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ルーブル美術館の楽しみ方

赤瀬川原平
新潮とんぼの本
購入店 日本橋丸善
お勧め指数 □□□■■ (3)

 十月に休暇をとってフランスへ行く。目的地は古代ローマ遺跡であるポン・デュ・ガールの大水道橋。とはいえ、当然パリ市内をうろつく時間もとってある。ルーブル美術館で何日か過ごすつもりである。ならばガイド本が必要。

 大きな美術館や博物館で長い時間を過ごすのはなんとも幸せなひとときである。贅沢というもの。とはいえ、ヨーロッパに行くと実際には時差と疲労とで思ったより楽しくない。これまでの経験からそれを身にしみてわかっている。しかし、そこがどのくらい「良い」美術館なのかで帰国後に旅行を思い返すときに違いがでる。全く何も憶えていないのか、それとも不思議と細部が思い出されるのか。

 ロンドン大英博物館には合計二十四回、ロンドンナショナルギャラリーへも二十回くらい行った。そして、そこで過ごした思い出は大げさではなくぼくの一生の宝になっている。思い返せばそれだけ楽しめるし元気がでてくる。実際に滞在した時間以上の時間、思い出がぼくを励ましてくれる。ならば今度のルーヴルもそれらと同じくらい実りのあるものにしたい。

 広い博物館は急ぎ足できょろきょろしてしまいがち。しかもあたふたしたわりにはなんにも記憶に残らない。そういうのは避けたい。オリエンテーリングではないのだから、有名な作品の前へ行く事やなるべく多くを見る事などが目的ではない。気に入りそうなものの前で長い時間を過ごせばいい。なるほどなぁ、これはいいかも。そう思う時間を持てれば持てるほど結果として一生ものの思い出が持てることになる。

 ではぼくはルーブルで何を見ればいいのか。モナリザやミロのヴィーナスという超弩級の一品もよいが、その他にもいろいろ見た方がいい。「見てきたよ」という事実を他人に誇ることなどどうでもよく、あくまでも作品に感動できればいいのだ。広いルーブルで何に注意すればいいのだろうか。そんなことを考えながらこの本を手にした。

 結論から言えば、なんてことはない楽しめばいいんじゃないのか。そもそも著者にガイドしようという姿勢はない。この人は自分なりに写真をとって、絵をみて、なにか面白いものを探しているだけである。ここを見なければ、などという気負いはまったくなく、単にルーブル内を「ぶらぶら」しているようである。

 いやぁ、ルーブルなんでまた来れるよ。そう考えてへんな「気負い」を一掃したほうがいいみたいだ。とはいえ子供のようには観賞したらダメ。子供達が美術館で何をやっているのか眺めると、楽しんでいるだけである。もっとも、彼らは(やっぱり)何も見ていないので記憶には何も残っていない。それじゃね。

 ということで、この本では何がどこにあって美術館はどういう雰囲気なのかを知っただけで目的を達成できたと思うことにした。ぼくはぼくなりルーブルの中をぶらぶらしてみよう。