ぼくの旅の手帖・四季の旅・音楽への旅(森本哲郎 世界への旅)
『ぼくの旅の手帖』『四季の旅』『音楽への旅』の三冊が1冊になっている。これは全集のようなものを意図したシリーズのようで、こういうシリーズがあることをぼくは知らなかった。3冊買うよりも安いだろう。マーケットプレースでは送料がネックになるから1冊になっていると助かる。ただし、文庫本や全集だと表紙や口絵や扉、挿し絵のようなものがないというデメリットがある。森本哲郎の本はその写真も味わいがあるので、できるならば全集は避けたほうがいいかもしれない。まぁ、これは本棚や購入可能な本があるかどうかの問題であろう。 音楽への旅は、音楽を主題とした旅の思い出である。音楽を言葉で語るのは無理である。だから、結果的に森本エッセイのいいところが出せずじまいで終わっているなという気がした。また、四季の旅は日本が主題になっているため、ぼくが森本エッセイに求めるとは微妙にちがっている。結局、3作のなかでは僕の旅の手帖が気に入ったものだった。 パリのカフェに席をとり、往来の人を眺める。何かを探すでもなく、歴史や芸術に思いをはせるわけでもない。どういうわけか、ぼーっとしてしまう。何をするわけでもなく眺めた風景や聞こえた往来の音は、緊張しながら記憶に刻もうとしたものよりも「より心に」残るそうである。無防備で心を街にさらしていることが理由かもしれない。 パリのカフェの話から、イタリヤ、ギリシャ、イラク、アフリカ、中米、アメリカと世界中旅した場所での思いでが語られる。読んでいるとその場の風景などが思い浮かぶ。しかし、この読んでいる行為そのものは、パリのカフェでぼーっとしているとき森本の心に浮かんでいるものなのかもしれない。そういうモノを無意識に楽しむ。いわゆる夢。 |
