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興亡の世界史00人類文明の黎明と暮れ方

青柳正規
講談社
お勧め指数 □□■■■ (2)

 気になっていた興亡の世界史シリーズに青柳正規さんの巻が出版されていた。人類文明の始原を扱っているようで、となるとラスコー洞窟絵画やシュメールなんかが書かれているはず。そのあたりは世界史のなかでぼくが一番興味のあるところ。

 出張先での楽しみとしてホテルで読んだのだが、実にがっかりするできであった。というのは「黎明と暮れ方」というわりにその説明がなかったからだ。

 ある文明がなぜ栄え、なぜ衰退するのかについての記述が明確でないのは、そもそも明確に語れるものではないのかもしれないが、だとしても「反映した理由が衰退の原因になる」という一般的な主張だけしないのであれば、なにも一冊かくことないじゃんと思うのは仕方ないだろう。それってここであえて持ち出さなくてもいいようなことじゃないか。

 反映の理由が衰退の理由でもある。まぁ、それはそれで正しかろうとは思うので、気分を換えて偉い先生の視点からみた興亡の風景をみてみよう。その見方を感じる事ができればよしとしよう。そう思って読みすすめたのだが、結果的に著者が主張したいところは「多様性の強調」くらいだった。なんとも不完全燃焼。

 なるほど、これだとこのシリーズは売れないだろう。それは読書する人の数の問題でも知的好奇心の衰退でもなく、作る側に問題があるような気がする。

 いや、まぁ、たかだか400ページの本ならば、新書で3冊程度の分量だから、あれこれ集めて、しかも自分のローマの発掘を入れたいとなると、こういう出来になるのは仕方ないのかもしれない。

 本から何を読み取れるか。それは読者次第という考え方がある。いい事が書いてあってもそれを読み取れなければ仕方ない。頭の良い人には良い本であるかもしれないが、普通の人には普通の本であり、ダメな人にはダメな本になるという考え方である。

 この本が良いと思えないならば、それはぼくが出来の悪い人間だということだろう。そう言われればそうかもしれない。ヨーロッパの知識人向けの本ならば、そういう態度もありだと思うが、ここは日本なんだ。

 この本のダメな理由を挙げるとすれば、結局は物語性がないこと。事実を事実として記載することが歴史を研究する人の役目だというスタンスを貫くならばそれはそれで仕方がないが、それではあまり普通の人の役にはたたない。それは、一般の書店で販売する上では問題がある。

 歴史は言葉で語るよりない。ならば原理的に著者の視点や興味に縛られる。客観的という行為は不可能になる。何が事実なのか、などということを求めても語ること語らないことの選択がある以上、事実全体などを求めることは無理な相談である。だから、面白く物語ることは必要だ。そのためには、自分の業績をいちいち挟み込む必要はない。それをするとテーマがぼける。そうしなければならないようならば、その著者である必要はない。もっと適したテーマで書けばいいのに。

 そんなわけで、おそらくこのシリーズはあまり期待できないような気がする。