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たいした問題じゃないが

行方昭夫
岩波文庫
お勧め指数 □□□□■ (4)
購入店 八重洲ブックセンター

 英語の長文読解で読んだようなエッセイを再編した小冊である。岩波文庫の新刊だけど、中身は100年前のもの。いいものは長生きするのだ。それも、ただ長生きするのではなく、それを初めて読んだ人の喫緊の問題がその本で扱われていたりする。今読んでも新鮮とは、単に自分が不勉強だと言うのと同時に、時代が違っても、多くの人が抱えている変わらない問題を扱っているということだ。

 この本の内容は難しくない。Oヘンリの短編は小説で、この本はエッセイなのだが、おなじような印象を受ける。日々の生活で「そうそう、そういうことあるよ」ということが話の発端になっている。高所から訓示を垂れる本ではない。だから寝っころがって読んでもいい。


 読んでいて、こういう内容が大学受験の試験問題だったのかと思うと、だんだん腹立たしくなる。受験問題というのは、気分よく文章を読めない。内容ではなく、解析をする必要があるから。その文章の内容を自分の問題として考えることなどありえない。さっさと前置詞のパターンや関係代名詞や不定詞の意味を取るように訓練されていたのだ。だからだろう、読み終われば中身は頭から消えてしまう。いや、そもそも頭に一度も入れなかったと思う。こんなに味わい深い、人の世についての見識が書かれていのか。あの頃に我が身に置換えて読んでいればなぁ。

 母国語の人はこういうエッセイをどのくらい読むのだろう。中学高校の教科書に載っているのだろうか。決めの文句などは、だれでも口ずさめるのだろうか。日本で言えば小林秀雄や加藤周一のようなものか。いや、難しい内容ではないから、新聞のエッセイなのだろう。日本語で描かれた新聞のエッセイに、こういう読み物はあるんだろうか。


 せっかくだから、この本で紹介されちた著者のペーパーバックを何冊か購入した。読める時間がどれだけあるかわからないが、ここで買わないと一生読む機会がないような気がしたのだ。通勤時にでも読んでみるか。

 岩波文庫はさすが、というのが感想である。