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聖書の旅

山本七平
文芸春秋社: 2300円
お勧め指数: □□□□■ (4)

 旧約聖書の世界、つまり現在のイスラエル・シリアの旅行記。ゆく先々の風土を紹介することが目的ではない。ユダヤの歴史をその場所に立ってみて考え、それを随想録としてまとめている。それも、個人的な想いを文章にするのではなく、その場所場所で起きた事件を「ユダヤ史のなかでの意味」を探り、現代にも通じる一つの「知恵」としてまとめている。

 言って見れば、イスラエルでの「街道をゆく」とった感じの本です。著者にある「強烈な量の、かつ体系的にまとめられた、意味づけされたユダヤ史」をもってして、初めて眺められるイスラエルの風景が味わえます。私はこの旅のドライバーでも買って出たいくらい。


 この本を読んでいて、彼らが「神」と呼んでいるものが分かった気がします。私の理解では、ようするに「正義」なんですね。ネブカドネザルやアッシュパニバルのようなオリエントの王に翻弄された人が感じる「なぜ、そんなめにあうのか? 神も仏もあるものか!」という不条理を感じたときに要求する「正義」あるいは「正しいことが行われる世界」が、「神」なんでしょう。

 そう理解すれば、いわゆる「宗教」についても次のように考えられます。
 社会で嫌な気分、悔しい思いをしないで生きていけるようにするための経験的な「ルール」をパッケージ化したもの。それが「宗教」。そして、そのルールのパッケージを個人がすきに選択できる。それが「宗教の自由」というもの。
 なるほど、海外で「お前の宗教はなにか? え、ない? そんなことはあり得ない!」と言われたり、宗教を持たない人間はある種の動物と見られる、ということの理由が理解できます。

 とっても良い本です。私はこの本でたびたび参照される「ヨセフスのユダヤ戦記」を古本で購入しました。楽しみです。(山本書店のユダヤ戦記は、塩野七生もその著書で推薦していましたね)。

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