすぐに読み取れました。流石、ベストセラー作家になったからといって「arrogant(傲慢)」になっていない。

 勤め先で「経営層」と呼ばれる人の会議に出たことがあります。事務局タスクだったので、資料準備・配付・議事録取りといった作業をしました。そのとき、本当に疑問に思ったものです。

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2005年7月16日

パーソナルブランディング

ピーター・モントヤ
東洋経済新報社: 1800円
お勧め指数: □■■■■ (1)

 自分を商品として売り込むために必要な「個人そのものブランド」を確立する方法の手引書。会社ではなく個人の価値の有無で、仕事をするための環境は大きく左右される。個人のブランドを確立させるためには、何をすればよいのか。それを「実践編」としてまとめた本。

 とはいえ、内容はチープです。すぐに実践できるとありますが、確かに名刺やパンフのデザインなどはすぐにできるかもしれない。が、人との関係や自分の仕事の差別性・優位性の確立はすぐにできるものはない。お手軽さを強調しているがゆえに、半信半疑にならざるを得ない本となっています。

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2005年7月13日

ニュービジネス活眼塾

大前研一
プレジデント社: 1429円
お勧め指数: □□□□■ (4)

 大前研一さんが主催していたアタッカーズ・ビジネススクールでの講義録。このスクールはベンチャー企業家に必要な考え方を現役経経営者などから直接教わることができるということです。

 ベンチャーを立ち上げる目的がなくても、この本は有効です。というのは、大前さんのレクチャーは日本の社会の特徴をまず示唆してくれて、その環境の中でなにをビジネスにつなげるのか、という視点で話されているからです。普通ならば意識できない現象の原因を「言語化」してくれるので、なるほどと思うことの連続です。

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2005年7月 4日

東欧チャンス

大前研一
小学館: 1400円
お勧め指標: □□■■■ (2)

 東欧に目を向けてみよう。中国がもてはやされているが、GDPでみれば実は世界一はEUなのだ。EU圏内部に進出するならば、関税の点からも為替の点からもマーケットに近いということからも、大きなチャンスは東欧ある!

 というような主旨の本です。しかし、「チャイナ・インパクト」のような衝撃的な内容では無い。チャイナ・インパクトは、(1)地域国家の実例を中国に見いだし、(2)なぜ朱鎔基さん以後中国が大躍進を始めたのか、(3)これから先どうなるのかという内容が世界で初めて理論的な裏付けを紹介していたから。翻訳本が中国ですら売れたということです。
 この東欧チャンスでは、今後のEUを見据えれば東欧がチャンスであるということが紹介されています。しかし、内容的には新鮮なのですが、一般の人には遠い感じがします。なるほど東欧はチャンスなのかもしれない。しかし、中国とちがって「驚異」は感じません。個人的な経験に還元すれば、東欧は遠いという感があります。
 もっとも、ビジネスパーソンは、そんな鈍感なことではいけないのかもしれませんが。

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2005年6月30日

テンションを上げる45の方法

中谷彰宏
ダイヤモンド社: 1400円
お勧め指数: □□□■■ (3)

 読ませる中谷本です。読んで、元気になれます。人の世界を知っている人なんだろうなぁ、この人は。

テンションと表現しているものは、要するに「気分」です。テンションが高いとは、気分が良く、かつ、緊張していることです。この状態で生活ができればそれは幸せです。著者は、テンションを高める具体的な方法を提案してくれています。

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2005年6月28日

成功体質になる50の方法

中谷彰宏
ダイヤモンド社: 1400円
お勧め指標: □□□□■ (4)

 文句なしに面白い。流石です、相変わらず過去の読んだことのない具体的な話しで人を納得させます。 50の方法、どれ一つをとっても具体的であり、観念的ではない。自分の経験から抽出した「理解」です。今回、私がとくに気に入った個所を引用してみます。「アドバイスをするときは、結論を押し付けない」というテーマです。


 ”相談された人は、相手の経験が足りない部分を補うアドバイスをしてあげてください。いいとか悪いとかではないです。「A、B、それぞれの選択肢を選ぶとどうなるか」を教え上げるのが、親としてのアドバイスです。判断するのは本人です。”

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2005年5月 6日

書く人

村松恒平
メタ・ブレーン: 1800円
お勧め指数: □□□■■ (3)

 [プロ編集者による]文章上達<秘伝>スクールの3冊目。前の2冊に続き、読んでみた。巷にある文章読本とはだいぶ違う。言葉のつづり方、テクニック、型といったものの議論ではなく、文章を書く動機を中心に話しあう。読者から送られてくる「質問」に著者が「回答」するQ&Aスタイルの本。「文章」の本なのに、なぜか「言葉について」の考察や「人生相談」がほとんどなのだ。それはそれでおもしろい。

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2005年4月 6日

伝わるWeb文章デザイン100の鉄則

益子貴寛
秀和システム: 1800円
お勧め指数: □□■■■ (2)

 Webの基本となるHTML/CSSの注意、すぐに直せる文章の書き方の注意、メルマガの注意によって構成されている。対象読者が、もう一つ絞りきれていない感がある。Webをはじめる人にはシステム・道具の説明が皆無、一方、システムをよく分かっている人に語るのだとすれば、「ためになる」実践的な文章の書き方説明が少ない。

