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養老訓

養老孟司
新潮社 1200円
お勧め指数 □□□□□ (5)

 しばらく養老先生の本は出版されないのかと思っていたら、店頭で見かけたので買った。どうやら講演をおこしたもののようだ。

 講演を聞いている人には、なぜか苦虫をつぶしたような表情のじいさんがいるそうだ。みんながわらってもぴくりともしない。なんで、いるんだろう。そういう人。講演だけでなく、社会にはそういう人結構いる。だから、私は電車などではじいさんからは「なるべく離れる」ようにしている。

 そういう人の不機嫌の原因は、私の想像だが、自分が尊敬されていないからだと思う。赤の他人に尊敬を求めるのはかなり苦しいことだと思うのだが、しかし彼らは「年上なのだから尊敬しろ」ということを不機嫌な表情で私たちに迫っているのではないかと思うのだ。

 その種の不機嫌さは、じつは老人に限らない。自分の周りにいるひとを「奴隷」と勘違いしている人もけっこういるのものだ。この本には、こんな例があった。グリーン車でパソコンをつかっていたら、車掌経由で「キーボードの音がうるさい」という非難があったそうだ。

 世の中は思い通りにならないもの

 ほんとうにグリーン車が無音のような静けさだったらどうでしょう。自分の会話がみんなに聞かれそうだから嫌かもしれません。そんなふううにめぐりめぐって、自分も辛くなるはずです。実は一番快適なじょうたいというものは、たいていの人で違わないものです。

 私は電車で無闇に「うるさい」と怒る人については、仕事がうまくいっていない人だろうと思うようにしています。仮にうまくいっていたとしても、それはたまたまであって、「無理して仕事をやっている人なんだな、気の毒だな」と思うのです。

 遠慮してそういているのかもしれないけど、おそらく、他人からうるさがれている人が怒りやすい。その逆ではない。この話の類はすべて「余裕のなさ」が原因なんでしょうね。世の中、そういう人が多いのならば、世の中には不幸な人があふれているということです。まぁ、離れているに限りますな。

 実に厭世的な気分になってしまうこともあるのだけど、その時はこう思うことにしている。

 なんだかんだいっても、死んでしまうんだからいいじゃねぇか。今の社会は人が作っているのではくて、石油が作っているのだから、石油がなくなれば消えてなくなる。どんなに自分が成功しても、石油が消えれば消えてなくなる。

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