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山の音

成瀬巳喜男
東宝[DVD]
お勧め指数 □□□□□ (5)

高峰秀子さんの映画を借りようとツタヤに行ったのだが、見ていないものは借り出されていた。
残っていた成瀬巳喜男監督の作品を眺め、まぁこれでならばいいかなと手のしたのが山の音だった。
川端康成の小説が原作。
読んだ事はない。
ローマで書店をぶらぶらとしていたとき、須賀敦子によるイタリア語翻訳のペーパーバックが店頭に出ていたのを見かけたことがある。
どうしてなんだろう、日本人旅行者へのサービス?と不思議に思ったが、真相はわからずじまい。
そんなことが頭をよぎった。
原節子の作品も見たことはない。
ちょうどいいので見てみようかと手にした。
正直、高峰峰子の方がよかったのだけどなぁ、という残念な気分もあった。

ストーリーがどうのこうのいう以前に、原節子の凄みが染み入った。
スゴイ、なんだこの人は。
女優さんの演技を見ているだけで、こんな思いになるものなのか。
感情移入というわけでも、同情というわけでもない。
ただただ、見入ってしまう。
こんな女性、いや、こんな女優さん、今はいないだろう。
ぼくは見た事がないもの。
流行りもののドラマや映画には登場してきていないのならば、現代にはいないタイプといっていいだろう。

見終わっても、あーだこーだ議論をするような内容ではない。
原作が川端康成だから。
まぁ、ある種の「絵」のようなお話。
自分とはあまり交差がないだろうものなので、反省したり道徳を読み取ったりという作業はまったく必要がない。
ただ、観賞すればいい。
そうとうタイプのお話である。
あの人はその後どうなったのか?
そんなことを聞いても仕方ないし、想像しても仕方ない。

原節子の演技に感動した。
この作品の評価はとても高い。
ところでローマで見かけた須賀敦子の翻訳した本は、イタリア人に受けたのだろうか。
出版までするくらいだから、少なくとも出版社としては「意味がある」と判断しただろう。
しかし、陽光そそぐイタリアで、日本の冬の光のような話の意味が理解されるのか。

映画だったら理解してもらえるだろうけど。
原節子のあの表情ならば、きっと。