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船に乗れ!〈1〉合奏と協奏

藤谷治
ジャイブ
お勧め指数 □□□□□ (5)
購入店 bk1.co.jp

 チェリストの話だというので読んでみた。帯には豊崎由美さんが『一瞬の風になれ』と『のだめ』を引き合いに出してこの本を推薦している。だぶん面白いのだろう。この本はミステリーチャンネルの月刊ブックナビという番組内で紹介で知った。知らなかったら店頭で目に止まらなかったかもしれない。本の紹介という好意は、その本の販売を促進していることは間違いないようだな、と自分の行動を観察して納得した。 
 まだ一巻しか読んでいないので、全体像はわからない。とは言え、どういう話ですかと問われれば、恋愛小説ですねと答えるのが適当だろう。それも、憧れの人に声をかけられず、ドキドキしたり、がっかりしたり、喜んだりという心理を楽しむ本。え、チェロの話はないんですか? もちろんそれが物語での出来事の必然性を与えている。ただし、音楽って素晴らしい、なんてことを訴えるのが主題ではない。
 文章や表現や物語が面白のか。そう問われてもわからない。ただ、こういう話を読めば想像力なり経験なりでドキドキ感を思い出せる人には良い本だと断言できる。

 ぼくはいいオッサンになる。だから、こういう本を読んでいていいのだろうか、それで楽しんでいていいのだろうかとフッと我に返ることがある。なにやっているんだろうと。もっと、今後の自分に関わるようなことを読んだ方がいいのではないか。そんな焦りのようなものも感じる。
 本を読むことは勉強ではない。それはよくわかっているけど、子供の頃からの思い込みはなかなか消せない。勉強になる本はつまらないはずだと心の底では感じているから。
 そんなことを考えていると毎日が灰色になりがちである。だから少し考え方を変えて見る。例えばこういう具合に。
 今後の自分の生き方を考えるために音楽を聞いても仕方ない。全く意味はない。なのに、音楽は聞いてしまう。同じように、今後の自分を考えるために、ワインを飲む人もいない。音楽もワインも、今生きていることを楽しむために取っている。ならば本も同じであっていいのではないか。
 この種の本は、今の自分の生活がどうであれ、今後の自分の生き方に参考には無関係であれ、読んでいるときに「うわー、面白い」って言えればそれでよいはずだ。
 ならば読んでいる最中は、自分の視点を作中の視点に完全に重ねてしまうほうがよい。主人公になり切って読むのだ。そして今とは別の世界で時間を過ごすこと。それが小説を読んでいる目的なんだろう。
 そうおもってこの本を読んで見ると、なんだかもう一度高校生になったような気がする。嘘ではなく、人生のレベルで得をした気がする。そうか、こうやって本を読むのか、と今更ではあるが、また一つ本の読み方が分かった。
 ちょっとしたことかもしれないけど、この本を読んだことによって小説との距離の取り方が自分なりに会得できてしまった。ありがたい。
 

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