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めし

成瀬巳喜男
東宝ビデオ
お勧め指数 □□□□□ (5)

タイトルどおり、ご飯を食べようとするシーンが多い。
ちゃぶ台でご飯を食べる習慣、ぼくも昨年までそうしていた。
食卓テーブルもあるが、ちゃぶ台のほうが落ち着く。
だからずっと愛用していた。
原節子がてきぱきと整える食卓には、用途がなんだかわからない家具がある。
冷蔵庫ではない。
一体なんだろうか、あれは。
そんなことを観察しながらも、かなり見入った。

原節子の役は、幸薄い美人奥さん。
戦後直後の世界だから、旦那さんの態度がどういうものが一般的だったのかわからない。
画面から伝わる雰囲気は、現代(といってもぼくの世代くらいまでだが)と変わらない。
家父長制なんかない。
男尊女卑でもない。
そんなに違わないのかもしない、実際のところは。
そういう意味では現代劇と思ってみても違和感はない。
ならば原節子さんが現代劇に登場しても、いかなる問題もないだろう。
戦後って、30年代以降はそんなに変わっていないのかもしれない。
劇中、原節子がインクとペンで手紙を書くシーンがある。
携帯やノートPCの画面をのぞき込む原節子さんを想像することはたやすい(高峰秀子さんの方はちょっと難しい。何故だろうか)。

原作が林芙美子なので、まぁ暗い雰囲気が全編に漂っている。
見ている人は原節子の心情の側にたつだろう。
なにか「面白くない」ものが胸に詰まった奥さんの役、上手に演じている。
実際そういう生活をしているような気分になる。

映画には当時の日本人に向けたメッセージがある。
ちょっとベタな感じもするが、昔はこれで良かったのだろう。

劇中に小林珪樹が登場する。
まじめに働く人で、原節子を間接的にしかる役目でもある。
劇中に登場する人の中でもっとも常識人。
こういう役、似合うなぁ。
寅さん映画でのひろしの役割だ。

そういえば、先週見た映画は小林珪樹が主役だった。
そう思ってWikiを覗いたところ、ビックリした。
9月16日に亡くなったそうでだ。
3日前か。
ニュースには昨日でたようで、何かの因縁を感じる。
先週小林さんの主演映画を見て、今週も見た。
なにか不思議な縁があったようだ。

ツタヤに置いてある白黒の成瀬作品はもうない。
残る2本はカラーである。
成瀬作品の後は誰を攻めるか。
木下か溝口か小津か。
今年一杯つづければ、それなりの日本映画好きになってしまいそうである。