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浮雲

成瀬巳喜男
東宝ビデオ[DVD]
お勧め指数 □□□□□ (5)

この映画を観ていたら「うる星やつら」のラムちゃんを思い出してしまった。
自分の頭の悪さが露呈し、なんともみっともないのだが、思い出してしまったものは仕方がない。
なんでこんな男がいいんだろうという人にいい感じの女の人が離れない不思議。
この映画は「大恋愛映画」ということだ。
そうなのかもしれないが、それは本当か?という疑問も残る。
昔の男女の関係はよくわからないが、一般には「硬い」というものだったのではないか?
恋愛結婚ですら珍しいというような風潮だったとか、男女共学などないからデートなどの風習もなかったとか。
しかし、こういう映画で判断するに、実際のところなんか違っているんじゃないか。
現代と変わんないんじゃないのか、あらゆる意味で。

本編では古い東京が映されていてビックリする。
焼け跡の街はセットなんだろうか。
闇市のようなところはセットだろうけど、千駄ケ谷の駅は本物だ。
上記機関車も走っているし、電車も走っている。
親から話を聴いたことや記録映画、古いドラマなどでみる戦後の風景が映っていた。
ちなみに、高峰秀子の回想シーンでの服装が『ローマの休日』でのヘップバーンみたいだった。
ということは、あれは戦中のモードなのだろうか。

こういうものは記録写真よりもずっと勉強になる。
自分の視点からより広い風景を想像できるようになるから。
東京を考えるときに頭に浮かんでくる風景の「時間的奥行き」が広がったようである。

リアリティーというものがあるからだろう。
いわゆる時代劇をずいぶんと見たが、それではまったく江戸の街のリアリティーを感じなかった。
こういう映画をもっとみて、いろんな東京の風景を目にすると、終戦直後の東京くらいまではリアリティーを感じるようになれると思う。

なぜ古い東京に興味を持つのか。
自分が生きている環境を確認したいという衝動だろう。
どういう場所に自分は生まれ、自分は生きてきたのか。
それを確認したい年齢になったのかもしれない。
ぼく同年代の人が見るには、この時代の映画はとてもいい。

ちなみに、ちょっと驚いたことがある。
それは混浴について。
この時代は混浴が普通だったのだろうか。
脱衣所は男女ともに同じで、同じところで服を脱ぎ、同じ風呂に入る。
そういう伊香保温泉でのシーンが何度か映る。
この時代にわざわざ夫婦用とかプライベート用とかいうものはるはずない。
ごく普通に混浴に入っていたのだろうか。

たしか、杉浦日向子さんの本で、江戸時代は混浴だったということ読んだことがある。
その名残はずっと戦後まであったのかもしれない。
ひょっとしたら、GHQの指導で止めたのか。
そう思ってウィキペディアを調べたら、混浴禁止令は江戸時代もでたし、明治政府も出したが、昭和30年代までは地方の温泉に残っていたということである。
この映画は昭和20年代のことである。
ひょっとしたら、混浴にだれもが違和感を感じない最後の風景だったのかもしれない。
しかしなぁ、そんな時代があったんだなぁ。
それもついこの間まで。

日本映画には発見がある、ホントに。