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須賀敦子全集 第一巻

須賀敦子
河出文庫 950円
お勧め指数 □□□□□ (5)

 須賀敦子さんの全集が文庫本で刊行されはじめた。1巻目は「ミラノ 霧の風景」と「コルシア書店の仲間たち」が中心である。両方とも文庫本で一度読んでいるのだが、一冊1000円だし、きちんと全部読んでおきたい作者のでまた購入してみました。

 須賀さんの文章はすごいのです。私は文学など学問に成りようがないと思っている人間です。音楽とおなじように文学ではなく文楽(ぶんがくと発音したい)とするべきだと思っているくらい。でも、須賀さんの文章は「文学ってあるのかも」と思わせます。表現がスゴイのです。

 表現が「例え」だと思っている人がいますよね。仰々しい飾りをわんさか文章にのせて「なになにのように」とする人。ああいうのは大嫌いです。わたし、あれが文系の人がやることだと思っていました。でも、須賀さんの表現は違いますね。何を書く、何を書かない。そして、視覚的に最小限にそえられた比喩があって、それで「ぐっとくる」文章になっています。感情が伝わってしまう。そういう文章なんです。言語能力というのは、こういう風に言葉を操れる人なんでしょう。だから、ひたすら勉強になります。私が体験もしたことない時代と国と人の行動を、もう知り合いのように感じさせるエッセイばかり。

 ちなみに、解説を池澤夏樹さんが書いていますが、この解説も感心させられます。なぜ、須賀さんの作品がしっとりとして、最後には物悲しいのかその原因が分かります。それは、自分の青春時代の仲間を、その人たちと一緒に生きた日々を数十年たって振り返るからです。時代も人も思った方向には動かない上、自分たちも歳をとっていく。だから、物語の最後はなんとなくたそがれてしまう。それをある種の感情を抱きながら読む。そういうからくりなのだという。確かに。


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