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アホの壁

筒井康隆
新潮新書
お勧め指数 □□□□■ (4)

 表紙の印象からして『バカの壁』のパロディなのかと思ったが、まったく違った。「まえがき」にも「パロディーではない」と断ってあるし、実際読んでも確かにパロディーではない。それどころか、いや実に読みごたえのある愉快は本だった。だいぶ予想とちがった。

 人はどうして「アホなこと」をしてしまうのだろうか。この素朴な疑問に正面から取り組み、答えている本である。たとえば、何人かで話をしているとき、とつぜん話題からしてズレたことを言う人がいる。なぜ、今そんなことを話す必要があるのだろうかと腹立たしくまた不思議に思った経験をどんなひとでももっているだろう。そのひとはなぜ話の流れとは無関係に(しかも大抵つまらない)話をするのだろうか。著者のいう「アホ」とは、そういう「文脈を読まないとんちんかんな行動」をさしており、どういう人がどういう状況でどんな心理記的な帰結でアホなことをしてしまうか、つまりアホの壁を越えてしまうのか、について考察している。内容的には『バカの壁』と対等なものといえる。

 筒井康隆さんの著作を読んだことはない。嫁さんは昔(中学生くらいのとき)に好んでいたそうで、しょうもないショートショートが好きだったそうだ。この本を見せたあげたところ、「アホや、アホや」と心の中で叫ぶくだりをかなり気に入ったようだ。普段、新書であつかうような内容を読まない人にも勧められる、ということなのかもしれない。