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メガロマニア

恩田陸
日本放送出版協会
お勧め指数 □□□■■ (3)
購入店 八重洲ブックセンター

 古代遺跡に興味がある。とくに、中東やヨーロッパのものは大好きで、それらに訪れてそこで時間を過ごし、何かを考えるというのがぼくの人生の後半の楽しみでもある。まぁ実際のところ相当難しいだろうけれど。
 中南米の遺跡など、現地へ行くことはそうそう簡単ではない以上、なにはともあれ本を読むことが行動の初めである。写真集やTV番組は、本で仕入れた情報を整理する手段として使う方が良く、最初から映像をみるとどうもその場所の印象が散漫になってしまうでぼくは避けている。映像は自分の中に思い描いた線画に淡く色をつける作業のようなものだと言えよう。まずは、線画が大切。だから旅行記である。
 こんな具合で得た印象を先入観と呼ぶ。そして、先入観を持つことは悪いことだと言われている。確かに、先入観があるおかげで物を見る目が狭くなったり、先入観と違うことを無意識で無視しようとする傾向が人にはある。とはいへ、先入観は使い方によっては「学習の基盤」になるものなのだ。
 先入観を物事を頭にいれるための線画の役割をもたせるには、次のことを熟知していればよい。それは、現実が違っていたら先入観をその場ですぐに書き換えること。間違っていたらさっさと新しい線を引き直せば良い。たったこれだけで、先入観はドグマとはならず、むしろ知識や印象を頭に整理するための使いやすい器になるのである。
 こんな意味から、興味のある場所の紀行文を読むことが好きなのだ。紀行文を楽しく読む最大のコツは、著者の体験を自分の体験のように「感じる」ことである。ありったけの過去の体験をつかって、著者の記述を自分の経験だったかのように勘違いしてしまうこと。上手な紀行文はそれが簡単にできるような配慮がなされているものである。

 恩田陸さんの文章は読みやすい。ならば紀行文も読みやすいだろう。確かにそうだったが、一方で期待外れなところもあった。というのは、思索がないことだ。それに、なんだかよくわからないような箇所が多数あり、想像のしようがないものがあった。あの場所へ行って、この場所へ行った。そういう記述ならば、むしろ無い方がいい。そんなことよりも、旅の途中のフッとしたことを語ってくれたほうがいいのではないかと思ったりした。
 あるいは、目の前に見えているものと頭の中で考えていることに直接の関係はなくていい。見たものを聞いたものをきっかけとして「思索」がはじまるようなもものを期待していた。あるいは、妄想が立ち上がり物語が始まるのでも良い。
 蚊に刺されたといったことは、その旅に同行したような印象を与えてくれる。水曜どうでしょうが面白い理由は、旅の車中でのどうでもいい会話を聞くことにあるのと同じあろう。まるで自分もそこにいたかのような「どうでもいい会話」が聞ける。ただし、これでは読んだ後に何も残らない。エンタメに徹するのならばそれでいいが、この本はどっちともつかずのまま不発に終わってしまったようだ。

 この本を読んで良かったことは、本文中にNHKの『未来への遺産』について言及してくれたところと、森本哲郎の愛読者だったことを教えてくれたところだ。ぼくも大の森本哲郎さんのファンである。その紀行文を読むのが大好きなのだが、なんと恩田陸さんもそうだったとは。なんともうれしい。それとNHKのDVDは早速アマゾンで購入して見たのが、本の中で説明しているように確かに素晴らしいできの番組である。
 とはいえ、どうもぼくの古代史の範疇に中南米は含まれてないようだ。全体的な感想として、どうも中南米の遺跡に興味は持てないままである。