極東ブログで書評が掲載されていたので、そのままアマゾンで購入した。
2006、2007と原因不明のまま養蜂業者が育成しているミツバチが大量に死んだ。昆虫の世界でいう数の感覚は、ほ乳類の場合の数とは何桁もオーダーが違う話なので、億匹死んだといっても絶滅とかそういう話ではない。しかし、養蜂業者が廃業に追い込まれることが目立つ数ではあるそうだ。とくに、アメリカやヨーロッパではその被害が著しいということだ。
本書のタイトルへの回答は、はっきりとは紹介されていない。要するに本当のところはわからないのだと思うが、どうなんだろうか。いくつか候補はあげてられているが、なんとなくうやむやに終わっているぞという印象をもった。もっとも、正解を求めて読んだわけではないから、どうでもいいことなのだけど。
ふーん、じゃぁ蜂蜜の値段が高騰するのだろうかといえば、そういう話で終わらない。ミツバチが死んだので蜂蜜の値段が高くなりました。そういう話ではない。
農薬や抗生物質たっぷりの中国産蜂蜜を食べたくない人には蜂蜜の値段が気になるかもしれないが、養蜂業者の恩恵は蜂蜜だけでない。普通の農業も多いに受けているのだ。それは「受粉」のために。
風媒花や虫媒花という言葉を小学校でならった。ハチが花の蜜を吸うために花を行き交うときに受粉するというあれである。現代では意図的に受粉作業を農業にシステムとして組み込んでいる。もし、ハチがいなくなったら人が受粉作業させる必要がある。しかし、そんなことは大規模農業では不可能なのだ。人が制御できなくらい大規模化させてしまっている。この意味で、ハチがいなくなると、オレンジやアーモンド農家が間接的に被害を受けてしまうのだそうだ。
欧米の科学読み物は本当に構成がしっかりしている。話の発端、扱う分野の科学的な基礎知識、社会における位置付け、そして、その周りの分野との関係と未来予想。こういったものをきちっと書き込んでいる。ハチの大量死についての本であってもしっかり書かれている。だから、養蜂業者の社会的な役割やミツバチの生態や害虫の問題、そして、中国における関係する問題点まで知ることが出来る。まことに便利である。だからとって、その挿入部分が常に面白いわけではないところに問題はあるのだが。
結局、これだという原因は確定されていなく、いろいろな小さな問題の連鎖によってハチが大量死してしまうところが正解のようである。風が吹けば桶屋が儲かるような長い連鎖ではなく、3段階くらいの問題である。
基本的には、商業主義の都合に合わせるために自然のシステムに無理を加えようとして、それが原因でハチのシステムが崩壊してしまったということなのだ。ダニだの農薬だのの問題がないわけではないが、より大量に「儲ける」ための工夫が、ある閾値を越え、ハチのシステムが維持再生していくのに必要な連鎖が切れてしまったのだ。そしてあるときにを栄えにしてばったりとハチの数が激減してしまうのだ。一端連鎖が切れてしまったものは、人が反省してハチのおかれた状況をもとに戻してもシステム自体が再起動しないのだ。
犯人は誰だ。そういう発想をしている限りこの問題は原因すら分からないだろう。関係者全員がそれぞれ悪いが、それらのタイミングによってはトンデモなく悪いという結果を生む。自然界の非線形性を見せつけられた気がする。推薦の言葉として福岡伸一さんが「動的平衡」という概念をつかってこの話の解説を試みている。この概念を知れば一発で理解できる出来事なのだが、普通の人がどれだけ理解してくるのか心もとない。だからだろうか、福岡伸一さんは動的平衡を扱った新刊を出版されるそうだ。