面白かと言われれば、地味に面白いとこたえる。その味わいはこの本の登場人物ぐらいの年齢が必要なのだろう。30も後半になれば。
この小説、いってみれば「夜ピク」なんだと思う。やっていることは同じなんじゃないかとも思う。ただし、中年に手が届く年齢になると高校生と同じように学校中心や恋愛中心に感心が限定されるわけではない。それに、未来が開けているという感覚もなくなり、どう過ごすかという惰性延長的なことに興味がうつるということもある。人生って不可逆現象なんだという当たり前のことにどう対応するかに感心が集まってくる。ただし、人間の意識は連続なんだから一皮むけば夜ピクのときと同じようなことを結果的に悩みつつ楽しんでいるところがバレてしまう。ビールがうまく感じる人には、夜ピクはまぶしすぎるだろう。こちらの方が自分たちの身体とマッチするだろう。
それにしても、恩田陸は普段どのようにして思索しているのだろうか。小説中の登場人物の無言の思索は作者のものだろう。その中には日ごろ私ですらぼやっと考えるような内容が書かれているところをみれば、著者もある時期いろいろ考えたのだろうと想像していまう。あるいは、何かの本で読んだものをとってつけただけなのかもしれない。それでも、あぁ、わかるわかる、と感じながら読み進めることになり、小説を読んでいるうちに知らないうちに自分についてあれこれ考えていることに気付く。なんなのだろうか、この面白さは。
だからこの小説はミステリーでもエンタメでもないような気がする。恋愛だのなんだのの小説でもない。著距離を歩くときにぼやーと自省してしまいそうな、またその媒介となりそうな分野のもの。変に一人旅行に出かけて考えを整理するより、この本を読んだほうが手っ取り早いような感じがする。