幸福論
タイトルがベタなだけに内容が気になって購入した。著者の春日武彦さんは精神科の医師で、いろんな著作があり、だから物書きでもあるようだ。内田樹さんのブログに名前が上がっていたので、試しに読んでみようかなと思い選択した。いろいろ著作があるけれど、お休みの日に精神病の話をされてもかなわない。とりあえず万人向けの内容だと思われるものを選んでみた。 たいていの幸福論は「気持ちにありよう、心構え」になってしまうものだが、著者はそういうものを書くつもりはない、と言っている。冒頭に、著者自身が幸福だなと思った「具体的な状態」をその場所や出来事を12個ほど列挙することから始まっている。その話一つ一つは、1ページ程度のちょっとした短編物語になっていて、いずれも「ふーん」と思わず言ってしまうようなものであった。 著者が考える幸福とは、宝くじが当たったぞ、というような「ラッキー」ではなく、静かな気分で「いい感じがするなぁ」という感覚を味わうことのようである。感動したぞぉというような、心が揺さぶられるようなものは幸福感の範疇にない。どちらかといえば、自分は社会の中の一人なんだな、とか、他人の事を考えくれる人がいてほっとするな、という感想を持ったときが幸福なんだということである。 じつはその気持ち、ぼくもわかる。ごく普通の出来事であっても「へぇ、いい感じだなぁ」と思えることには毎日の生活で遭遇するものである。そんなことはない、と思っている人は「自分の内面」しか見ていないからだと思う。社会の中でぼくは生きているなぁ、と自覚することができると、意味なく楽しい気分になれるものなのだ。それに気づくと、普通の一日であっても結構愛おしく思うものだ。 こんな気分を楽しめるようになったのは、ここ一、二年のことである。向上心に絶対価値がなくなり、立派なことをしなければという焦りから解放されたときからである。おいしい御飯を毎日食べられて、なんて幸せなんだろうかと思えるようになってからのことだ。 この幸福論に頷ける人は、おそらくそういう人であろうと思う。 |
