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乗っ取られた聖書

秦剛平
京都大学学術出版会 1890円
お勧め指数 □□□□□ (5)

 秦さんの新しい本がでたので、早速購入。しかし、このジャンルの本は一体だれが読むのだろうと頚を傾げたくなるのだが、日本語でしかも一年に1冊くらいのペースで出版してくれるのだから日本の普通の人も物好きかおおいなぁ。真剣にキリスト教を信仰している人はまず買わないだろうし、かといって巷で話題になっているわけでも、ヨーロッパのようにキリスト教文化の影響を日々濃厚にうける生活をするわけでもないのに。

 今回は「七十人訳」と言われる聖書がどのような背景で成立したのかについて解説してくれている。しかも、崇高な理念や啓示が要因にあったなどという眉唾な理由ではなく、アレキサンドリアの町でユダヤの人とギリシャの人との社会的な問題が背景にあったという「現実的な」理由を紹介してくれている。彼も大変だったんだなぁ、とにおわせてくれるので古代ローマ世界を想像するうえでいろいろ勉強になる。代替において、古代という昔の人が、しかもマジ信仰の世界の人という人たちを想像するのは不可能に近いのだが、秦さんのように「かなり現実っぽい、そして人間くさい」人たちの生活を語ってくれる人がいると、古代ローマに興味をもっているひとは大助かりですね。

 で、結論はこの本を読んでいただくとして、まぁ、結果的に歴史的に正当と考えられてきた「理由」というのは、やっぱり「ストーリー」として面白いものが選択されていることが分かった。現実というか、現実的な理由だと「しらけちゃう」のでしょう。人間ならば仕方ない。背に腹は代えられないという理由であっても、あとから崇高なしかも興味深い理由で飾り付けられ、ちょっと言い話になったものが歴史的な事実として残っていくのですね。七十人訳の成立を題材に、さらに歴史を面白いなぁと感じるようになりました。

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