マゼラン|アメリゴ
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ツヴァイク ヨーロッパから南アメリカをまわりマゼラン海峡を経て太平洋を渡り、フィリッピン、アフリカ、そしてヨーロッパへ至る世界一周に初めて成功した人の物語。 マゼラン海峡、マゼラン星雲という名前は子供の頃から知っているが、マゼランについての伝記は読んだことがない。なんでもそうだが、世界初のことをするのは「死ぬほど」大変なのだろう。そう、漠然と考えている人ならば、この本を読んでみる価値はある。英雄を仕立て上げる冒険活劇がそこにあるわけではないが、普通の人を率いて「抽象的」にしか説明できない偉業を成し遂げるための一例が見て取れる。目的に対してどのような技術、知識、行動パターンを身に付けるべきか、どのように機会を待つべきか。どうやって一緒に行く人を束ねていくか。とはいえ、読んだところでとてもマネできないのではあるのだが。 ツヴァイクの記述は一人称なので、ドキュメンタリーのナレーションのような物だと思えばよい。解説ではあるのだが、ある出来事の原因(過去)と結果(未来)とを繋ぎ合わせてくれるヒントをくれるので、推理小説のような快感はないかもしれないが、どの時点でもナルホドと思わせてくれる。主人公の視点から離れ、その時点での世界情勢の歴史における意味を教えてくれる方法が上手である。言ってみれば、塩野七生のローマ人のような感じである。いや、実際はその逆ですが。 読むだけならば30分程度の苦労の連続だが、想像すれば長い期間の我慢の末マゼラン海峡を発見し、そこを通過する。そして、太平洋へ出る。生き残った人の手記が元になっているとはいえ、ツヴァイクの想像力には頭が下がる。素直に海峡が浮かぶ。パタゴニアの風景などろくに見たことがないのに、感動的な情景が浮かんでくる。 世界についての新しい知識がざくざく集まってくる時代、その冒険の最前線にたつのは面白いだろう。けれど、実際は飢餓や死と隣り合わせ。人の感覚に対して両極端な世界はゆっくりと生きていくのになれてしまった人には本での物語として読むほうが楽しいでしょう。 もう一人のアメリゴについては短い歴史的勘違いの説明。アメリカ大陸はコロンブスが発見した。おそらく誰でも知っている。しかし、アメリカ大陸のアメリカは「アメリゴ・ベスプッチ」に由来しているということを知っている人もいるだろう。ではなぜ、「アメリカ」であって「コロンビア」でないのか。アメリゴ・ベスプッチはたった30ページ程度の新大陸の話を書いた作者である。冒険なんてしていない。その理由は、いろいろな勘違いと偶然が重なって「新世界=アメリゴ」ということになってしまった。当時の本の編集とその売れ行きが、アメリゴが紹介してくれた新大陸、という考えを世の中に広めてしまった。当時だから、訂正なんてできない。その、一風変わった歴史について短く解説してくれている。
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