林信行さんの新刊がでた。しかもグーグル。まだマスコミに紹介されていない新しいことはあるんだろうか。
林信行さんの最近の本はもれなく面白い。アップルの本が多いけど、今度はグーグル。グーグルについては多くの本が店頭に並んでいるけれど、この人ならばちょっと別の見方を教えてくれるだろう。この本はレジに並んでいる間の衝動買いなのだけど、とはいえこのこの程度のことは手に取る瞬間に考えた。
が、読んでみたら普通の本だった。グーグルの凄さ、グーグルの立ち位置の紹介。この内容は梅田望夫さんの役回りだろう。なにも林信行さんが出版することない。本人の動機で書かれたのかもしれないが、出版社の強い勧めもあったのだろう。
グーグルがつぎつぎとリリースするサービスにはお驚くし、感心もする。グーグルという会社の自由で闊達な雰囲気は、シリコンバレーを体現していると思っている。シリコンバレーなんて行ったこともないけれど、そういうステレオタイプのイメージをグーグルに抱いている。この本もだいたいそれを裏打ちしてくれている。
振り返ってかんがみるに、それがグーグルとぼくはどんな関係にあるのかといえば、まったくない。ぼくは単なる一ユーザーである。グーグルのおかげで情報検索の恩恵を受けているは事実だが、文明の利器と言われているものの一つとしてであり、グーグルだけに恩恵を受けているのではない。電気照明やガソリンエンジン一つとっても、グーグルからよりは恩恵を受けている。
だからグーグルを礼賛するとしても、自分から遠いものを褒め称えるに過ぎない。ミスユニバースは綺麗ですねぇ、という感想と同じものである。だってそうだろう。賢い人たちが、自由に興味あることだけに作業したら、そりゃ凄いものができるだろう。それはそれで感心するが、自分と無関係のものに興奮することはない。だから、この本に紹介されている内容も「ふーん」程度しか興味が持てない。そんなところも、この本がもうひとつだと感じた理由なのだろう。
グーグルの凄いところは、あっという間に成し遂げてしまうところだ。これが50年かかっていいのならば、他の誰かがやってもビックリしない。グーグルは、ある種の「爆発」現象なのだ。今はインターネットの時代だし、Linuxという成功例もあるのだから、ネット上ならば、その成果はこれまでと比較して短期間に成立する。実際できることは凄いけれど、魔法ではない。
この本を含め、多くのグーグル礼賛者の多くは、この状態が時間的に継続するものだと思っている。少なくとも、読者にはそういう印象を与える文章を書いている。しかし、それはない。「爆発」なのだから、燃料の消費もバカみたいに早い。出てきたのも突然ならば終わるのも突然だろう。今の延長線上にある「やれそうなこと」が尽きたとき、気がつけばいなくなっているのかもしれない。
悪口として言っているのではない。本来ならば自分一人の人生では目撃できなかったことが、数年で体験までできてしまうのだ。実に愉快なことである。しかしだからといって、人の一生に本質的な変化があるわけではない。すべては「便利になった」ということで括れてしまうインパクトしかない。
グーグルについて、ぼくが注目しているのは、いつ質が転換するか。今は「多方面」に手をだして、それらのうちいくつかがばか当たりしている状態である。しかし、それらの作品は、これまでのグーグルの作品の隣に陳列できるものである。つまり、違うものではない。ではいつこれまでの作品の隣に陳列できないものがでてくるのだろうか。
読みながらそんなことを考えた。