エレファントム
ライアル・ワトソンさんの著者を福岡伸一さんが翻訳されている。なぜだろう。ライアル・ワトソンさんの本は、ものを知らないぼくですら一冊読んだくらいだから無名の人ではない。それどころか有名人である。これまでに何冊も翻訳されている。 とはいえ、2000年以後は出版されていないから、最近はあまり売れないということで翻訳しなくなったのかもしれない。こんなに良い本なのに翻訳されないのはもったいないよ。そういう意味で福岡伸一さんが力を貸したのではないのか。この本の出版社もあまり目にしないところだから、あながち本当かもしれない。 前作『未知の贈りもの』は、茂木健一郎さんの著者で引用されていたことばが印象的だったので読んだのだ。 精巧にできたイカの眼球がとらえる光景は、その貧弱な神経系で処理するには豊かすぎる。イカたちは何か他の大きなものの代りにこの世界を観測するカメラ台なのではないか。 すごい。こんな見方があるのかと共感してしまった。今回も本も同じテーストの内容であるが、著者の回想録でもある。 ワトソンさんは幼少期から青年期までを南アフリカで過ごしている。そのときの不思議な体験がこの本のコアになっている。 アフリカだから野生動物と遭遇する機会は多く、だから自然に動物に興味をもつのだろう。この人は、象に神秘性と威厳を感じたのだ。著者の人生も象への興味がガイドしたようなもので、それは死ぬまでそうだった。こんな生き方を知ると、社会で出世することが目的の生き方なんてくだらないものに見えてくる。 象は5−25ヘルツという低周波の音が出せるそうだ。そんな低い音はとても人には聞こえない。ただし、感じることはできる。また、低周波であればそれだけ音が遠くに届きやすい(パワーがあればだが)。象の集団はこの音を使って、かなり離れた象同士で群れとしての会話をしているらしい。しかも足の裏の感覚をつかって地面からの振動を感じることで通信を行っているらしいことも最近では明らかなったらしい。普通の人が思っている以上に、像の群れはいろんな情報交換をしているのだ。それに情報を交換するからには、像の知性は高く、自意識も強くもっているのだろう。だからだろう、象は絵を書くなどの芸術的な衝動ももっていることが知られている。 こういった象の話と同時に、子供の頃の印象的な出来事を語ってくれている。それは、人がいないアフリカの海岸で象とシロナガスクジラが低周波音を使ってコミュニケーションをしている場所に出くわしたというものだ。内容は聞こえないが、低周波音については感じることができる。2頭の巨大な動物が何かを語っているというのだ。こんな幻想的なシーンを想像したことすらなかった。 人生のガイド役というものは誰にもあるのかもしれないが、こんな人生もいいなぁと感じる。なるほど福岡伸一さんが翻訳するわけだよ。 |
