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バチカン

秦野るり子
中公新書ラクレ
お勧め指数 □□□■■ (3)
購入店 八重洲ブックセンター

 最初の数十ページにわたる概要がよくまとまっている。キリスト教の誕生についての古代ローマ、そこから中世への流れ。あっさりと読めて、むしろ驚いた。キリスト教についてのぼくの知識の源泉は山本七平さん、秦剛平さん、塩野七生さんたちの一般向けの本のである。何冊も読んで得たものがこの概要であっさりとまとまっている、とまではいかないが、それでも今まで読んだものを次々と思い起こさせてくれた。著者の説明力に感心する。ここだけでも新書ならば十分にペイしている。

 キリスト教でない人がバチカンにどういう興味を持つのか。いわゆる総本山的なものに対する怪しさと警戒感と、ちょっとした興味というところだろうか。ぼくはこれまえ宗教の教えを信じなければやっていけないほどの不運な目には合わないですんでいるので、バチカンに本気で参拝している人の気持ちは全くわからない。

 東洋から来るお上りさん(観光客)と同じで、美術品や建築が目的である。バチカンが「国」と言われてもピント来ない。これが国です、となるのならばディズニーランドだって国でいいじゃないかなどと不謹慎にも思ってしまう。しかし、そこは純然たる国であり、各国の外交手腕が試される場所でもある。

 へぇ、じゃぁどうやって運営されているのだろうか。その存在そのものが歴史の生き証人なのだから、運営方法は歴代経営者の工夫の産物であるはずだ。どうすれば長生きの組織ができるのか、という興味を片手に読んだのである。

 結局のところ、バチカンも所詮は人がつくった組織であり、なんだか泥臭い世界のようである。とても聖人の集団ではないみたい。まぁ、そりゃそうなんだけど。ということで、2000年を生き長らえた工夫のようなものを知ることはできなかった。

 著者の文章はとても軽く万人向けで、新聞の日曜版のコラムのようだ。