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洞窟の壁画

H.キューン
山本書店
お勧め指数 □□□□■ (4)
購入店 日本の古本屋

 山本書店の本に、先史時代の洞窟の壁画についての本がある。別の山本書店の本の後ろに宣伝が載っていて、なんだか気になったので購入した。日本の古本屋で1500円だった。届いた本は、カバーこそ付いているけどまさに「古本」という感じもので、神経質な人ならば手にとらないだろう。もっとも、ぼくは全く何ともないが、ベッドの上で読むにはどうかなと思うかな。ただし、本文には書き込みなどなく、読書にはなんの問題もない。こういう本でも1500円で売れるんだなぁ、ぼくは買うけどね。とまぁ、久々に古本の不思議さを感じた。
 内容は、ラスコーやアルタミラ洞窟にある壁画についての本で、ドイツの学者が一般の人に向けて書いたものである。専門書ではないから、ぼくでも寝っ転がって読める。絵についての解説ではなく、どちらかといえば壁画のある場所へ行く旅行記だと思えば良い。
 第一次大戦後と第二次大戦後に、ドイツから南フランスやスペインへ行くことがどんなに珍しいかが意図せずして描かれている。壁画あある洞窟はそもそも辺鄙な場所であるために、たとえばスペインの洞窟へ出向いたとき、ドイツ人などはその村の人の興味の対象になってシーンがある。「わざわざドイツからいらっしゃった」という形で歓迎?されている。ぼくからみれば、同じヨーロッパ人なんだからそんなに驚くことはないと思うのだけど、マスコミも交通手段もたかが100年前なのに発達していなかったのだと、期せずして思い出して驚いた。現代の生活が石油に支えられた実に危うい物なのだと再度考え込んでしまった。
 壁画の解説書がなぜ山本書店で刊行されているのか、少し分かったことがある。それは、この人がある壁画を見に行った場所で案内をしてくれた司祭との会話にあるのかもしれない。
 著者は壁画が人間の紀元、芸術の紀元に迫ろうとしている研究者で、人類学についてもよく知っている。一方、司祭はキリスト教の新約・旧約の世界における創造説に信頼を置いている。その司祭が著者に対して人の紀元についてやたら質問してくるシーンがある。人はサルから進化したのか、という問いである。著者は対決をしたくないでの話を反らしていたのだが、氷河時代(あるいは旧石器時代)の壁画を前にして、司祭に人類史を語り出す。もちろん、著者はキリスト教圏の人だから聖書については詳しく知っている。だから、相手に分かるように人類史を説明しているのだ。そして、これがかなり見事な説明になっていると思う。おそらく、この辺りが山本書店としての発刊を実施した理由なのではないかと勝手に創造してしまう。
 1960年頃発行の本で、内容は1900年初頭のことが描かれている本を読んだことはあまりない。ただ、表現などが少し古いかなと思う箇所があるけれど、話の進め方は今でも十分で、ぼくでも興味深く読める。本はぼろぼろで、写真などもキレイなものではないけれど、読む価値がある本である。現在書店に並んでいるものよりも、古本としてどこかでひっそり売られている本の方が、ぼくにあっている本としては多いのかもしれない。
山本書店の本は、著者ではなく出版社の名前で本を選んでいけるので、埋もれた本を探すための良き指標になってくれて、ずいぶんと助かっている。

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