 文章の書き方説明だけに限れば、「字下げについて」、「かなと漢字の比率について」、「半角数字記号全角半角文字について」と「実践的」といえば実践的なことがかかれている。全くはじめて文章を書くならば参考になるであろう。しかし、あまりに基本的なことだから本で読むとがっかりする。

 これで1800円。装丁はきれいだから高いのはわかるが、私はバランスが悪い本だと思う。。 

2005年2月20日

リーダーこれだけ心得帖

阪本啓一
日本経済新聞社 952円
★★★★☆

 阪本啓一が考えるリーダー像。それは生まれつきではなく、学ぶことでなる。喜怒哀楽があり、面倒くさがらず、成功も失敗も笑いもある日々を送りつつ仕事をする人。なによりも、部下を育てることができる人。Quority of Lifeを向上させること、それを社会に詰め込もうとしている熱い人だからこそ語れるリーダーシップ論になっている。精神論は、含まれていない。イデオロギーもない。象徴的な4コマ漫画もある読みやすい本。

 考えることではなく、実行すること。それが生活の質の向上に資すること。こればっかりを考えている著者の姿勢がよくわかる。熱いなぁ。会ってみたい。とりあえず、講演があれば聴講したい。現場をしる、自分で体験する、目標からブレークダウンしてサービスを考える姿勢は、開発や学問に適用したほうがいい。モラル教育などするよりも、このような熱い人間を言葉を聞いたほうが学生が将来において「感謝する」教育ができるだろうし、彼らが担う学問や技術、あるいは、人々の生活の質の向上には効果があると思う。私は、この人の熱さを見習っていきたい。

2005年2月14日

ラッキーをつかみ取る技術

小杉俊哉
光文社新書 720円
★★★★★

 ラッキーはラッキーな人にやって来る。なぜなら、幸運ト呼ばれるものは人が運んでくるからだ。人は幸福な人に自然に近づいてく。好きだから。楽しいから。

 スタンフォードのクランボルツ教授の「Planned Happenstance Theory」を分かりやすく紹介している。幸運と呼ばれる人には共通点がある。それは、幸運を呼び込むような行動をとっていることだ。こういう、すごく「うれしくなる」理論である。はじめて知ったとき感動した。人材マネージメントのような経営の一分野では知られた理論である。
 これと同じことを別の角度から紹介しているのは「天外司朗」である。幸運の女神は、まさに女神なのだ。幸せな奴によってくる。そもそも、幸運というのは準備した人のところにやって来る。なぜなら、準備することで「幸運」見分ける「認識力」が高まるからだ。私は幸運なんです、なとど宣伝しながら登場する女神などいない。そういう主旨。

 幸運は人が介在するかぎり、幸せな人のところにいく。慰めるよりも、楽しいほうがいいに決っている。人は人なのだから。私が酒の席でいう話しは、ほとんどこの類の話しなのだ。意識的にそうしている。たくさんの人に知ってもらいたい考え方だから。

2005年2月10日

リーダーシップの教科書

阪本啓一
日本実業出版社 1575円
★★★☆☆

 リーダシップとは、たくさんを凧を引っ張る力ではなく、編隊飛行を統率する能力である。メンバを引っ張るリーダーならば、その人が止まれば全員(凧)はすぐさま地面に落ちる。ところが、編隊飛行の場合は、基本的に全員が自分で操縦することができる。リーダーのタスクは、その状態での変化である。指示通りやらせることではない。

 その実現には、6つの能力が必要である。好きのオーラを発する、思い描く、育成する、コミュニケーションをとる、戦略、戦術である。「好き」であるものを語らせれば、ほとんどの人は輝く。好きは「星」なのだ。その実現のためには、始終そのことを考えてることだ。そうすれば、何時の日か自分が変化し、周りの人に伝染する。その変化は体の変化を要求するので、すぐにはできない。ゆっくり、時間をかける必要がある。

 この部分が、この本の核心である。類書とちがうのはこの部分。阪本啓一らしさは失われていない。主張も等身大なため、なんの疑いももたないで体にしみ込んでゆく。よい本である。

2005年2月 8日

小説家になる!

中条省平
メタローグ 1500円
★☆☆☆☆

 小説論。言葉の芸術についてのよもやま話。小説家というか文「学」と学問についてのあれこれ。短くせよ、形容詞、副詞はつかうな、感情を行動や態度で表現するべきで「言葉」で書くな、といった「技法」についての記述、実際の小説を使っての講義が中心になっている。

 小説を楽しむ人ではなく、解剖する人、評論する人はこんなことを考えているのか。文学専攻の人の興味に触れて驚いた。著者は大学教授ということだが、私はこの授業は途中でブッチになるだろうと思った。つまらないのだ。興味の持つべき場所が全く外れているのだ。私には文学は向かないと知った。昨日読んだ評論家(豊崎さん)が語っていた評論とはだいぶ違う視点であり、論点であるから、文学といっても一通りではないのだろう。

 とは言え、「へぇ、そうなんだ。参考にしよう」と思ったところは数ページある。だから、評価1(0ではない)。