日経サイエンスでの対談記事をまとめた本。昔、養老孟司が同じような趣旨でやっていたはずだから、茂木健一郎は養老孟司の後としてはふさわしいだろう。
こういう対談記事は科学の最前線を「知さらせてくれる」ことよりも、面白いなぁと普通の人が楽しめるように、対談者から話を引き出すことが大切になる。知識を増やすことが目的なら記事を読めばいいし、ネットを調べればいい。それでかなりのことは手に入る。しかし、それはそもそも興味を持った人だけがやること。新規参集者を引き込まないと科学を楽しめる人の数は増えない。日経サイエンスは一般の人向けの雑誌だから、普通の人が科学に興味をもってもらうこと、現代人のもつべき教養の底上げを支援することが役目になる。だからこそ、「面白いなぁ」という記事を対談として入れてある。そう記事の意図を想像してこの本を読むと、なるほど上手な話のもっていきかただと感心してしまう。
このような対談の場合、話の聞き手は茂木健一郎のように「軸」を持っているほうがよい。茂木健一郎ならば「脳」。だから対談相手の話を理解する軸は「脳」になる。切り口がはっきりしている。だから、話が迷走することはない。また、読者誰もが茂木健一郎には「脳」を期待するので、安心して話を追うことができる。そして、対談相手の分野はできれば脳からすこし離れた分野のほうがよい。茂木が話を聞きながら脳やクオリアとの接点をさがし、思いがけないところで繋がることがあれば、茂木も読者も「おぉ」と一緒になって楽しめる。
これが、アナウンサーのような「何も知らない普通の人代表」だと、なんだかよくわからないまま終わってしまうことになりがちである。この本は日経サイエンスなのだから、手によって読む段階で読者にはある程度のスクリーニングがかかっている。だから、何も知らない人代表のようなインタビュアーではダメなのだ。
どの対談相手も面白いのだが、ぼくは動物の解剖をする人と宇宙論の人との話が気に入っている。すこし勉強して見たいなぁと思わせてくれた。だから、この本の目論みは成功しているし、ぼくも気分が良くなったのでこの本は「買い」である。