恩田陸
新潮社 1600円
お勧め指数 □□□□□ (5)
小説はあまり読みません。とくに、学園モノはパス。いつまでも過去に浸っているようで。あるいは、世界が学校しかないと思っているようで。そう理解したので、そもそも読もうとおも思っていませんでした。しかし、「文学賞メッタ切り」を読んでいるうちに、これだけ評価が良いものは読んでみてもそんはないだろう。この評者は信頼できるし。そうおもって読んでみました。
世の中にはスゴイ小説はあるものですね。30代後半の私でも高校生の頃の気持ちで読めてしまいました。また、この世界にちょっと憧れるような気持ちが残っているものだなぁと我ながらびっくりしました。年を取るのは体からですね。体が元気なうちは、過去も現在も精神は自由に行き来できるようです。
「ずーっと読んでいたい」そう思います。恋愛小説ではないです。これがまた面白い。「蹴りたい背中」のような感じです。「若けなぁ。」 そう思う箇所はありませんでした。むしろ、「そうそう」というほうが多かった。
この小説はミステリーではないし、本筋を紹介することとは全く関係ない、著者のもつ恋愛観のようなものに興味を持ちました。「なるほどなぁ」と感心しましたので引用してみます。
”好きという感情には、答えがない。何が解決策なのか、誰も教えてくれないし、自分でもなかなか見つけられない。自分の中で後生大事に抱えてうろうろするしかないのだ。
好きという気持ちには、どうやって区切りをつければいいのだろう。どんな状態になれば成功したと言えるのか。どうすれば満足できるのか。告白したって、デートしたって、妊娠したって、どうれも正解には思えない。だとすれば、下手に行動を起こして後悔するより、自分の中だけで大事に持っているほうがよっぽどいい。(P208)”
ふーむ。そんなことを高校生のころから考えているのですね、女の人は。すごいです。この小説で「ちょっとなぁ」と思ったことがあるとすれば、男子生徒の考え方です。私も(一応)進学校の高校に通っていましたが、こんな「大人」に考えるひとはおそらくいなかったでしょう。一人二人はいたかもしれないけど、例外だろうなぁ。そこが、また、女性の考える「理想的な普通の男子高校生」という気もしなくはないですね。
1600円で、こんな素晴らしい気持ちを獲得できるのですね。ちょっと驚きました。