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恋するたなだ君

藤谷治
小学館
お勧め指数 □□□□■ (4)

 『船に乗れ』があまりに良かったので、同じ作家の他の本を漁ってみることにした。

 藤谷治さんのデビューは比較的最近で、脱サラして書店を経営を始めたあと、作家活動を開始したみたいだ。年齢からいえば40過ぎのオッさんのはずだ。なんだぼくと同じような年代ではないか。それで『船に乗れ』のような青春恋愛劇を創作でるのか。スゴイ。よくかけるなぁ、と思ってしまう。

 『船に乗れ』は自分の経験がベースになっているのかもしれないが、この『たなだ君』はちがう。奇妙なお話なのだが、一体何からの発想したのだろう。

 この話はある種のファンタジー。さえないギャク的がのっけから連発し、若干ひくが、それでも読み続けるとほんわかした恋愛ものになる。最初から結末を装幀して書きだしたのか、書いていくうちに楽しくなったのか、ちょっと判断できない。ちょっと唐突な出だしと、そんな人いるかなぁというキャラのぎこちなさが、なるほどデビューしてまだ年数が浅い人の作品だという感じが漂ってくる。
それが悪い方向に流れると読み通す気になれないが、さすがに出版されているだけあって、良い方向へ流れていっている。半分あたりから結構一気読みをしてしまった。

 この小説に魅かれた理由は登場してくる「まばさん」なる女性の感じである。その人についてあまり言葉で表現されていないものだから、読む人の好みに想像してしまう。となると、すっごく憧れを抱きつつページをめくることになる。ベールを被った女性のようなものである。 

 そして、主人公のたなださんも、いってみれば「常識人」のような感覚やまっとうな発言のせいで、読者がたなだ君の視点になるのに抵抗はないだろう。

 話に大きな展開はないが、きちんと着地しくれる。後味がよい小説である。なんでだろうか、『鴨川ホルモー』のようなさわやかさを感じた。