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危機の日本人

山本七平
角川oneテーマ21新書: 680円
お勧め指数: □□□□■ (4)

”倭の風俗では、あらゆる事がらや技術について、必ずある人を表立てて天下一とします。ひとたび天下一の手を経れば、それが甚だ粗悪で、甚だつまらないものであっても、必ずたくさんの金銀でこれを高く買い入れ、天下一の手を経なければ、甚だ精妙な物であっても、ものの数ではありません。”
 秀吉の時代に韓国の知識人から日本をみた印象の記録である「看羊録」というものが残っている。それによれば、以下に日本が今で言う韓国・朝鮮より劣っているかが書かれている。そのなかの特徴的な日本の見方として、上のような職人にたいする評価がある。
 こういう気質が良かったのか悪かったのかは別として、純然と価値をもっていた時期があった。明治どころか現在に至るまで、職人にたいする一種の尊敬は対外の日本人にはあるのではないかと思う。

 それが国際社会においての日本人の危機と関係があるのかといわれれば、実はよくわからない。明治以後、世界から借りたお金をきちんと返済した国は日本だけだと言われている。現在における発展途上国とはそこが日本と決定的に違っている。そういう主旨の発言がある。確かにそうだが、なぜ日本だけが?ということも少しは考えておく必要がある。職人気質だけが借金を期日までに返済することの理由にはならない。外貨を稼ぐ手段として「生糸」があったのだ。精神論だけではなく、からくりも知っておく必要がある。

 「空気の研究」と同じ議論になってしまうが、昭和にいたるまで「現実」に価値を置く素養が日本の社会にはあった。それがなくなってしまうと、日本全体はとくにマスコミは「空気」に支配されてしまう。そして、おかしなことをして自滅する。そういう性質なのだから仕方がないのであって、それはそれと知っておくことが日本人を危機に陥らないための方法である。それを具体的な議論で教えてくれる本である。

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