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シリコンバレー精神

梅田望夫
ちくま文庫 640円
お勧め指数 □□□□□ (5)

 シリコンバレーで働くうちに自分が変わっていくことに気がついた。その変化を手紙という形で日本の雑誌に連載していた著者のエッセイ集。内容は技術というより、シリコンバレーの内側の雰囲気をそこで働く人との接触によって描いたものである。何より、日本語が読みやすい。
 著者はコンサルタントとしてシリコンバレーで働くうちにその町がたまらなく好きになり、現地で会社を興した。ネットバブルとよばれた2000年前後を現地で働くことで体験しているので、金融の数値やニュースなどを総合した「外側」からの観察ではない。その情報はネット関係者ではない私にはどうでもいいことに近いのだが、社会が変化していくなかで自分を見つめる著者の姿勢に憧れるものはある。

"相手は「お前は何をやっているのか」「お前のアイディアはなんだ」「お前の価値はなんだ」「お前は今まで何をしてきて、これから何をするのか」、先を急ぐように、私という「個人」を引っ張り出そうとするからであった。”

 会社に所属する一人としての自分の役割を求めようする私には、ちょっとひるむ環境である。また、本書の中に、ゴードンという人の会話のなかに、はっと気付かされるシーンがある。

”「これで会社を辞めて一人でやっていく権利ができたよ」と何気なく彼に話した。その時、ゴードンの表情が大きく変わった。」「そうだんだ。何でも何でも、すべては個人の中から生まれるんだ。会社からじゃないんだ。価値を生み出すのは会社ではなく個人なんだ。日本人でそういうモノの考え方をするヤツに初めて会ったよ。」彼は急にまくし立てるように話した。”

 人が集まって価値をつくる事が「大切」なものだという考え方をしてきた。もちろん、その通りではあるのだが、それは組織の傘の下にいないときをさすのであって、組織の中で団子になって生きていくことはないのだ。集まってするからこそ「お前は何ができるのか?」が大切になるのだ。決して「比較により自分のポジションを確認する」ことが目的ではないのだ。
 もちろん、この生き方はユニバーサルなのかどうかはわからない。シリコンバレーでは大切だということだ。日本においてどこまで意味があるのか、ケースバイケースとしか言い様がない。とはいえ、あなたはどうしますか? そういうメッセージであるようにも、私には思える。


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