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しつこさの精神病理

春日武彦
角川oneテーマ21
お勧め指数 □□□■■ (3)

 しつこいって、人としてダメな性質なんだろうか。しつこい人は嫌われるけど、職人さんは歓迎される。芸術家なんてのは「美を追求する」と言われ良い評価が普通だが、なんてことがない「しつこい」からそれが可能のはず。ならばどうして良い評価なのだろう。

 この本のタイトルを見たとき、そんなことがちらっと頭に浮かんだ。

 この本を読んでみてわかったのは、しつこさが問題になるのは、あくまで「程度」であって、しつこさが「異常」だからなのか。そりゃ、異常というくらいだから異常なのだろう。そう突っ込みたくもなる。がよくよく読めば、「ネガティブなことにたいして忘れない」ということも問題視されている。

 良い出来事については、予感することも体験することも思い出すことも気分が良い。楽しい。うれしい。一方で悪い出来事は全てにわたって悪い気分になる。どうやら、その気分のあり方が精神に与える影響が問題のようだ。

 嫌な事をずっと忘れない、憶えている、思い出す。つまり恨みをずっと抱えている状態が続くと、それ自体はどんな人にもあることだが、頭の中で反芻する機会が増えてくると何が現実で何が想像なのかの境目がわからなくなってしまう。人によっては嫌な気分が増幅していく。となるとどうだろう、最後には現実よりも想像のなかにいる嫌なものを相手にして生きはじめてしまう。

 人は、長いこと考えているものに現実感を感じるものである。現実感を感じるからそれに合わせて現実の行動を変えてしまう。養老孟司さんの著作で読んだが、現実とは、その人の行動に直接影響を与えるものだということだ。ならば考えた事を理由に行動するとしたら、考えていることは現実なのである。こうして精神の病と呼ばれるものが発生する。 とまぁ、この本をよんで僕なりに理解したことはこうである。もちろん勘違いかもしれない。ただし、そんなに間違っていないとすれば、しつこさについての対処方はいたって簡単なものである。

 嫌な気分になることからは、全速力で逃げろ。

 それでいいんじゃないだろうか。それが出来ない場合があるとしたら、可哀相だけど結局のところ精神の病に近づいている。もし周りにそういう人がいたら、状況を少し想像できるだろう。なにが危なくて何が大丈夫か、動機次第では全速力でその人から逃げないといけない。それは、他人ばかりではなく自分にも当てはまる。