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新・井沢式日本史集中講座―1192作ろう鎌倉幕府編

井沢元彦
徳間書店
お勧め指数 □□□□■ (4)
購入店 八重洲ブックセンター

 年末の発行で徳間のシリーズが終了したので少し残念に思っていたが、新シリーズとして井沢本が復活していた。今回は鎌倉時代からスタートする。鎌倉以前は古代、鎌倉以後は中世という括りなのだろう。井沢元彦さんの解説がつまらないはずはないので、早速購入し読んだ。
 第一印象。この本はずいぶんと重複が多い。整理されてないない。その意味でスマートさを感じない。一方で、このまどろっこしさは、まさに目の前で話をしてくれているような気分になれる。かぶり付きで講演を聴いているような感じがする。重複するところは大切なところだから、読んでいる間に憶えてしまう。ヒットラーの演説のようなものだろう。ひょっとしたら、このまとまりの悪さは編集側の狙いなのかもしれない。教科書を狙っているわけでもないし、この分野に詳しくない人に読ませるには良い方法だと思う。感心gが薄い人を引き込むには、筋道が分かりやすい話を色々な事例を持ち出しながら、同じことを何度も何度も聞かせることだ。それが手っ取り早い。
 その効果もあって、さすがに言いたいことが飲み込めた。言いたいことがよく分かったし、憶え得てしまった。狙い通りの反応なのだろうか。

 この本で語られていることは、幕府とはどんな組織で、どういう誕生したのか。それに尽きる。このためには、東国の税制について自分に則して想像することが有効だろう。なぜ自分たちで開拓した土地が無条件に他人のものになってしまうのだろうか。どうやったら、守れるのか。開拓した土地が、京都の帰属たちに奪われるのはおかしい。この悔しさからどうやったら抜け出れるだろうか。
 こんな問題の解答として鎌倉幕府が成立したのだということが分かる。1192を作ろうとしたのではなく、自分で作ったものは自分の物だ、という当然の権利を主張しただけなのだ。それが革命であり、当時の東国の人の気概を吸い上げて鎌倉幕府ができていく。
 この本を読んだおかげで、「幕府」というものがよく分かった。幕府とは、軍隊の前線基地である。戦争をしているときに、いちいち母国に問い合わせをしていられない。軍隊の隊長が全権委任されている。事前報告なども必要ない。となれば、戦闘状態にいるかぎり、軍隊だけで閉じた集団となれる。この仕組みを鎌倉武士の集団に適用したのだ。征夷大将軍に任命され、鎌倉に幕府を立てれば、そこで行われることはいちいち朝廷にうかがいを立てる必要はない。それは税制についてもそうで、だからこそ自分たちの土地を自分たちで治めることができる。
 幕府とは、戦闘状態における臨時独立政府ということになる。そして、とくに敵がない状態でも幕府の存続を許すならば、なんてことはない、事実上の独立政府になるのだ。仕組みが分かれば実に簡単なことだ。
 井沢元彦さんの本は、歴史という分野においてこういう納得の仕方をさせてくれるから好きだ。次巻の出版が楽しみである。

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