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タリズマン 上・下

グラハム・ハンコック ロバート・ボーヴァル
竹書房: 各1900円
お勧め指標: □■■■■ (1)

 ハンコックの最新作。今度のテーマはキリスト教カタリ派の流れとフリーメーソン。パリの軸線(町並みのデザインの骨格、道の流れと建物の関係)とルクソールの軸線。

 だだし、記述は冗長(2人で持ちあった原稿に重複があったのだろう)、執拗なまでの参考文献。上下巻で900ページは厚いですね。もっと削れるはずです。本というより、論文を狙ったのでしょうか。しかし、論理は「〜であるかもしえない。」という推定がいつの間にやら事実として変容し、それを根拠に次の説が導かれるという「科学では、やっていはいけない」説得法が多いので、参りました。証拠がない世界の話しだから、科学的な記述は不可能なのは理解できますが、もうちょっと書きようがあるだろう。「神々の指紋」のような切れ味がないので残念です。

 中世のヨーロッパの話しですので、ヨーロッパ人しか楽しめないかもしれない。いわゆる陰謀説と太古から受け継がれている宗教の香りが好きな方用です。初期キリスト教にはローマ史との関係から興味を持っていますので、カタリ派・ボゴミール派とグノーシス派については面白いと思いました(上巻)。下巻はローゼンクロイツとかフリーメーソンの話しが中心です。正直、イマイチです。私は上巻だけあればいいかなとも思いました。

 ヨーロッパ中世が暗黒なのは、カトリックがカタリ派を撲滅するために行った抹殺行為が原因。カタリ派と関係ありそうな人を徹底的に殺す。噂・垂れ込みによっても、連座性で殺してしまう。これが街のスケールでおこなれたら、「互いに互いを信用しなくなる」ことになります。接触すら避けようとする。要するに、一人ひとりをばらばらの状態にしておくという結果になります。

 すると、街のスケールで「活力」が落ちる。新しい物は生み出せないどころか、その自体のことも後世に残せないことになる。人は人と協力することで、活力を維持し、アウトプットを非線形的に増大させることができる。ヨーロッパ中世というのは、そんあ社会学的な意味での実験だったとも言えるようです。この論説には中世の弱さの原因の一端であるという仮説は十分に成り立ちます。これは面白いと思います。

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