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木洩れ日に泳ぐ魚

恩田陸
中央公論新社 1400円
お勧め指数 □□□□■ (4)

 またか。また、兄妹の話か。異母兄妹でないだけいいか。
 書き出しから引き込まれたがしばらくして小説の全景らしきものが浮かんでくると、この世界も恩田陸のものだなぁと思う。
 『夜ピク』のような明るさや、『黒と茶の幻想』のような暗さはないのだが、初夏の地中海のような気分はするはずもなく、晩秋の東北のような感じがする。トーンが灰色から白というものだ。
 とはいえ、この悲しみとも痛みとも思えない雰囲気のなかで、主人公の女性が一人考察する過程は恩田陸ならではだ。
 こんなふうに考察する人って、世間にどのくらいいるのだろうか。
 一人で自分の生活に関わることを考える場合、言葉と論理を積み重ねていくものなのか。すくなくとも、自分はしない。信じがたいくらい長時間考察しないといけない。
 小説の主人公がそれをするのならば、すくなくともそれ以上の考察を著者はしたわけだ。ならば、著者は普段からこんなふうに考え事をするのかもしれない。
 自分の過去と照らし合わせてみても、数学の問題に取り組んでいるときでも、そんなに考えないような気がする。

 一人で考える。あれやこれや考える。そういう過程が面白い小説なのだから、映画や演劇の題材にはならないだろう。小説ならではの面白さである。

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