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野口悠紀雄
中公新書: □□□□■ (4)
野口悠紀雄さんの本は読みやすい。すらすら読めてしまう。内容が興味深いこと、言葉が優しいこと、ユーモアにあふれていること。これらが面白さの根源であろう。内容が役に立つのは文句なしで、自分でも工夫の余地があると思わせるところに、さらに興味津々となってしまうのかもしれない。ひょっとしたらおれも思いついたのかも、という具合に引き込まれていく。
この本の組立はわかりやすい論文の基本である。SCQA構造、トピックセンテンスメソッド。ビジネス書を研究すると身に付く読みやすい文章の特徴を備えている。だから、飛ばし読みでもよい。工学の素養と経済学の文章とが融合しているだけでなく、背後に多くの読書の結果が見受けられる。
それだけで読みやすい本ができるのだろうか。そんなことはない。そもそも、この本の骨組みがシッカリしているからが第一原理である。この本の構成は章末の「まとめ」にある。「まとめ」とあるが、私が想像するに、これが本を書く時につかった内容の組立そのもである。このメモをつくりながら、この本を書いたのだろうと推定する。逆に言えば、この分量のメモが溜まれば新書一冊分の本が書けるはずなのだ。
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(本文中からまとめだけを抜き出す)
1スケジューリングの基本は、自分の持ち時間となすべき仕事を、【目に見える】形で把握することである。
2このため、次の道具を用いる。
・数週間が見渡せるスケジュール表
・仕事の配置を示すTOーDOボード
・その日の仕事を示す「すぐやるメモ」
3従来式手帳の欠陥
・一覧できないため、スケジューリングの補助手段にならない
・不要になった部分も持ち歩かざるを得ない
・コピーを取りにくい
・A4時代に対応していない
1仕事の進め方五原則
・中断しない時間帯を確保する。スケジューリングの目的は、ここにある。
・案件が発生した現場で、少なくとも応急処置を講ずる。
・拙速を旨とする。八割できたら、他の仕事を先に片づける。仕事には、とにかく着手する。
・あるところまで来たら、意識的に寝かせる。
・所要時間が不確実な案件を先に済ませる。
2スケジュールのためのヒント
・昨年の記録を参照して、今年の場合を予測する。
・他人との約束などによって人為的に締め切りを設定する。
・ダブルブッキング防止のため、予定表を一つに限定する。
3不確実性への対処
未来が予測できないのは、スケジューリングにおける本質的な問題である。これに対処するため、予備日を【過剰】に作っておく。一定期間(三ヶ月程度)以上先の約束をしない。
1電話の問題点
・仕事が中断される。
・受けての体制ができていないところにかかる。
・知りたいことがすぐにはわからない。
・相手が捕まらない。
・【いった、いわない】問題が起きる。
・言い忘れ、聞き忘れ、早呑み込みなどのミスが起きる。
2ファックスの利点
右の問題は全て解決される。さらに次の利点がある。
・ファックス受信後の事務処理に使える。
・予定表が自動的にできる。
・相手を判断できる。
・定型文書の送信は電話より速い。
3時間順の電話番号簿と住所録
・恒常的な連絡相手でなければ、手帳の週間スケジュール欄に書く。
・過去の発信記録を番号簿、住所録として使う。
1組織内の簡単な連絡も、口頭から文書に切り替える余地が大きい。これによって、時間節約や時間差調整が可能となり、効率的なタイム・マネジメントを実現できる。
2日本型組織は、口頭連絡に頼りすぎている。産業構造の変化や情報技術の発展方向を考えると、これは大きな問題だ。
3会議には整理すべきものが多い。ここでの要点も、文書に切り替えることである。
4電子メールが普及すると、事務処理をコンピュータの中で連続して行えるため、効率が飛躍的に上昇する。ただし、メールの受信能力を超えるという【電子メール地獄】のおそれはある。これにいかに対処するかが、今後の重要な課題となろう。
1内容分類に頼る従来の整理法は、整理した直後は良いが、次第に秩序が崩壊する。
2押しだしファイリングは、書類を最小限にまとめて封筒に入れ、時間順に並べる。これがうまく機能する理由は、
・ワーキング・ファイルが列の左の方に固まっている。
・時間順の記憶は強い。
・色分けなどで区別する。
3タイム・マネジメントにおいても、押しだしファイリングが重要な役割を果たす。
4「超」整理法の基本原理は、【ぽけっと一つ原則】と、【時間順原則】である。この考えは、名詞、電話帳、メモに応用できる。
1時間は買うことができる。人的サービス以外の携帯でも購入できる。
2自分の方が効率良いという理由で部下に仕事を任せない上司は、組織全体の能率を下げている。
3教えてもらう、メモを書いてもらうなどの方法で、人の時間をわけてもらうこともできる。これらは、双方にメリットをもたらすことがある。
4時間泥棒を見分ける技術が必要である。余計な情報は最初から取り入れないほうが良い。
5通勤電車、待ち時間などの隙間時間の活用は、バカにならない。
1人間が一瞬のうちに識別できる対象は七個程度でしかない。一週間を超える期間のスケジューリングが難しいのは、このためである。
ただし、複数属性の対象の場合には、識別可能性が高まる。文書だと内容を把握しやすいのは、二次元配列になっているからだ。
2ワーキングメモリ(短期記憶)に保持できる限度も、七個である。ただし、これは【袋】の数に関する制約である。符号化して袋の中に多くの情報を詰め込むと、記憶できる情報量が増える。
3ワーキングメモリはきわめて速く揮発する。このため、中断シンドロームが問題となる。
4メモ手段として、入力の容易さでは録音が、編集・検索では電子的手段が優れている。神はまんべんなく優れている。カモの目もの場合、【ぽけっと一つ原則】を守ることが重要だ。
A4サイズで2ページ程度の箇条書き。新書の内容のボリュームを初めて知った。あとは、論理的な説明、具体例、ユーモアを交えた文章力があれば、新書になる。もっとも、このメモを構成するのが一番難しいところなのだが。