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流れる

成瀬巳喜男
東宝
お勧め指数 □□□□□ (5)

浅草橋、柳橋界隈の風景が描写されている。
今の浅草橋は老舗の人形屋さんと問屋さんがたくさんあるJR駅周辺というと違い、花柳界だった頃の様子である。
浅草橋は実家から近かったが、いつも通り過ぎるだけの場所だったので、映画の中で出てくる場所は同定できない。
が、それでも「あの辺だろうな」と予想はつく。
自分の子供の頃の記憶と映像はリンクしている。
そんな風に映画を見る楽しみもある。

ぼくは花柳界には縁がない。
現在の様子も知らないし、過去のことも推測することもできない。
たまに映画やドラマで見ることがあるが、楽しそうな仕事ではないようだ。
この映画でも、登場人物たちはがんばって生きている。
今でいえば経営もなかなか難しいのだろう。
芸能プロダクションの内部事情なども、大筋変わっていないのかもしれない。

だから筋を追ってもつまらない。
それでも映画を観つづけてしまうのは、映像に魅かれるから。
山田五十鈴に魅かれてしまう。
三味線をぼろんぼろんと弾きながらの歌が魅力的だから。
そういう具体的な理由もあるが、それ以上に全体から醸し出す雰囲気に魅かれる。

こういう女性がいたんだなぁ。

映像では清洲橋近くの料亭でのシーンがあり、この辺にも来たのかなどとうれしくなってしまう。
gooの地図で昭和25年のものがある。
清洲橋の近くには大きなセメント工場があったようで、それは記憶していた。
この映画では、そのセメント工場が「見えた」ので、ビックリして喜んでしまった。
当たり前なことなんだけど、地図にかいてあったことは「本当」なんだ。
こんなささいなことが理由で、この映画と現在の自分とが地続きになったような気がした。
視野が広がるというか、関係する場所が広くなったというか、そういう爽快感。

風景としていいものがある映画なので、手元にDVDを置いておき、気が向いたら見返すくらいのことをしてもいいかもしれない。