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放浪記

成瀬巳喜男
東宝[DVD]
お勧め指数 □□□□□ (5)

放浪記といえば、毎年ニュースで見かける森光子さんのでんぐり返し。
しかし劇の内容は全く知らない。
なぜでんぐり返しをするのか、想像もできない。

高峰秀子さん出演の成瀬映画を見ることをこの夏の課題にしている。
店先でこのDVDを手にしたとき、
「どんなシーンででんぐり返しがあるんだろうか」
という疑問が浮かび、これをみればそれも解決するかもと期待して借りた。
が、その期待は裏切られた。
でんぐり返しのシーンは出てこなかったから。
演劇ではどんなシーンででんぐり返しをするのか想像もできない。
疑問は余計深くなって残った。

林芙美子さんを原作とした成瀬映画を何本か見た。
全部暗いが、絶望の気分では終わらない。
劇としては絶望で終わっているが、それは救われる暗さではあるから。
監督によって結末が変わるわけでもないだろし、高峰秀子さんだから救われるというものでもないはず。
ならば原作がそうなんだろう、多分。

主人公は作家本人。
要するに自伝なのだろう。
登場する高峰秀子さんの様子は、これまでみた映画の高峰秀子さんとは少し感じが違うようで、ちょっと面ッ食らった。
役者の実年齢よりも大分若い自分の人を演じるからだろうか。
時代設定はいつのなのか、いつも気になる。
ミルクホールの給仕として働く姿を見るに、これは戦前の設定なんだろう。
当時の状況を良く知らないが、ミルクホールはカフェというよりキャバレーに近いところなのかもしれない。

そういうところでせっせと働きながら、夜には詩を書いたり小説を書いたりしている。
文字通り蜜柑箱にロウソクだったりして。
本人が「これをやるべきだ」と知っている人の行動は世の東西、時代を問わず同じようだ。
ストーリーとしては、貧乏のどん底からはい上がっていくもの。
成功物語である。
文筆業は、原資が要らないので、その国の成功物語の一つのパターンになっているはず。
言ってしまえばそれだけ。
なぜ、それで面白いのだろうか。

それでも面白いと思ってい見たのだから、何か違うものを読み取ったのかもしれない。
一つは、弱いものが力を得ていくところだろうか。
可哀相な高峰秀子さん演じる娘さんがチャンスを掴んでいく様に、上昇感を味わうことで気分がよくなるのだろうか。
よくわからない。
が、こういう作品は成功した人が現れるために登場するので、尽きる事がないだろう。
ある意味、救われる国であるかどうかのバロメーターなのかもしれない。

ぼくが一番印象に残っているシーンは、高峰秀子さんの歌声。
それだけのためにDVDを買いたいと思っている。