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ヴェネツィアの宿

須賀敦子
文春文庫: 533円
お勧め指数: □□□□□ (5)

 なぜ、須賀敦子という人の評価は高いのだろうか? その疑問が一発で吹き飛びました。確かに、この本は忘れられない本です。これならば、日本の文芸誌に残ります。読んで良かった。

 過去の自分の視点、現在の自分の視点、子供の自分の視点と話しごとに縦横無尽に飛び回ります。だから、少しばかりの須賀さんの経歴というか生活を過ごした場所や時代を知らないと読んでいて戸惑うと思います。私は「コルシア書店の仲間たち」という別の本を読んでいたので、おぼろげに須賀さんの過去を知ったのですが、どの本でもいいのかもしれない。
 子供の頃は戦争時代、学校はミッションスクール。生活には困っていない。パリ、ローマに留学。帰国後職についたのだが、チャンスを得てイタリアに留学。ひょんなことからミラノに滞在。60年代から70年代にかけてミラノの書店に関わり、そこで働いていた人と結婚。旦那さんが病気でなくなり、数年後日本へ帰国。こんな感じであろうと思います。
 須賀さんの本に登場するのは実在の友人たち。うるさくない描写ですが、その友人の雰囲気が伝わってきます。もちろん、話しの中での著者の感じも。

 ”カティアが歩いた道”、”オリエント・エクスプレス”。この2編は一生私の記憶に残ると思います。若い頃の何気ないけれども人生の分岐点だった出会いとか、楽しかった人生で最後に残るものは何かとか。著者自ら「あの四冊は書けてよかった」という作品はすべて60歳を過ぎてからのものです。なるほど、だからストーリーの結末が物悲しいのでしょう。未来から過去を見ると、「あぁ」という哀しさが溢れてしまうのでしょうか。私にはまだわからないですが。

 合間をみて、須賀敦子さんの作品は全部読んでみようかなと思います。そう、思わせる一冊です。

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