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国家の自縛

佐藤優
産経新聞社 1500円
お勧め指数 □□□■■ (3)

 インタビュー記事をまとめている。ロシアや国家、外交についての考え方を語っている。『国家の罠』と同時代のものなので、その本ではよく分からなかったかもしれないことを補ってくれている。インタビューアーもその道の人なので、素人の私でも全体をつかめることができたと思わせてくれる。

 佐藤優の発言には感心する。それは、一貫した発言の裏にはきちんとした論理・価値が構築されていいること。この人の発言や行動はそれにしたがってのものであると確認できるので、あった事もない人だけど「この人の話は聞いておく価値はある。他では聞けないだろうか」と思ってしまう。行動原理が明確でぶれない人は誰であっても尊敬してしまう。若い頃から深く思索してきた人なのだろうか。神学が専門なのだから、本を読んだり考えたりという大学生活だったのだろうか。この本にも同志社の頃の話が少しでていたが、現代の理工系の研究室しから知らない私には想像しがたいので、結局どういう生活だったのかはわからない。

 佐藤さんはことあるごとに「国益」という。外交官なのだからそうだろう。ただし、本心からそういう発言がでているのだろうか。

 チェコ人ができる時にはドイツ人を敵とする、「敵のイメージ」があり、ポーランド人が形成される時にはロシア人を敵とする、「敵のイメージ」があるんです。ロシア人がロシア人だという意識を草の根から持つのはナポレオン軍との戦争を描いたトルストイの『戦争と平和』が流行ってからです。ロシアではナポレオン戦争を祖国戦争と呼び、第二次世界大戦を大祖国戦争というんですね。「敵のイメージ」ができることによって民族ってできてくるんですよ。  中国で今回初めて、内陸部を含めて本格的な産業化、近代化が始まった。その中で日本は「敵のイメージ」を付与されてしまっているように私には見えます。だから中国との関係はなかなか良くならない。

 外交官ならば、他国と接しているわけだから日本を意識する。相手がODA援助対象国でないなら、常に駆け引きがあり失敗して日本が損することになった経験をもつ人も多いだろう。となると、それがきっかけで「国」を意識する。日本で普通に生活しているかぎり、敵のイメージは外国にはならない。それは競合組織か同じ組織の上司、部下、同僚、あるいは恋敵くらいものであろう。だから、間違っても国益という発想はない。外交官でつばぜり合いをするくらいに外国とやり合った人ほど「国益」を考えるようになる。となる、まるでドメスティックな人の口からでる「国益」ほど怪しいものはない。それが、政治家かなり役人なりマスコミなりの発言を評価をするリトマス試験紙になりうる。

 しかし、この本を読んだ役立つことは日々の生活ではほとんどない。それであっても、なにか勉強した気がするので佐藤優の本が好きなのだ。



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