« 寝ながら学べる構造主義 | メイン | スペイン戦争 »

セレンディピティの時代

茂木健一郎
講談社文庫
お勧め指数 □□■■■ (2)
購入店 BOOKS SAGA 長津田

 通勤の乗り換え駅のコンコースにあった書店でこの本が平積みされているのを見かけた。乗り換え電車までの時間が一分なかったので、これでいいやと思いこの本を購入した。本の装幀、挿し絵は劣悪なもので、普段のぼくならば書店で見かけても買うことはないだろう。ただ、巻末に「文庫オリジナルです」という一文があり、それならばいいかと判断した。最近の茂木健一郎さんはスゴイ活躍をされており、十分に考える時間もないのだろう。さっぱりと良い本が出なくなった。適当な雑誌の連載コラムを集めた新書などもう買うまいと思っているが、書き下ろしならば書きたい内容があるのだろう。締切りのためにやっているわけではないだろうし。面白いかもしれないと期待したのである。

 この本は少年少女向けの自己啓発書である。タイトルからして内容はセレンディプティーについてであり、偶然を許容しよう、偶然を活かそう、自分を変えていこうというような内容である。一応どの読者層にも当てはまるような配慮はされているが、茂木健一郎さんの著作が好きな人でないと受け入れれない本だと思う。茂木健一郎さんの博学(科学、文学、歴史などなど)権威を上手につかった説教なので。セレンディプティーそのものの面白さを解説するような内容ではない。茂木健一郎さんらしい脳科学(ドーパミンだの、偶有性だの)の味付けがしてあるが、それが効果を発揮しているとは言い難い。正直がっかりした。

 茂木健一郎さんの能力(短期間に出版に耐える文章をどんどん書くことができる技術)はスゴイと思うし、大学での研究も普通にやっているのだから立派な研究者であることに疑いはない。科学をベースに多くの分野についての発言ができる人で、一風変わった風貌もマスコミから好かれる理由なのだと思う。しかし、最近は本当に書くものが「つまらなく」なってしまって残念である。茂木健一郎さんの書籍を買うのならば、四年以上前のものか、その時代の内容が再編集されて出版されたものでないと必ず失敗する。同じようなことを言っているからマスコミにもそのうち飽きられるであろう。マスコミに登場しなくなってからの新刊を待つほうがいいのかもしれない。