須賀敦子のフランス
フランスに旅行に出掛けることにしたので、そのまえにこの本を読んでみた。ちょうど『ヴェネツィアの宿』を読んだ直後だったので、その本にあったフランス留学時代の話の引用がこの本に写真で紹介されていて、なんだかうれしくなった。そうか、こういうところに学生寮があったのか。パリにはこれから訪れるとはいえ、とても須賀敦子さんの足跡を訪ねることなどできないので、この本を読んで現地においてイメージを重ねて楽しむことにしよう。 フランスというとパリが思い出され、おしゃれでファッションな街だと連想される。ところが実際歩いてみると、パリは楽しい街ではなく、むしろ最悪かもしれない。とくに中心部は車の騒音が非常に耳に付く。建物が道路を隙間なく囲んでいるから残響のせいかもしれない。ローマやロンドンはこんなにうるさくない。パリを歩くと心理的に疲弊する。だからフランスはパリを中心にイメージしないほうがいいんだろう。 なるほど、この本の表紙は田園である。田舎の緑。ブドウ畑。そういう風景の方がよっぽどフランスらしいのかもしれない。国土の本土はこういう風景なのかもしれない。パリから三十分も電車にるとこんな風景に変わるのだ。建築はさておき、パリの喧騒などはお金をかければ中東にだってできるだろう。しかし、この畑は何処にでもできるわけではない。表紙と口絵の写真を眺めながらつくづく理解した。TGVの車窓で一番よかったのは、中仏から南仏にかけての畑だ。本当に山がない国なんだ。どこまでも畑という風景がことに美しかった。 そんなことを思い返しながらこの本をしげしげ眺めると、なるほど上手に編まれた本だなと思い、旅行を思い出すのであった。 |
