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初恋ソムリエ

初野晴
角川書店
お勧め指数 □□□□□ (5)

 不思議なミステリー。ただ、学園物の範疇にあるので、発生する事件も謎もその解決法も、普通の高校生活の枠のなかにあるために、嫌な気分になる要素が全くない。だから、安心して楽しめる。一片の曇りもなく晴れの気分で読み終えることができる。前作どうよう、装幀の写真がワクワクする。

 嫌な気分を感じさせないという設定は、ミステリーを書く上で縛りがキツイ。それでは深みがでないということで評価が下がる可能性が高く、下手をするとレベルが低い本のように言われしまうかもしれない。しかし、それは嘘だ。なぜならば、嫌な気分なしでもこれくらいのものはかけるのだから。『カカオ100%の夏』という本があったが、あんな感じなのである。

 読んでいるとすっかりその世界に入り込んでしまう。自分が高校生だったころに精神は戻ってしまう。もう40過ぎなのに。もっとも、ぼくが高校生だったときはもっと「しょうもない」人だったと思うから、この本の登場人物たちの方がよっぽどしっかりしているのだけど。

 登場人物の増やし方が上手である。最初は二人。一つ事件を解決するごとに一人仲間が増えていく。目先の目的は吹奏楽だから、だんだんとメンバをそろえていくことになる。犬、猿、キジと仲間を増やすようなものである。吹奏楽だからフルート、ホルンから始まり一つ一つ楽器が増える。よい意味で自然な友達形成の物語になっている。他人を利用して自分がのし上がろうという嫌な気分がない。仲間になるために「助ける」から。一緒に危機を乗り越えると自然と友達になるもので、だれでも頷けることだ。

 こんな感じの良質な物語をもっともっと青春世代に向けていけばいいのになと思う。感覚がマヒした大人世代に向けたものを子供に向けてもろくな事にならないのに。名作ばかりを学級文庫に入れるという努力も大切だろうが、一方で教養文学という発想とは直行するかもしれないような、この本のようなものを上手いこと読んでもらえるようにしたらどうなのかな。などと妄想する。